話題を集めた頼朝役を終えて「三谷さんには感謝しかないです」大泉洋(源頼朝)【「鎌倉殿の13人」インタビュー】

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2022年07月03日 21:20  エンタメOVO

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写真源頼朝役の大泉洋 (C)NHK
源頼朝役の大泉洋 (C)NHK

 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。7月3日放送の第26回「悲しむ前に」では、主人公・北条義時(小栗旬)の主君で、ここまで物語をけん引してきた鎌倉幕府初代将軍・源頼朝(大泉洋)がついにこの世を去った。今までの頼朝像を覆す斬新なキャラクターは大きな注目を集め、数々の悲劇を引き起こすたびにSNS上で「全部大泉のせい」などと話題になった。その大泉が、ここまで演じてきた頼朝役と本作を振り返ってくれた。




−ここまで出演してきた本作の印象は?

 毎回素晴らしいんですけど、こんなことを言うと失礼かもしれませんが、今回は三谷(幸喜/脚本)さんの円熟期の集大成のような大河ドラマなのかなという気がします。海外のドラマを見ていると、やっぱりすごいじゃないですか。本当に面白いし、すごく重厚なものが多い。そこと比べてしまうと、どうしても日本のテレビドラマはどこか成熟していないような気持ちがあって。でも、今回の「鎌倉殿の13人」って、初めて「日本にもこんなにすごいドラマがあるんだ!」って自慢したくなるような…。あくまで僕の個人的な感想ですけど。

−改めて三谷作品の魅力を感じた部分はありますか。

 三谷さんが書いているので、単純な笑いの要素もあるんだけど、笑いから“どシリアス”への振り幅がすごい。ファンの皆さんがよく「風邪を引きそうだ」と言っていますが、本当にそんな感じですよね。笑っていたところからこんなシリアスになっちゃうんだとかね。

−その中でも特に印象的なエピソードは?

 (頼朝が、佐藤浩市演じる上総広常を謀殺した)第15回。やっぱりあんなに面白い回はないと思いましたね。あれで日本中から嫌われましたけど(笑)。あのときも三谷さんからメールが来て、「案の定、日本中を敵に回しましたね」って一言目に書いてあって、最後に「でも僕は大好きです」って(笑)。明らかに面白がっていますよね(笑)。

−本作の頼朝は、従来とだいぶイメージが違いましたが、どんな印象を持っていましたか。

 自分が演じる役ですから、皆さんが言うほど僕は嫌いじゃないです。彼がやっていることはとても正しいというか。でも演じる上では、どこか孤独な人というか、ちょっと生い立ちが不幸だったと思いますね。子どもの頃、家族を殺された上に、自分も伊豆に流され、人をなかなか信用できないところがあったんだろうなと。いろんな人に対して、頼朝なりの愛情はあったと思うんです。政子(小池栄子)や子どもたちだったり、義時や義経(菅田将暉)だったり…。ただ、彼にとって一番大事なのは、自分のことや、自分の一族のことなんですよね。全ては自分の、源氏の一族が末代まで繁栄できるようにということしか考えていないと思うんです。

−確かにそうですね。

 もちろん、兄弟は大事なんだけど、自分に取って代わる可能性が一番あるのも兄弟だったんですよね、あの時代は。だからやっぱり、義経にしても、範頼(迫田孝也)にしても、弟とはいえ排除せざるを得なかった。そこがまた、彼が孤独で人を信じ切れないからこそなんでしょうけど。ただ、あの時代を見ると、兄弟や親を排除することが実はものすごく多いわけです。今回はそこが見事に描かれちゃっているから、頼朝さんはどうしても嫌われちゃうんだけど、「みんなそうじゃないか!」と私は思ったりもするんですけど(笑)。

−そんな孤独で人を信じられない頼朝が、なぜ義時を信頼したのでしょうか。

 頼朝は、直感的な判断で人を見ていたと思うんですよね。義時については、もう会った途端から好きというか。義時は真面目だし、野心がない。そういうところを見ていたんじゃないですかね。結局、義時は頼朝に付いていき、どんどん変わっていってしまうわけですけど。そこもまた「大泉のせい」って言われちゃうんだろうな(笑)。

−おっしゃるように、義時はだんだん頼朝に似てきました。

 それが顕著になるのは、頼朝が亡くなってからだと思います。曽我兄弟の敵討ちの収め方とかも、義時ならではというか。そういう、とっても賢い人だっていうのを、頼朝は見抜いていたんじゃないですかね。

−なるほど。

 「鎌倉殿の13人」は、頼朝が死んで息子の頼家(金子大地)の時代になってからが本番。だから当初、小栗くんとLINEでよく、「早く大泉死んでくれないと困る」とか、「三谷さん頼朝を描き過ぎ」とか言っていたんだけど、最近になって「いやあ、頼朝さんは死ぬのが早過ぎた」って手の平を返された(笑)。頼朝がやっていた厳しい決断を、今度は自分で下しているんだろうなと想像しているんだけど。

−頼朝が死に向かっていくあたりの台本を読んだ感想は?

 面白いと思いました。権力の頂点に上り詰めた人がどんどん駄目になっていく。巻狩りの最後(第23回)でも口にしていましたが、どこか天にも見放された気持ちになってきて、どんどん自分の犯してきた罪、とは言いたくないけれど、たくさんの人を排除してきた男が、そこに苦しめられていくというか。25回の頼朝は、精神分裂気味になってしまったのかなと思っていました。突然、巴御前(秋元才加)のところに行って、「義仲を討ったことは申し訳ない」って思っちゃった。でも、その気持ちも分かる気がしました。死ぬ直前に、今まで自分がやってきたことを謝りたくなる、みたいな。

−これまで、主要人物が亡くなるたびに「○○ロス」などとSNSで話題になってきましたが、頼朝の死はどんなふうに受け入れられると思いますか。

 好きに受け取ってほしいです(笑)。どう思われるんでしょうね。頼朝の倒す相手がいい人に描かれているから、その分、頼朝がものすごく悪く見えるので、「ひどい殺され方をしてほしい」なんてことも言われて(笑)。でも僕は、実にシンプルというか、頼朝の最期が素直に描かれていて、とっても面白いなと。25回で落馬した後の26回も三谷さんらしいですよね。ただ寝ているだけの頼朝の周りで、今後の鎌倉がどうなっていくのかという大事な話し合いが行われ、どんどん物語が動いていく。まさに劇作家・三谷幸喜の真骨頂というか。基本、三谷さんの舞台はワンシチュエーションですよね。一つの部屋があって、そこで何かが起きるのを描くのが上手な方だから。

−そうですね。

 頼朝の本当の最期は政子と2人で迎えましたけど、演出の保坂慶太さんが非常によく撮ってくれて、すごく美しいカットだったんです。小池栄子さんの熱演も素晴らしかった。とても印象に残っています。

−そして、ついに頼朝は本作での役割を終えました。

 こんなドラマとこんな役にはそうそう巡り合えないなと。とっても幸せだと思いましたね。こんな役を頂いて、三谷さんには感謝しかないです。

(取材・文/井上健一)


源頼朝役の大泉洋(左)と北条政子役の小池栄子 (C)NHK

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