2019年に高円宮杯全日本学童軟式大会(マクドナルド杯)に、悲願の初出場を果たした横川中央学童野球部(栃木県宇都宮市)。初めての大舞台は残念ながら初戦で敗れてしまいましたが、指導者達は「全国にも出られたし、来年からは新入部員が増えるに違いない」と思ったといいます。しかし、翌年の新入部員はまさかの0人。なぜ、そのようなことが起こったのでしょうか? チームを全国大会へ導いた堀野誠監督にお話を聞きました。
■誰でもできることをしっかりとやる
——まずは現在の部員数を教えてください。
16人です。今日の遠征にはエースで4番の子やキャプテンの子など4人ほど来ていないですけどね。
——チームの創設は何年になりますか?
かなり古いですね。私が監督になってもうすぐ8年目になりますけど、その時点でもうかなり歴史はありました。ですから数十年の歴史があるのは間違いないですけど、正式にチームがいつできたのかは分かりません。
——どういった経緯で監督になられたのですか?
元々息子がチームに入っていたのがきっかけです。それまでは代々最高学年の親が監督になっていたんですけど、それだとチームの方向性や指導方針がころころと変わってしまうということで、私に白羽の矢が立って指導を続けさせて頂いています。
——チームとしての指導方針や監督さんの指導ポリシーなどがあれば教えてください。
「誰でもできることをしっかりとやる」ということですね。例えば、野球が上手い、下手にかかわらず声は誰でも出せますよね。そういった部分も含めて、誰でもできることをしっかりやって、全力で野球に取り組むということですね。
——子ども達が全力で野球を頑張っていれば、ミスや失敗も怒らない?
そうですね。そこは咎めないですね。
■ティーチングとコーチングをMIXした指導
——日頃の練習ではどんなことを意識されていますか?
技術的な部分で言いますと、打ち方、捕り方、投げ方の基本をまずはしっかり教えます。それ以外は、本人が悩んでたり、怪我をしそうなフォームになっているときなどを除いて、あまり細かく言わないように「自分たちで考えてやってごらん」というスタンスで指導しています。
最終的には指導者が言ったことをやらされるのではなくて、自分たちで判断して実行できるようになって欲しいんですよね。そこを目指す上でも、まずはできることをしっかりやっていこう、というところを意識して指導しています。
——まずは「ティーチング」をしっかりやってから「コーチング」に切り替えるということですね。
そうですね。監督を1、2年しかやっていなかった頃はどうしても1から10まで「ティーチング」をしてしまいたくなるのですが、3年、4年と監督を続けていく中で、そうではなくて、ある程度基本ができたらあとは子どもたちに考えてやらせてみる。その方が子ども達が野球を好きになりますし、結果的に上達するのも早い気がしています。
——最近の子どもを見ていて、昔との違いや指導するうえで注意するようにしていることなどはありますか?
学童野球の指導者の方の多くも同じように感じられていると思うのですが、昔に比べて大人しいというか積極性に欠ける子が多くなったように思います。昔はチームに一人くらい「俺が俺が!」というような積極性のある野球小僧みたいな子がいたのですが、ここ数年はそういう子がいなくなったように思いますね。
——全国的に少年野球人口が大幅に減っていると言われていますが、どういうところに原因があると思いますか?
子どもだけの問題ではなくて、保護者の方の考え方などもチームと一致しないと、なかなか入部まではいきませんよね。またスポーツも選択肢が多様化して野球という選択肢がかつてほど選ばれにくくなっていることもあると思います。
——その選択肢の中から、野球が選ばれにくくなっているのはなぜだと思いますか?
団体スポーツ自体が選ばれにくくなっているのもあるのかなと思います。チームがあって、保護者会のような組織ができ上がっていて、そこに後から加わることに対する保護者の方の抵抗感みたいのもあるのかなと。私も息子が3年生の時に自分から入りたいというからチームに入りましたけど、私自身が野球をやっていたとはいえ、その出来上がっている組織に「新入部員の親」として加わることに対して少なからず覚悟みたいなものがいりましたから。そのあたりの団体スポーツ特有の部分が、野球では特に大きいのかなと思いますね。
■初の全国大会!勝手に高くなった入部の敷居
——3年前にマクドナルド杯に初めて出場されましたね。でも翌年がまさかの新入部員0人だったと聞きました。
私もどれくらい新入部員が入ってきてくれるかなと、結構期待していたんですけどね(笑)。
——原因としてどんなことが考えられますか?
全国大会に出たチーム=厳しいチーム、保護者の負担が大きいチーム、と思われて入部する敷居が勝手に高くなってしまった部分があると思います。
——全日本学童で3回日本一になっている「多賀少年野球クラブ」(滋賀)の監督さんも「強くなるにつれて部員が減っていく、集まらない時代があった」と仰っていました。
多賀さんのようなチームと一緒に語られる立場ではありませんが、それはすごく分かりますね。
———監督も怖いんだろうな、親の当番も大変なんだろうなと、思われているのかもしれないですね。
それもあるでしょうね。うちは「保護者の当番は絶対です!」ということはなくて、保育所とか託児所の感覚でお子さんを置いていってもらって大丈夫です、指導者たちで面倒を見ますから、という方針なんですけどね。その辺が、全国大会に出たことで余計に上手く伝わらなくなってしまっていますよね。
——保護者の当番はどれくらいの頻度なのですか?
見守り当番として、月に一回まわってくるかどうかというくらいの頻度です。何をするわけでもないですけど、小さい子もいますし、バットも使っていますから、大人の目が一定数は必要になりますからね。
——悪名高いお茶当番などはあるのでしょうか?
ないですないです! ありません!
インタビュー後編に続きます。