シリコンバレー企業の福利厚生動向とウェルビーイング補助

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2022年07月07日 11:31  ITmedia NEWS

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写真最近すっかり乗らなくなっていたグラベル用ロードバイクの後輪を取り外して装着
最近すっかり乗らなくなっていたグラベル用ロードバイクの後輪を取り外して装着

 こんにちは。先日シリコンバレー企業の福利厚生について興味があるというフィードバックをいただきました。福利厚生といっても多岐にわたりますし、会社によっても個性があっていろいろですね。今回は私が経験した福利厚生について、最近話題のウェルビーイング(Wellbeing)の取り組みを含めて紹介したいと思います。



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●シリコンバレー企業にとって福利厚生とは?



 よく知られているようにシリコンバレーでは転職が当たり前に行われています。このためより優秀なエンジニアを採用するために、仕事内容や報酬だけでなく、福利厚生も競合他社と比較して競争力が高いものにしようという意識がとても強いです。



 また入社した従業員に対して手厚い福利厚生を提供するすることで満足度が上がり、他の会社に移ろうという動機が下がります。家族や友人にも良い会社だと話すので社外からの評判も上がり、その会社で働くことに興味を持つ人が増えます。このため福利厚生は非常に重要なものと考えられています。



 最近はコーポレートカルチャーを担当するChief People Officerという役職を設けている企業が多くなりました。ダイバーシティー&インクルージョンをはじめどのようなコミュニティにしていくのか、従業員にどのように働いてもらいたいのか、社会問題にどう対応するのか、などに対してリーダーシップを発揮します。



 福利厚生もこうしたコーポレートカルチャーを表す重要な要素の1つと考えられていて、時代や社会の変化に応じた新しい取り組みが考えられ始まっていきます。また評判の良い施策はすぐに他の企業に広まっていく傾向があります。



●シリコンバレーの福利厚生の例



 だいぶ前にGoogleがカフェテリアで無料の食事を提供するのが話題になりましたが、これを受けて無料の食事を提供するところが増えました。会社によって提供方法は異なりますが、私の勤務先では毎晩ケータリングを注文し、夜7時にオフィスの休憩スペースに行くと自由に取って食べられるようになってました。もちろん無料です。しかし5時くらいに帰宅する人が多かったので利用者は少数でした。



 無制限の有給休暇を導入している会社も多いです。もちろん好き勝手に休めるわけではありません。各自が仕事の状況を判断して休暇を計画し、マネジャーのOKをもらう必要があります。年間の残日数を気にすることなく休暇を計画が立てられるはとても自由に感じます。



 会社からすれば、従業員の取得日数の管理が必要なくなるので管理コストの削減が可能です。またカリフォルニア州の場合は、退職時に余った有給休暇を現金化して従業員に支払う必要がありますが、無制限の場合これが不要です。会社側にもメリットがあるといえるでしょう。



 最近は電気自動車の充電ステーションを駐車場に設置し、従業員に無料で充電できるようにしているところが増えました。シリコンバレーでテスラをはじめとしたEVに乗る人が多いのはこれも一因でしょう。



 Apple Parkの駐車場には潤沢な充電設備があるそうですが、こういう恵まれた環境は稀です。私の勤務先の場合、利用者に対する充電ステーションの数が少ないので、アプリで事前予約をして時間制限付きで充電するシステムになっていました。今はリモートワークの人が多いのでガラガラだと思います。



●コロナ禍になってからの変化



 コロナ禍が始まってからは、自宅で仕事をするための環境整備のための一時金だとか、毎月のブロードバンドインターネット代を一部負担するような施策が出てきました。これは日本でも同じかもしれません。



 米国ではコロナの感染者・死者数が甚大だったうえ、BLMをはじめとした人種差別問題、そして大統領選挙など大きな社会問題のニュースが続きました。SNSでこうしたニュースを見る度にメンタルに負担がかかります。また在宅勤務に伴い働く環境が変わったことによりストレスが増えたり、働きすぎてバーンアウト(燃え尽き症候群)になる人が増えたことも問題視されました。



