17歳11カ月で逝った「ワンコ」漫画に描き続けた飼い主が語る記憶 もう立てなくても命を振り絞った家族

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2022年07月06日 07:00  ウィズニュース

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写真老いゆく愛犬との暮らしを、漫画に記録し続けた女性。永遠の別れが訪れるまでの日常を、どのような思いで過ごしたのか。聞きました。=ワンコ17歳さんのツイッター(@wanco15sai)
老いゆく愛犬との暮らしを、漫画に記録し続けた女性。永遠の別れが訪れるまでの日常を、どのような思いで過ごしたのか。聞きました。=ワンコ17歳さんのツイッター(@wanco15sai)

ペットと一緒に時を重ねるとき、避けられないのが「老い」の現実です。徐々に身体(からだ)が弱り、できないことが増えていく……。そんな愛犬の姿を、漫画の形で留(とど)めてきた人物がいます。最近ツイッター上で公開した、息を引き取るまでの日々を描いた作品が、ネット上で話題です。年をとるにつれて、家族としての愛情が一層深まったという作者に、思いを聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

【漫画】目は見えず、耳も聞こえない……それでもいとおしい老犬との日々 家族が生きた証を伝える記録です

家族の「大往生」を描いた作品
「少し前になりますが、ウチのワンコが旅立ちました」「ワンコが持ってる命の、最後のひとしずくまで、私と一緒に居てくれました」

今年6月24日、そんな書き込みと共に、4ページの漫画がツイートされました。

描かれているのは、17歳11カ月の愛犬と暮らす女性です。愛犬は高齢ゆえ、水もご飯も受け付けない状態が続いています。

自力で歩けない家族を、いつものように抱きかかえ、散歩に出かけた女性。

河川敷に差し掛かったとき、女性はふと、腕の中に目をやりました。すると、もう動かない、愛犬の姿があったのです。

「大往生でした」。そんなモノローグと共に、悲しみに全身を震わせる女性の姿が描かれ、漫画は幕を閉じます。

へたり込む飼い主に差し出した頭
今回の作品を手掛けたのは、ワンコ17歳さん(@wanko15sai)です。老いゆく愛犬との暮らしを、共に生きた記録として、イラストにしたためてきました。

「臆病で、ワガママで、ツンデレ。若い頃から、めったに飼い主にべたべたすることはなかった。『古き良き日本の雑種犬』でした(笑)」。約18年前、保護犬として引き取った女の子・通称「ワンコ」の性格を、そのように評します。

人間と適度に距離を取る。そんなワンコが、思わぬ行動に出たことがありました。5月31日に公開した漫画に、その一部始終が刻まれています。

気落ちし、へたり込む、飼い主のワンコ17歳さん。異変に気付いた愛犬が、ぶるぶると身体を震わせ歩み寄ります。その頭に触れるうち、ワンコ17歳さんは声をあげて号泣していました。そしていつしか、心が軽くなっていることに気づいたのです。

「ワンコがまだ4、5歳の頃だったでしょうか。当時の私は、失敗やショックな事件が重なり、ひどく自信を無くしていました。でも誰かに話をしたり、相談したり出来なかった。『このまま壊れて姿を消してしまいたい』と考えていました」

そんな飼い主の前で、愛犬が頭を差し出す。普段ならあり得ない光景でした。おでこを見たワンコ17歳さんは、ついなでたくなったといいます。「泣けば良いんだよ! 泣いちゃえ!」。そう言われたようで、不意に涙があふれたそうです。

歩けない愛犬の身体をなでた
私たちは、お互いを思い合う、掛け替えのない家族なのだ――。そう思っていた13〜14歳頃、ワンコが大病をしてしまいます。視覚。聴覚。身体の自由。いずれも奪われてなお、心理的な結びつきは保たれ続けたと振り返ります。

晩年、ワンコは寝たきりになり、「老犬介護」が始まりました。ご飯は何とか食べられても、水がうまく飲めません。スポイトで口に含ませようとすると、ピューッと噴き出してしまうことも。6月21日に投稿した漫画に、その様子を描きました。

