“裏方”のJENESISがなぜ「aiwa」ブランドのスマホを出すのか 日本市場での勝算は?

0

2022年07月02日 08:42  ITmedia Mobile

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia Mobile

写真JENESISが、aiwaのブランドライセンスを取得。aiwaデジタルとして、スマートフォン、タブレット、PC、スマートウォッチを発売する
JENESISが、aiwaのブランドライセンスを取得。aiwaデジタルとして、スマートフォン、タブレット、PC、スマートウォッチを発売する

 中国・深センに生産拠点を構え、デジタル機器の受託開発を主要事業に据えるJENESISが、アイワからライセンスを取得。aiwaブランドを冠したスマートフォン、タブレット、スマートウォッチを8月に発売する。ライセンスはスマートフォンなどのデジタル機器に特化したもの。スマートフォンとスマートウォッチは1機種ずつ、タブレットはWindows PCを含めた計4機種を用意する。



【その他の画像】



 一般のユーザーにはなじみが薄いかもしれないが、JENESISは翻訳機として大ヒットを記録した「POCKETALK」の開発などで知られる。“世界の工場”と呼ばれる深センに拠点を持つことを強みに、これまでもさまざまな製品の開発を裏方として支えてきた。一方のaiwaは、ソニー傘下の企業としてコストパフォーマンスに優れたオーディオ製品などを展開してきたが、業績不振から2002年にはソニーに吸収され、2008年にブランドを終了。9年後に十和田オーディオが商標権を取得し、オーディオ機器を展開している。



 スマートフォンやタブレットが成熟期を迎える中、なぜJENESISはaiwaブランドを引っ提げ、表舞台に立とうとしているのか。同社の代表取締役社長CEOを務める藤岡淳一氏に、その経緯や今後の構想などを聞いた。



●JENESISはなぜ自社製品の販売に踏み切るのか



 aiwaは、40代以上の読者にとってなじみの深いブランドだろう。かく言う筆者も、子どもの頃に使っていたラジカセがaiwaだった記憶がかすかに残っている。ソニー傘下のメーカーとして、コストパフォーマンスの高い製品を世に送り出していた印象が強い。今ではすっかりおなじみになったサブブランドだが、そのはしりのような位置付けだったとも言えそうだ。そんなaiwaブランドを冠したスマートフォンやタブレットなどの新製品が、8月に登場する。



 手掛けるのは、受託開発を主に行ってきたJENESISだ。同社は、開発から試作、量産、量産やサポートを一手に手掛けるEMS(電子機器製造受託サービス)として有名な企業。裏方に徹しているため一般のユーザーがその名を目にする機会は少ないかもしれないが、ソースネクストから分社化したポケトーク社のPOCKETALKや、ソースネクストのAutoMemoシリーズ、JapanTaxiに搭載されているJapanTaxiタブレットなど、同社が開発を担った有名な製品は多い。



 かつては、「geanee」というブランドで、イオンから発売される低価格なスマートフォンも製造していた。スタートアップや流通業のモノ作りを支える企業として、業界では、その名を知らない人がないほどだ。そんなJENESISがaiwaブランドのラインセンスを取得し、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチといった一般ユーザー向けの製品を展開してく理由はどこにあるのか。JENESISの藤岡氏は、JENESISが当初からコンシューマーへの展開も視野に入れていたことを明かす。



 「創業して10数年たちましたが、最初のころはコンシューマー向けも少しやっていました。ただ、その頃もちょうど80円ぐらいの為替が一気に100円以上に上がってしまう円安で、駆け出しのベンチャーは体力もなく、経営が大変になってしまっていた。当時はIoTという言葉もなかったころだが、いったんEMSからODMという形で仕切り直し、黒子としていろいろなメーカーの製品をやらせていただくことにした」



 一方で、その間、特にスマートフォンやタブレットは市場が急成長し、飽和期を迎えつつある。藤岡氏が「市場が飽和して、大手が撤退したり、ファンドに身売りされたりしている」と語るように、メーカー間の競争環境も激変した。



 「そんな中、Lenovoは別格だとしても、OPPOやXiaomiといった中国メーカーがここ1年、2年で入り始めている。前職でデジタルカメラや液晶テレビ、DVDプレイヤーなどのいわゆるデジタル家電をやっていたとき、大手が撤退して中国系企業が入ってきたときにチャンスを感じた。これは(スマートフォンやタブレットでも)出番が来たからもしれないと、勝手に使命感を感じている」



 市場の構造が大きく変わる中、そこにチャンスを見いだしたというわけだ。ただ、長く裏方を続けてきたJENESISには、コンシューマーにリーチできるブランドがない。「5年、10年かけ、無名のブランドを育てるのは、スピードの速いIT業界ではなかなか難しい」のが現実だ。そこで、藤岡氏は休眠しているブランドや、日本での展開を休止してしまった複数のブランドにライセンス提供を打診する。逆に、ブランドを必要としていたJENESIS側にもオファーがあったという。その中で白羽の矢が立ったのがaiwaだった。



●40代以上の知名度が高かったaiwaブランド、将来はオーディオでの差別化も



 では、なぜaiwaで行くと決めたのか。藤岡氏は、aiwaを「少年の夢を裏切らないブランド」だと評する。自身も「小学生、中学生のころ、お年玉をためて現金を握りしめ、家電量販店にカセットプレイヤーやオーディオコンポを買いに行ったど真ん中の世代」。筆者も藤岡氏とほぼ同世代だが、そのブランドイメージは共有している。品質は確かだが、頑張れば子どもでも買えるブランド。今風に言えば、コストパフォーマンスが高い製品が多かったといえる。



