頼朝死す! 激動の鎌倉幕府!「義時がこの後どうなっていくのか、僕にも分かりません」三谷幸喜(脚本)【「鎌倉殿の13人」インタビュー】

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2022年07月04日 06:40  エンタメOVO

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写真脚本の三谷幸喜
脚本の三谷幸喜

 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。7月3日に放送された第26回「悲しむ前に」では、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝(大泉洋)の死と、それによって揺れ動く幕府内の騒動が描かれた。これから物語はどうなっていくのか。今後の展望も交えつつ、脚本の三谷幸喜が作品への思いを語ってくれた。




−まず頼朝の話から伺います。前回のラストで死んだと思われた頼朝が、第26回で一度、意識を取り戻しました。その後、最期を政子と2人で迎えた理由は?

 意識を失ってそのまま死んでいくのではなく、一度よみがえらせたいと思っていました。でも、目が覚めたとき、政子に何と言えばいいんだろうかと考え抜いた末、思い出したのが、第1回で政子が持ってきた料理を見て、頼朝が「これは何ですか?」と尋ねるシーンだったんです。そこで、「これは何ですか?」ともう一度、言わせてみようと。

−なるほど。

 できれば、あのときと同じものを政子が持ってきて思い出す形にしたかったので、台本にそう書いたんですが、考証の先生から「季節が違うので、同じものは出せない」と指摘されて(笑)。でも、物語としての面白さを優先することにしました。結果的には、政子(を演じる小池栄子)さんが素晴らしかったと聞き、よかったと思っています。

−頼朝が亡くなると、やがて妻の政子が“尼将軍”として鎌倉幕府を支えていくことになります。政子に対する思いをお聞かせください。

 ずっと不思議だったのが、北条政子の名が“悪女”として広まっていることなんです。例えば、織田信長だったら分かるんですが、政子は”悪女“と言われるほどのことはしていないんじゃないかと思うんですね。物語の中で描いていくと、やはり彼女はその局面に応じて、妻として、母として、やるべきことをやっているだけなのに、事態がどんどん悪化していく。だから、むしろ悲劇の主人公のような気がしています。そういう意味では、決して悪女ではなく、真摯(しんし)に生きた1人の女性であり、そういう政子の生涯を描けることをうれしく思っています。

−続いて、主人公の北条義時について伺いします。最初は米蔵で米の勘定をしていた真っすぐな青年だった義時が、次第に陰謀に手を染めるようになり、暗い影をまとってきました。脚本を執筆する上で、その変化をどう捉えていますか。

 今回が僕にとって3作目の大河ドラマになりますが、(源)義経のように登場が限定的な人物は別として、主人公や1年を通して登場する人物、今回なら義時や政子に関しては、実は長期展望みたいなものは作っていないんです。先読みはせず、何か事件が起きる都度、彼らが何を考え、どう対応していくのかを考えながら書く。そうでないと、彼らの人生を最後から逆算して描く形になるのが嫌なんですよね。

−三谷流の作劇術ですね。

 だから、義時に関しても決してブラックにしよう、ダークサイドに落とそうと思って書いてるわけではないんです。歴史上の義時と、僕の書いている義時が同じ人生をたどっていくと、どうしてもそっちに行ってしまうというか。不思議ですが、そんなイメージです。だから、中盤を迎えた今も、義時がホワイトとブラックの間のどの辺にいるのか、僕にも分からないし、この後どうなっていくのか分かりません。それはこれから、僕が書いている義時と、僕自身と、演じる小栗さんで見つけていくという、そんな感じです。

−その義時を演じる小栗旬さんの印象はいかがですか。

 僕が監督した映画に出ていただいたとき、短い撮影期間でしたが、やってほしいことを的確に演じてくださいました。小栗旬という俳優の持っている力は以前から実感していました。相性というのかな、小栗さんは、僕と共通言語を持っている方だなと、そのときに感じました。今回、僕は演出には関わっていませんが、小栗さんは、同じように僕の思いをきちんと受け取って演じてくださっているのが分かり、とても満足しています。前半も素晴らしいのですが、年齢を重ねてからの義時も、前半にも増して素晴らしい。まだ映像は見られていないんですが。僕の勝手な思いですが、これが小栗さんの新しい代表作になるのではないでしょうか。

