南野拓実のモナコ移籍は都落ちではない。市場価値は2年半で倍増、攻撃の要・トップ下での起用が濃厚

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2022年07月02日 11:31  webスポルティーバ

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 かねてからメディアで報じられていた南野拓実のモナコ移籍が正式に発表された。現地報道によれば、契約期間は4年で、モナコがリバプールに支払う移籍金は1500万ユーロ(約21億円)プラス出来高ボーナス300万ユーロ(約4憶3000万円)。

 かつて2020年冬にザルツブルクからリバプールに移籍した際に発生した移籍金が850万ユーロ(現在のレートで約12億1000万円)だったことを考えると、リバプールに在籍した2シーズン半(サウサンプトンへのローン移籍期間を含む)で、南野の市場価値は約2倍の金額に化けたことになる。




 もちろん、チャンピオンズリーグ(CL)やプレミアリーグの優勝候補の常連クラブからヨーロッパの5番目のリーグの有力クラブへの移籍なので、選手のキャリアとしては栄転とは言えないかもしれない。

 しかし今回の移籍金が示すとおり、出場機会が限定されていたリバプール時代においても南野が選手としての価値を上げたことは紛れもない事実。そういう意味では、ザルツブルク、リバプール、そしてモナコと、南野は確実にヨーロッパでのキャリアアップを遂げていると言っていいだろう。

 最大の注目は、27歳という脂が乗った時期に加入する新天地で、南野が引き続き選手としての価値を高められるかという点になるが、これについてはポジティブな要素がある。

 今回の移籍を主導したのは、2020年夏にモナコのSD(スポーツ・ダイレクター)職に招かれたポール・ミッチェルで、かつてはトッテナムやライプツィヒでも実績を残した慧眼の持ち主。その人物が、以前から南野に関心を寄せていたことを公言したうえで獲得したのだから、チーム戦略上、重要戦力として迎えられたことがはっきりしている。

「彼は何年も前から我々が知っている選手であり、ヨーロッパに来てからは、特にヨーロッパの大会でハイレベルな経験を積み、これまで数多くのタイトルも獲得している。彼が持つ勝者のメンタリティ、複数ポジションでプレーできる能力、代表チームの主軸選手としてのスタッツなどからして、我々のような若いチームの発展と目標達成に彼が貢献してくれることを確信している」

 南野の加入発表に合わせて、ミッチェルSDはそのようにコメントした。

南野のポジションはどこ?

 チームの方向性を決める人物のお墨付きは、新戦力として大きなアドバンテージになるはず。とりわけミッチェルSDは、混乱していた時期に現職に就くやいなや、ドラスティックな改革によってあっという間にチームを再建した実績があり、フロントからの信頼も絶大だ。

 そのミッチェルSDが就任直後から推進するのが、ライプツィヒ時代に自身が経験した縦に速いアグレッシブかつオフェンシブなスタイル。その第一歩が、2019−20シーズンの途中からモナコの指揮を任され、ポゼッション型のサッカーで成績を浮上させていたスペイン人ロベルト・モレノを即解任し、ニコ・コバチを新監督に招聘したことだった。

 もっとも、そのコバチは初年度にチームを3位に押し上げたものの、2年目はCLと国内リーグのやり繰りに大苦戦。シーズン途中に主力との関係を悪化させ、ミッチェルSDが彼の限界を感じた時点で解任を決断すると、そこで白羽の矢が立ったのが、今年1月から指揮を執るフィリップ・クレメント現監督だった。

 クレメント監督は、現役時代は1998年フランスW杯にも出場した元ベルギー代表DFで、指導者としては、伊東純也を指導したゲンク時代(2018−19)に1度、クラブ・ブルージュでも2度、ベルギーリーグのタイトルを獲得した人物。

 まだ48歳の青年監督ではあるが、クラブ・ブルージュでは2年連続でCLに出場し、いずれもグループステージで敗退したものの、昨季のホームでのパリ・サンジェルマン戦のようにトランジション重視のアグレッシブで攻撃的なサッカーを披露していた。