 実際、JENESISの調査でも、「40代以上の認知が、検討していた他社よりも高かった」という。グローバル展開していたブランドのため、海外でも知名度がある。「中近東や東南アジアはサムスンやOPPO、vivoといったブランドが強く、日本が入り込めていない。そこでもアイワは強かった」。まずは日本での展開に注力するというが、「アイワインターナショナルという台湾にある国際部門会社と連携を取りながら、海外進出も進めていく計画」があるという。



 もともとコストパフォーマンスが高かったブランドイメージを生かし、第1弾として販売するスマートフォンやタブレットの「メインストリームは1万円台、2万円台だと考えている」という。「ここをボリュームゾーンと捉え、まずはECや法人向けに展開し、足場を固めていく」のがJENESISの戦略だ。藤岡氏は「日本では、フィーチャーフォンからの置き換え需要や、2台目、3台目需要もある。中学生や、もっと言えば小学生が初めてのスマホとして選べる価格帯にしようと考えた」と語る。



 こうした価格帯のローエンドモデルは、主にネットで数多く販売されているが、「Amazonなどで海外からノーブランド品が入ってきているが、われわれが買って調査すると、コールセンターもなければ問い合わせ先のメールアドレスも書いていない」。対するaiwaの端末は、「国産ではないが日本の会社が日本の中で展開するため、ITリテラシーの低い学生や高齢の方に、電話でしっかりサポートする」といい、サポートやそれに伴う安心感を売りにしていく構えだ。



 また、「われわれはODMなので、何でも作ることができる」のはJENESISの売りの1つ。「特定販路向けということで、量販店や流通がこういう製品をやりたいという要望があればカスタム製造ができる」という。日本のニーズに合わせてカスタマイズをしていくことで、「インターナショナルモデルを若干カスタマイズする中国メーカーとの差別化になる」というわけだ。



 ただ、アイワ製品はもともとAV機器が中心。スマートフォンやタブレットなどとは重なる部分もある一方で、ジャンルは異なる。こうした点については、どう考えているのか。藤岡氏は、「アイワができなかったことにあえてチャレンジする」としながら、次のように語る。



 「例えばスマートフォンにしてもタブレットにしても、リモートミーティングに使われたり、テレビの置き換えとして映画を見たりするのに使われたりしている。今後、動画コンテンツがテレビからスマートデバイスに移っていく中、国内のオーディオ専門メーカーの技術指導をあおぎ、音声のチューニングや機構の設計でコンサルティングをしていただくことを考えている。



 aiwaだとステレオの臨場感がいい、人の声が前に出やすい、本体は薄いが音圧がある――将来的には、そういう取り組みをやろうと思っている。何となくアイワを知っているからロゴを付けたのではなく、アイワらしさを出していきたい」



●おサイフケータイや防水・防塵対応も予定 課題はマーケティングか



 スマートフォンについては、防水・防塵(じん)やおサイフケータイといった日本仕様も、積極的に取り込んでいく構えだ。藤岡氏は「一番のボリュームゾーンはミドルレンジで、ここはメーカーも多いが販売量も多い」としながら、「5Gと防水・防塵、FeliCaの3つはマストだと考えている」と断言する。



 残念ながら、8月に登場する第1弾の製品は非対応になる見込みだが、「開発には既に着手している」といい、第2弾、第3弾での採用は期待できる。こうしたニーズに取り込んでいく方針からも、JENESISのaiwaブランドに懸ける意気込みが伝わってくる。



 当初はECや法人向けの展開が中心になるが、「MVNOのモデルにもチャレンジしていきたい」という。オープンマーケットを中心しながら、まずはMVNOへと販路を広げていく見込みだ。



 一方で、キャリアモデルは「考えていない」と同氏。「例えばeSIMを入れ、好きなキャリアを使っていただく方が、ある意味われわれらしい。現時点での規模感では、キャリアとの相互接続の問題などにリソースを割けるのかというのもある」というのが、その理由だ。MVNOではソラコム向けの製品も開発したことがあり、「近い関係にあるので、eSIM的なアプローチは考えていきたい」という。



 黒子として長年、設計や製造を行ってきたJENESISが手掛けるだけに、一般的な新規参入とは異なり、製品のクオリティーに対する心配は少なくなりそうだ。深センに拠点を構えているだけに、昨今の半導体不足の影響も軽微だという。



 「SoCやメモリは去年(2021年)ほどではないが、マイコンやドライバICなどは相変わらず不足している。例えば6軸センサーのようなものはいまだにない。普通の日本の会社だと、フォーキャスト(予想)を1年前に出し、長いイメージで取引をしないと来ないかもしれないが、そこはさすが深セン。持っている人は持っているので、高値で数千個単位なら譲ってもらえるソースは開拓した。その地の利は非常に大きい」



 とはいえ、黒子が長かっただけに、コンシューマーに直接販売するとなると、マーケティングや宣伝などが課題になりそうだ。藤岡氏も、率直に「ここは私たちがまったくやってこなかった部分」と認める。「例えばソースネクストどういうふうにマーケティングをしていきたのか。弊社には元フリーテルの社員もいるが、当時、増田さん(現・TAKUMI JAPAN代表の増田薫氏)がどうやっていたかも調査し、われわれなりの計画を立てていきたい」。



 その一環として、8月の発売に先立ち、製品発表会も別途開催する予定。写真が公開されている製品群の詳細な仕様やaiwaデジタルの戦略も、ここで明かされる。そのときを心待ちにしたい。


    ニュース設定