メロトロンアプリ「Manetron」、ついにAndroid対応へ 開発環境は? レイテンシー問題は?

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2022年07月07日 10:32  ITmedia NEWS

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写真Android、iOS、Web、Windows、macOSとマルチプラットフォーム対応を誇るFlutterのサイト
Android、iOS、Web、Windows、macOSとマルチプラットフォーム対応を誇るFlutterのサイト

 アナログのサンプラー、古代のサンプラーなどと表現される「メロトロン」という不思議な魅力を放つ鍵盤楽器があります。メロトロンを「マネ」したiOSアプリ「マネトロン」の開発者である山崎潤一郎がメロトロン愛を炸裂させます。その行く末は……。



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●Flutterで開発するThe Manetron



 3代目となる、メロトロンアプリである「マネトロン」の開発は、ゆっくりとではあるが進んでいる。初代が「Manetron」、そして2代目が「Super Manetron」ときて、3代目の名称をどうするか悩んだ。まず考えたのが「シン・マネトロン」。ただ、流行に乗じると、この先が心配だ。たとえば、3〜5年後に「古くさい名前。そういえば以前、シン〜って流行ってたよね」と言われそうで怖い。



 それならばと、スーパーを超えるマネトロンなので「Supere_xtreme_marvelous_gorgeous Manetron」などというスペシャル感満載の名称も思いついたが、「なんだか名前負けしてね」とか言われるのも悔しい。そもそも長ったらしい。そして、悩みに悩み抜いた末の結論は「The Manetron」だった。初代の名称に定冠詞を付けただけというシンプルな名称だが、2009年の初代登場から13年、ここらで原点回帰というか、初心忘るべからずというか…。



 The Manetronは、機能的には先代と大きな違いはない。だが、今回は、Androidにも対応するべく鋭意開発を進めている。今回のアプリは、共同開発しているプログラマーのbismark氏のアドバイスもあり「Flutter」というGoogleが開発したアプリ用のフレームワークを導入する。Flutterは、Androidはもちろん、iOS、Web、Windows、macOSといった環境にマルチに対応している。The Manetronでは、まず、iPad版を先行リリースし、その後、iPhoneやAndroidに対応させる予定でいる。



 とりあえず現状は以下の動画にもあるように、サンプリングした音を出し、リバーブを含め各種エフェクトが効くところまでは進行している。



●Androidアプリのレイテンシーは?



 Android版で楽器アプリを出すことについて懸念事項がある。レイテンシーだ。以前のAndroidの楽器アプリは、タップしてから音が出るまでに200〜300ミリ秒遅れることなど普通だった。



 ある大手楽器メーカーは、Googleとコラボしてその欠点を解決すべく、いろいろと手を尽くしたようだが、どうにもならず、Androidを諦めて、iOSに注力するようになったのは業界では有名な話だ。ちなみに、iOSは、以前より20〜25ミリ秒程度の出音を実現していた。



 2009年にリリースした、Pocket Organ C3B3は、当時から20〜25ミリ秒程度の低レイテンシーを実現していた。ちなみに、当時の端末はiPhone 3GS。今のiPhoneと比較すると笑っちゃうくらい非力だ。最大5音の和音を鳴らし、しかも、9本のドローバーによる加算方式の音声合成なので、最大で45の音を重ねて鳴らす必要があった。



これだけ重たい条件が揃っているにも係わらず、レイテンシー20〜25ミリ秒程度の出音を実現できたのは、当時、発音部分はアセンブリ言語で構築したからだ。ただ、元来機械語だけにArmアーキテクチャの進化のたびに改変する必要があったり、端末の高性能化が進んだこともあり、その後、iOS標準の音声処理フレームワークに移行させという経緯がある。



●Google認定のLow Latency対応端末とは?



 初代マネトロンをリリースした当時から、Android版のManetronを出して欲しいという要望が世界のメロトロンファンから寄せられたが、レイテンシーが理由でAndroid版を開発する気持ちはまったくおきなかった。



 その後、OSとしてのAndroidも進化し、端末の性能も向上したことで、Android端末でもiOS並の低レイテンシーが実現可能になった。当然と言えば当然であろう、ミリ秒の世界で勝負するeスポーツが勃興し、画面のリフレッシュレートなどが凄まじい勢いで進化しているのだから、音のレイテンシーについても進化するはずだ。



 Android端末のオーディオ性能を示す要件がGoogleにより決められている。Googleのドキュメント「オーディオ レイテンシ」によると、連続ラウンドトリップレイテンシーを20ミリ秒以下と指定している。ラウンドトリップレイテンシーというのは、入力時の遅延、アプリ処理時間、出力時の遅延を合計した数値だ。



 また、同時に、連続出力レイテンシーが 45ミリ秒以下という規定も満たす必要があり、この両方の性能を有した状態をGoogleはLow Latency対応端末と認めている。



 アプリ開発者がGoogle Playストアでアプリを公開する際、Low Latency対応端末としての条件を満たした機種を保有するユーザーにのみ、開発者のアプリ表示を認めるような設定が可能だ。つまり、低スペックのAndroid端末では、表示すらされないということになる。



 開発者側からすると、端末スペックの制限をかけることで、販売可能なユーザーの母数自体が少なくなるので、機会損失になりかねないという悩ましい課題も発生する。とはいうものの、低スペック端末のユーザーにダウンロードを許してもひどいユーザー体験を与えるようでは意味がない。



 総合的に見て、Low Latency対応端末に限定する方が得策だろうと思っている。実際、Amazonの安価なAndroidタブレットで試してみると300ミリ秒はあるんじゃないかと思う程に出音が遅い。これでは楽器アプリとして販売することはできない。



●Google Pixelで約100ミリ秒のレイテンシー



 AmazonのFireタブレットは論外としても、一般的なスマートフォンにおいて、Flutterでの開発で今後、どれだけレイテンシーを縮めることができるのかは、チューニング次第だ。正直なところ現時点では、100ミリ秒程度のレイテンシーが確認されている。実は、筆者とbismark氏で以前共同開発したCombo Organ Model VをFlutter経由でAndroid対応にしたテストアプリがある。



 テストアプリをGoogle Pixelの新し目の端末で試したところ、100ミリ秒程度のレイテンシーであった。また、Google Pixelより性能の劣る、Galaxy A7で試したところ133ミリ秒という結果だった。



 ちなみに、iOSネイティブのCombo Organ Model Vは、105ミリ秒という結果だった。iOSネイティブが意外に遅いのには驚いたが、よく考えたらこのアプリにおいては、これまでレイテンシーなど計測したことがなかった。



 Combo Organ Model VのiOSネイティブアプリを弾いているとタップから出音まで確かに遅れを感じるが、自己補正をかけながら、コードなどは普通に弾くことができる。ということは、楽器アプリの場合、速弾きは無理でも、コード弾き程度であれば、100ミリ秒くらいならなんとかなるということでもある。Mellotronは、基本的にコード弾きがほとんどなので、現状の100ミリ秒程度のレイテンシーでも問題はないということだ。



 とはいえ、レイテンシーはできるだけ低く抑えたい。一応は、Google Pixelクラスの端末でThe Manetronのレイテンシーをどこまで低く抑えることができるbismark氏に頑張ってもらおうと思う。



 冒頭でも述べたように、The Manetronは最初にiPad版をリリースし、その後、順不同ながら、Android版やiPhone版をリリースしたと考えている。おそらく、9月頃には、お披露目できる見通しだ。ご期待いただきたい。



著者プロフィール



●山崎潤一郎



音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla


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