 そういう意味では、クレメント監督はミッチェルSDの戦略に沿った指導者であり、すなわち南野のプレースタイルとの相性もまったく問題ないと見ていいだろう。

 ただし、南野にポジションが確約されているかと言えば、そうではない。

 昨季終盤に破竹の9連勝を成し遂げた時の基本布陣は4−2−3−1。おそらく今季もそれが基本布陣となりそうだが、現状、南野がプレー可能な前線の4つのポジションは、いずれも相当な激戦区になっているからだ。

移籍後に南野がすべきこと

 まず、1トップに君臨するのは、フランス代表FWウィサム・ベン・イェデル。チームのキャプテンであり、昨季はキャリアハイの25得点を記録するなど、チームでは絶対的な存在だ。控えには、今季ブレイクが期待されている21歳のマイロン・ボアドゥがいる。

 左ウイングは、クリエイティブでプレースキックも得意なロシア代表アレクサンドル・ゴロビンを軸に、ドリブルで局面を打開しながらチャンスメイクする22歳のソフィアン・ディオプが控え、トップ下でもプレーするセネガル代表クレパン・ディアタもいる。

 右ウイングには、今年1月に加入した21歳のブラジル人右SBヴァンデルソンが、このポジションでブレイクしてレギュラーを奪取。それまで主軸だったポルトガル代表ジェルソン・マルティンスはベンチに追いやられたが、その突破力とチャンスメイクは依然としてレギュラークラスの実力だ。

 そしてトップ下には、経験豊富な元ドイツ代表ケヴィン・フォラントがベン・イェデルとの阿吽の呼吸でスタメンの座を確保するが、元スペイン代表のセスク・ファブレガスが退団したことにより、ここの控えは前述のディアタ以外に確定的な選手がいない。

 それでいくと、南野が最もプレーする可能性の高いポジションは1トップ下になりそうだ。

 とはいえ、夏の移籍市場はまだ続く。モナコについて言えば、今夏に主軸MFオーレリアン・チュアメニをレアル・マドリードに推定8000万ユーロ(約112億円)と出来高ボーナス2000万ユーロ(約28億円)で売却したように、選手を育てて高く売るというサイクルを揺るがぬ方針とするクラブゆえ、これから数十億円の移籍金が発生するようなビッグネームの獲得はないはずだ。逆に、主力級の売却の可能性は十分にあるだろう。

 いずれにしても、南野にとって重要なことは、できるだけ早くリーグ・アンのサッカーに慣れることに集約される。フィジカルなサッカーという点では、たしかにリバプール時代の経験はプラスになる。だが、それでもリーグ・アンのフィジカルバトルはプレミアリーグのそれとは質が異なり、とりわけ個人対個人の局面でいかにして相手を上回れるかが、馴染めるかどうかの分かれ目になるだろう。

南野はいつモナコに合流?

「私には、彼(南野)の起用についてアイデアがある。それは彼にとってのアドバンテージだ。彼は多く異なる役割と複数のポジションで効果的にプレーできる。前線にそのような選手がいることは、攻撃面で何かを生み出せるうえ、スムースなシステム変更を可能にしてくれるという点で、興味深い」

 クラブ・ブルージュ時代は4−3−3を基本布陣し、オプションとして3バックも採用していたクレメント監督は、南野の加入についてそう語ったが、果たしてそのアイデアとはいかなるものなのか。

 今季もCL予選3回戦から出場するモナコは、すでに地元で開幕前の合宿をスタートさせており、プレシーズマッチもこなしている。現在日本でバカンス中の南野は、チームがポルトガルにキャンプ地を移した頃に合流予定だ。

 少し出遅れている部分を含め、独特なリーグ・アンの水に慣れるまでには時間を要するかもしれないが、総合的には期待できそうな移籍と言えそうだ。

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