東京の丸ビルに「パスタ自動調理ロボットがシェフ」の店、誕生

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2022年07月05日 16:51  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
プロントコーポレーションは、6月30日よりパスタ自動調理ロボット「P-Robo」を導入した新業態「エビノスパゲッティ」1号店を、東京・丸ビルにオープン。「P-Robo」の特徴は、誰でも簡単に、迅速な調理スピードと熟練の調理技術の再現を両立できること。



実際、スパゲッティ1食あたり最速45秒で調理が可能に。プロントコーポレーション 常務取締役 インキュベーションカンパニー長 杉山和弘氏に「P-Robo」のこだわりポイントや可能性、「エビノスパゲッティ」を含めた今後の事業展開などについて伺った。


○調理スピードだけでなくおいしさにもこだわった



――麺のゆでから、具材やソースを調理してからめるまで、1食あたり最速約45秒で出来上がるとは、画期的なサービスですね。



そうですね。メニューに応じて、プログラミングされているので、調理スタッフはボタンを押して、できあがったパスタを盛り付けるだけ、操作も簡単です。それと、熟練の調理技術を再現できる点も大きな特長となります。



ロボットの物珍しさだけだと、一度は店舗を利用していただけますが、リピートまでにはつながりません。そこでおいしさにもこだわりました。これは、プロントの運営を30年続けてきて感じるところです。


――この「熟練調理」は、どのように再現しているのでしょうか?



店頭に並んでいるカルボナーラや和風おろし、イカスミ、ジェノベーゼなどの8品のメニューごとに、具材やソースを入れた鍋の回転スピードや加熱時間などを変えて、調理します。つまり、メニューにあった最適な攪拌加熱を実現しているのです。



この点は「P-Robo」の開発会社であるTechMagicさんと共同で取り組み、4年をかけてとことんこだわりました。


――ただ、ロボットを配置するスペースが必要ではないですか?



横長サイズですが、それほど場所はとりません。パスタは冷蔵庫、具材やソースは冷蔵庫から自動で茹で場や鍋に供給されるようになっており、厨房に必須となる冷凍庫・冷蔵庫を有効活用しています。



――最大どのくらいのメニューまで作ることができますか?



具材やソースが異なるメニューだと十数品は作れます。例えば、季節の野菜や地域の食材が入ったパスタなど、そこでしか味わえない本格派メニューも提供できます。


○スタッフの教育・採用コストが大幅に削減できるメリットも



――「P-Robo」の導入によって、飲食業界の人材不足の解消につながるとお聞きしています。具体的に、どのくらい人手不足や人件費をカバーできるのでしょうか?



例えば、この店舗だとランチタイムのピーク時には、従来は調理スタッフが2名は必要でした。それが「P-Robo」を導入することで、おそらく1名で回せるようになります。また、これ以外に、もう1つ大きなメリットが「採用コスト」と「教育コスト」の削減です。



この丸の内エリアだと調理スタッフを採用するのは非常に難しい。さらにアルバイトスタッフだと採用するたびに教育しなければなりません。しかも、料理の品質も維持していくためには、必然的にスタッフの教育や育成に時間やコストがかかります。



しかし「P-Robo」ならプログラミングの設定さえすれば、誰が入っても料理を一定のクオリティで提供できます。そこは中長期的に見れば、大きなコストメリットだと思います。


○学食や社食の事業にも、「P-Robo」を活用し5年で50店舗を目指したい



――今後、他業態も含め「P-Robo」を活用した事業を5年で50店舗に展開したい発表されています。狙っている市場などはありますか?



弊社では学食事業も展開し、現在は東京大学、甲南大学、上智大学に出店中です。ランチタイムなどは非常に混雑するため、この「P-Robo」を導入すれば、おいしいスパゲッティをスピーディに学生の皆さんに提供できるので、喜んでいただけると思います。



また似た事業として社食(社員食堂)事業も検討中。現在サントリーさんの社員食堂を運営しており、今後他社などで新規契約がとれれば、「P-Robo」を導入拡大できる可能性があると思います。



――飲食業界の人手不足の解消や、新たな事業での活用など、今後チャンスが広がっていきそうですね。



この「エビノスパゲッティ」の今回の業態コンセプトは「ローテク×ハイテク」。ロボットによる調理スピードやおいしさの再現だけでなく、人による接客サービスも大切にしています。



店名の「エビノ(e vino)」はイタリア語で「〜とワイン」という意味。ワインに合うスパゲッティという思いを込めて、命名しています。それゆえ、メニューにはワインに合うおつまみやデザートなどもご用意。夜や休日などは、ワインとともに、ゆっくりとスパゲッティを中心にイタリア料理を楽しんでいただけます。



「P-Robo」は、実は回転寿司店にあるような、お客さまが直接注文できる仕組みになっています。ただ、注文を受けて途中でキャンセルができず、故障の原因にもなりますし、また業態のコンセプトにも合わないため、今回はこの仕組みを導入しませんでした。



しかし将来的に、考えられるリスクが解消され、簡素化したサービスを受け入れてもらえる土壌ができてくれば、セルフオーダーも検討したいと思っています。丸ビルの「エビノスパゲッティ」は6月30日からオープンしていますので、ぜひ店舗に訪れて、「未来の食」を味わってみてほしいですね。



西谷忠和 ライター兼キャリアコンサルタント。奈良県橿原市出身、東京都在住。リクルートメディアコミュニケーションズにて制作ディレクターを経験後、2006年にフリーとして活動。おもに人材採用・育成、キャリア教育などのHR領域の記事を得意としている。書籍の編集協力も手がけている。 この著者の記事一覧はこちら(西谷忠和)
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