トークでは「話したいこと」より「話さないこと」を意識することが大切な理由

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2022年07月07日 11:30  AERA dot.

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写真秀島史香さん(写真:著者提供)
秀島史香さん(写真:著者提供)
 なぜラジオは3時間の生放送でも聞き続けられるのか? ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんですが、実は「もともと緊張しがちで人見知りで心配性」といいます。そんな秀島さんだからこそ見つけられた、誰でも再現できる「人が聞き入ってしまう会話のレシピ」を一冊に詰め込んだ『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、「話したいこと」より、「話さないこと」を意識することが大切な理由をご紹介します。


*  *  *
■「量的丁寧さ」のワナ


「ラジオって、聞く人それぞれの想像に託す、委ねるみたいな部分があったほうがいい。なんでも細かく説明すると、かえって伝わりづらくなるんじゃない?」


 ついトークが長引いてしまった日の反省会で、ディレクターから言われた言葉です。「話す」が仕事ではありますが、私はどちらかというと「説明しすぎ」のきらいがあり、心地よいバランスって難しいと反省することが日々あります。


 説明が足りないのも問題ですが、あまりに多くの情報を提供されても、聞き手にしてみたら処理しきれませんよね。


 例えば、年の瀬の街の風景を描写するとき。


<夕暮れ時、神社の参道では『分散参拝』が呼びかけられたせいか、もうすでに破魔矢を持つ人を見かけました。駅から出てくる人の中には、お歳暮なのか、大きな包みを手に家路を急ぐ人が多くいました。それから商店街には、『もういくつ寝ると……』と『お正月』のメロディーが流れて……>


 こんなふうに目にしたすべての事柄を説明してしまうと、全体がだらだらとした印象になり、何を伝えたいのかわかりづらくなってしまいます。「くどいなぁ」という印象も。


 一方、何かひとつ、とくに印象に残った情景にスポットライトを当てて、一点集中で話したらどうなるでしょう。


<寒そうに家路を急ぐ70代ぐらいの男性の手には、熨斗のかかった一升瓶のお酒が2本。紐でキュッと2本くくりにされていて。きっとお歳暮でしょうね。ああ、粋な日本の師走だな、と年の瀬を感じました>


 このように、言いたいことを絞ったほうが、頭の中に映像が浮かびやすいもの。伝えたい「年の瀬ならではの味わい深い情景」が強く印象に残ります。




■相手の記憶に残す「捨」の意識


 伝えたいものに集中、他はバッサリ落とす、という考えは写真も同じです。目に映るものをただ漠然と写真におさめるより、自分が撮りたいと思ったものや人にぐっと寄ったほうがメッセージははっきり伝わります。


「夕日に照らされてやさしく光る江の島」を撮りたいならそれだけでいいし、「夕暮れの中、ガタゴト走る江ノ電」を写真におさめたいならズームして他の要素は入れない。あれも素敵これも好きと欲張ると、ぼんやりとした写真になってしまいます。


 写真でも、トークでも、自分は何を伝えたいのか、そのためには何が必要で、何が不要か。


 とくに、取捨選択の「捨」を意識すると、大事にしたい内容が鮮やかに残ります。心配になって「これも言わなきゃ」と足したくなるところをぐっと我慢。無駄な言葉が削ぎ落とされて、内容が薄まらずに伝わります。


■腹5分目で一旦ストップ


 普段から話が長いと自覚している人は、「腹5分目くらいでいったんストップ」と心得ておけば、まず悪い結果にはなりません。


 一昔前の朝礼ではおなじみだった校長先生の話、結婚式で乾杯をする前のあいさつに象徴されますが、大好きな人以外の長い話は誰もがうんざりします。とくに、ドラマや映画を倍速で見たり、動画もどんどん短いサイズに編集されたりしている時代、延々と同じ話を続けること自体、相手の大切な時間を奪ってしまう残念な行為です。


 どんなに伝えたいことがあっても、相手に不快な思いをさせてしまっては、話の内容自体を受け取ってもらえませんしね。


 話したいことが10あっても、いっぺんに「10」すべて言おうとしないこと。


 相手と時間を分かち合うわけですから、半分も言えれば、その日は十分と考える。相手のための「スペース」をしっかり残しておくことは、話す人のマナーでもあり、大人のさりげないやさしさでもあります。


 自分のための「あれもこれも」ではなく、相手のための「今日はこれぐらいで十分」が結局一番伝わります。


【ここまで聴いてくれたあなたへ】
あれもこれもと欲張るより、一番伝えたいことは?


(構成/小川由希子)



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