−物語は折り返しを迎えましたが、執筆を進める中で、事前の想定以上に成長した役や膨らんできた役はありますか。

 善児です。善児が注目されるのは計算のうちではあったんですが、あれほど皆さんを震撼(しんかん)させ、心に残るキャラクターになるとは思っていませんでした。それは、何よりも演じる梶原善さんと演出の力です。それを踏まえて、ここまで成長した善児にどんな退場のさせ方をすれば皆さんが満足するだろうかと考えながら、彼の退場シーンを書きました。

−それはぜひ注目したいところです。

 そして、もう一人が実衣です。実衣は最初、政子にちゃちゃを入れる話し相手ぐらいのつもりでいたんです。でも、宮澤エマさんが演じる姿を見て、いろんな資料を調べながら書き進めるうち、それだけではもったいないと。彼女はもっと成長していくべきだし、そんな姿が見たいと思うようになりました。だから、宮澤さんと実衣、共に本番はこれからです。その片りんもちらっと見えてきましたが、頼朝の死後、権力欲に取りつかれる実衣の姿は、書き始めたときは想像もしていなかったので、すごく意外ですが、面白くなっていると思います。

−これまで注目されてこなかった頼朝の弟・源範頼(迫田孝也)が、本作では大きく扱われていたことも印象的でした。

 範頼に関しては、これまで光が当たらず、かわいそうに思っていたので、きちんと描きたいと最初から考えていました。

−権力欲という点では、実衣だけでなく、三浦義村にもその傾向がうかがえます。今後、三浦義村はどうなっていくのでしょうか。

 三浦義村は不思議な人で、どんな局面でも何を考えているのか、よく分からないんです。裏切ってばかりですし。その面白さを生かしたいと考えたとき、思い浮かんだのが山本耕史さんでした。山本さんには僕の大河に毎回出ていただいているので、今回はぜひ、つかみどころがなく、かっこいい三浦義村をやってもらいたいと思ったんです。案の定、いまだにどんなやつかよく分かりませんが、ここまできたら最後まで貫いてほしいです。歴史に詳しい方ならご存じでしょうけど、今後、彼も暗躍するようになります。そしてせっかく山本さんに演じてもらうのだから、最後の最後に、義村の最大の見せ場を用意するつもりです。まだ言えませんが、物語の終盤、ラスボス的な存在で主人公に立ちはだかるのはこの男かもしれませんよ。

−これからの展開が気になる話です。ところで、ここまで執筆してきて、北条義時を主人公にこの時代を描く面白さをどんなふうに感じていますか。

 書いてみて思ったのは、戦国や幕末とは全く違う世界だということです。その中でも一番大きいのは、当時の人たちは神さまをとても身近に感じていて、ものすごく信仰が厚い点です。実際、神頼みや呪い、夢のお告げといったものに縛られていますから。そういうものをドラマに取り入れるのは、戦国時代などではあり得ません。ある意味、何でもありですが、その分、人間が本来持っている根っこの部分をストレートに表現できる気がするので、今回はそれを多用しています。

−確かに、頼朝の行動も信仰や夢のお告げに影響されていましたね。

 この先、比企一族が滅亡するとき、比企尼(草笛光子)がある人物に呪いの言葉を告げ、それがまた新たな悲劇を生む…という展開もあります。それも含め、物語としてとても豊かなものを感じます。その中で、義時という人は実は最もドライで、現実的な登場人物じゃないのかなと。なんでもありの混沌(こんとん)とした中で、一人だけリアリストがいた、というイメージです。だから、義時を主人公にしたのは、やっぱり正解だったと思っています。

(取材・文/井上健一・田中雄二)


北条政子役の小池栄子(左)と北条義時役の小栗旬 (C)NHK

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