「17歳を過ぎたあたりから、ワンコは歩けなくなりました。犬が歩けないなんて、飼い主にはショックだろう。そう予想していました。でも実際に自分が体験してみると、慌てることなく『抱っこでお散歩しようか?』という気持ちになれました」

息を引き取る3カ月ほど前から、徐々に活力を失い始めた愛犬。食欲も、体重も、ゆっくり、ゆっくり減っていきました。「そうか、今日は食べないんだね。よしよし」。ワンコ17歳さんは折に触れて、身体をなでてあげたといいます。

飼い主に抱き留められながら、朝夕楽しんだ散歩。もはや自らの足で大地を踏みしめられずとも、ワンコはとても楽しそうな表情を見せました。そして自宅で夜鳴きしたとき、近くに家族がいると分かると、安心した様子で過ごしていたそうです。

「ワンコの姿は、一緒にいる私たちも幸せな気持ちにさせました。徐々に老いを重ねることで、家族を悲しませないようにしていたのかもしれません。一緒に生きるって、こういうことなんだな。何となく、そう感じていました」

腕の中で動かなくなったワンコ
ある日の夕方、午後4時半。ワンコ17歳さんは、愛犬を抱いて散歩していました。いつもと同じ時間に、いつもと同じ河川敷で、いつもと同じように川を眺めます。

山々を彩る豊かな新緑と、爽やかに吹き抜ける初夏の風が、木々の葉を優しく揺らす音。穏やかでいとおしい日常の一幕です。

「気持ちいいね〜」。そう声をかけると、腕の中からうれしそうにこちらを見つめる、愛犬の姿が目に入ります。

ワンコは、そのまま動かなくなっていました。

「どんなに心の準備をしていても、別れはつらいものでした。かつてワンコに教わったように、我慢せずたくさん泣きました。仕事も家事も、何にもしないで、ジャンジャン泣きました」

一方で、ワンコ17歳さんの胸の内には、安心感も広がったといいます。犬として、きっとたくさん走りたかったはず。色んな所に行き、おいしいものも食べたかっただろう――。その全てがかなわぬまま、日々を過ごしていたのだから。

「彼女は、やっと楽になれた。引き留めるよりも、送り出す気持ちの方が強かったです」

漫画が犧瓩硫搬欧箸了間彩った
ワンコの最期を描いた漫画のツイートには、「#秘密結社老犬倶楽部天国支部」のハッシュタグを付けました。関連投稿をたどると、命を迎えた責任を全うした人々同士、亡き家族の記憶を分かち合うメッセージが目に入ります。

「老犬介護は切なくて大変でした。『#秘密結社老犬倶楽部』の皆と思いを共有することが、頑張る力になった」。喪失の悲しみと向き合い、愛犬の面影を心に刻む。今度はそのための勇気をもらっていると、ワンコ17歳さんは打ち明けました。

元々、いつか来る別離のときに備えて、描き始めた漫画。回数を重ねる中で、自らと同じく、老犬と暮らす飼い主との出会いを媒介してくれたといいます。そして、時が経つにつれて、単なる記録以上の意味を伴っていったそうです。

「昔の漫画の中にいるワンコは、現実のワンコより若くて元気です。そう実感するのはつらかった。同時に過去のワンコより、ちょっと老いた現実のワンコの方が可愛い。そうやって犧瓩硫搬欧箸了間を、より鮮やかに感じさせてくれました」

いったん幕を閉じた、愛犬との物語。しかし現在も続々と、新たな読者たちがアカウントをフォローしています。家族からは「ワンコがもっと描いてって言ってるんじゃない? きっと大喜びだよ」と言われるそうです。

「そうなのかな? と、ワンコに聞いています」。ワンコ17歳さんは少し戸惑いつつ、こう続けました。

「もう姿が見えなくなったワンコは、私の足元で、笑顔でした。私のひざに前足をかけて笑うと、すぐにプイッとどこかに小走りで行ってしまい、遠くで振り返ってまた笑っています。若くて元気だった頃の様子、そのままに」

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