よみがえる1980年代の青春 当時の雰囲気を映すホンダ車のジオラマたち

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2022年07月06日 18:01  おたくま経済新聞

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よみがえる1980年代の青春 当時の雰囲気を映すホンダ車のジオラマたち

 オイルショックから立ち直り、戦後生まれの世代が主役になって様々な文化が花開いた1980年代。当時の若者たちのライフスタイルには車という存在があり、国内メーカーから数多くの名車が誕生しました。


 若者たちの人気を集めた1980年代のホンダ車をモチーフに、連作のジオラマを作ったのはモデラーのオムナオさん。作品について話をうかがいました。


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 物心ついた時からプラモデルが好きだった、というオムナオさん。就職や結婚で一時期離れていたものの、お子さんが小学生になった2000年代前半に復帰し、活動を本格化させました。


 作るモデルは「自分が憧れて眺めていた1970年代〜1980年代のカーモデルが中心です。若い頃の思い出や願望をジオラマにしています」とのこと。F1やラリーカーといった競技車両や、最近は1970年代のアメリカントラックに夢中だそうですが、作ったものはすべて「クルマのいる風景」にしているといいます。


 1980年代のホンダ車をモチーフにした「80年代青春もの」シリーズは、2015年〜2016年にかけて作り、静岡ホビーショーにて初お披露目したという作品群。ホンダ車で統一した理由について、こんな風に語ってくれました。


 「私の家がホンダ党だったので、初代ライフや歴代シビックを乗り継いでおりました。ホンダのCM、特に80年代は洗練されていて強烈な印象があったんですね。憧れがタイヤ4本履いてアタマの中をぐるぐる走り回るもんですから、モケイにして目の前で愛でていたかったのです」


 2代目シビック(後期型)をフィーチャーした第1作「約束の日。」に続いて作られたのが、免許取り立ての初心者が主人公となった「路上のレコード」。路上駐車してレコードを買いに行っていた若者が車に帰ってくると、タイヤと路上に違法駐車取り締まりのサインがチョークで書かれていた……という作品です。


 登場している車は、3代目のシビック(1983年〜1987年)。「ワンダーシビック」のキャッチフレーズがつけられ、走りの面でも人気となったモデルです。路肩に散らばった、たばこの吸い殻もリアルですね。


 車をよく見てみると、後ろには初心者マークが掲示されているものの、前の方はダッシュボードにこっそり置いてあります。当時の若者には、初心者マークを付けて走っているのがカッコ悪い、という独特の価値観があったことを思い出させてくれます。後席にクッションが敷いてあるのも、1980年代の車あるあるでした。


 


 第3作「デニーズを出たら」は、1980年代に全国展開が本格化したファミリーレストラン(ファミレス)がモチーフ。車は「トールボーイ」というスタイルと、ユニークなダンスのCMで人気となった初代シティ(1981年〜1986年)です。


 ファミレスはドライブデートの食事で利用されるだけでなく、アルバイト先としても多くの若者に馴染み深いものでした。ジオラマは構図の広がりなどを考慮した結果、ありがちな四角形ではなく若干奥の方へ幅が広がっているのがポイント。


 2016年の静岡ホビーショーで初お披露目となった「歩道橋」は、シリーズ第4作。歩道橋下で待ち合わせる男女がモチーフとなっており、車と2体の人物フィギュア、歩道橋が立体的な関係を作る作品です。


 車は、大きなパワーバルジと大型フェンダー(ダイナミックフェンダー)で、マッシブなスタイリングとなったシティ・ターボII(1983年〜1986年)。「ブルドッグ」のコピーがつけられた、ボーイズレーサーの代表選手ともいえるインタークーラー付きターボモデルです。


 途中まで再現された歩道橋は、ジオラマベースの寸法でスッパリ切り落とすのではなく、見た時の視線を考慮して左右の手すりや階段部分が微妙に長さと角度を変えて切り取られています。立体感のある構図ですから、ジオラマの外まで空間が続いていることを意識させるようになっているのですね。


 同じく2016年の静岡ホビーショーが初出展となった、第5作の「Dゾーン駐車場」。現在も盛況な千葉県浦安市にあるテーマパークをモチーフとした、2代目CR-X(1987年〜1992年)が登場する作品です。


 このテーマパークは1983年にオープンし、まさに1980年代を代表するデートスポットの1つ。現在の最寄駅である、JR京葉線舞浜駅の開業が1988年12月ですから、当時は東京メトロ東西線の浦安駅からバスか、自家用車で来場するのが一般的でした。


 ジオラマづくりにおいて、オムナオさんは「風景の切り取り方を大切にしている」と話します。ただ模型が配置されているだけでなく、実際の風景を見ているかのように感じさせるという姿勢は、歩道橋の切り取り方や、デニーズにおけるジオラマベースの形状が物語っているように感じます。


 80年代青春ものシリーズでは「若かった頃はこうだったよな、こんな風にクルマがいたよな、と思い出しながらカタチにしていきました」とオムナオさん。この当時に青春時代を過ごした方ならば、我が事のように思えるかもしれません。


 このほかにも、様々なモチーフが「周期的にマイブームでやってくる」というオムナオさんの作品は、どれをとっても車と、それを扱う人の息遣いが感じられるものばかり。Twitterには過去作を含めて多くの作品が投稿されているので、当時を知る人知らない人、色々楽しむことができそうです。



<記事化協力>
オムナオさん(@32CM_NAOK)


(咲村珠樹)


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