 この頃から企業は、従業員の抱える困難な状況を理解して、それをサポートすることに力を入れるようになったと感じます。メンタルヘルスケアの窓口を設けるのはもちろんのこと、全社休業の休日を設定し仕事から離れる時間を増やすような施策が取り入れられました。またNo Meeting Dayを設けて自分のタスクに集中できる時間を確保しているところもあるそうです。



●ウェルビーイング補助について



 このような状況になり、私が勤める会社ではウェルビーイング向上のための補助が導入されました。ウェルビーイングは「幸福」とか「健康」を意味していて、健康増進、メンタルヘルス、マインドフルネスなど、日本でもいろいろな取り組みが行われているかと思います。



 補助は年間1000ドルまでとなっていて、かなり手厚いものです。年に一度レシートをまとめてシステムに申請すると、審査を経て支払われます。 残念ながら課税対象となるため4割近く引かれた額が支払われることになりますが仕方ないですね。



 同様のウェルビーイング補助を提供している会社は他にもありますが、ジムの会費等に対象を限定しているところが多いのではないでしょうか。私の勤務先がユニークなのは、対象にほぼ制限が無く、自分で考えて自由に決められるところです。一応ウェルビーイングの4分野(Physical、 Emotional、 Financial、Community)のどれかに当てはまることとなっていますが曖昧です。



 自分がウェルビーイングの向上に役立つと判断すれば、基本的にOKという運用です。Apple Watchを買う人が多いと聞きました。またエスプレッソマシンもOKでした。なお銃や武器、違法薬物、アルコールやタバコ等健康を害する物はダメと明記されています。さすがにこういうものを申請する人はいないと思いますが。



 ウェルビーイングといっても、何をすれば幸福・健康の向上ににつながるかは人それぞれ違います。誰かがこれと決められるものではないですよね。会社がそのことを理解していて、個々で考えて決めたものを尊重するスタンスはとても好感が持てます。



 シリコンバレーの企業ではダイバーシティー(多様性)の考え方が定着していて、人はそれぞれ異なることを前提に行動することが当たり前になっています。その考え方に沿った設計になっていると思いました。



●では何を買ったのか?



 さてこの補助を何に使うか結構悩みました。改めてウェルビーイングとは何か調べてみたり、このプログラムの主旨をもう一度確認してみたり。これだけでウェルビーイングに対する意識が相当向上したと思います。



 今年は運動不足解消のためインドアサイクリング用のスマートトレーナーを購入することにしました。前から気になっていたバーチャルサイクリングのZwiftをやってみたかったので。



 最近はコロナ禍以前のように家から外に出て過ごすことに時間とお金を使うようになってきたのに、なぜ今さら自宅でインドアサイクリング? と思われるかもしれません。私の場合、自宅からのリモートワークがまだまだ続くことになったので、ここで在宅勤務の環境をリフレッシュしたいという思いもあります。



 今回は補助が使えるので奮発してTacx(Garmin系列)の上位機種のスマートトレーナーを購入することにしました。たまたまZwift.comで30%オフの1050ドルになっていたので、想定よりもかなり自己負担額を抑えることができ良い買い物になりました。



 実際にZwiftを使ってみると噂通りコースの設定などがよくできていますし、自分の乗り慣れたバイクが使えるのでリアルに近い体験ができて良いですね。ジムに行く必要がないので、リフレッシュしたい時などにすぐにスタートできる手軽さもすばらしい。効果の方はまだまだこれからですが、続けられそうな気がします。



 このウェルビーイング補助は、どう使うかを自分で考えて決められたので、かなり満足度の高いものになりました。また何に使ったのかを同僚と話すのも楽しかったりします。



 今回はシリコンバレーの福利厚生の動向について紹介しました。シリコンバレーの企業は時代の変化に応じて新しいものを取り入れ変化していくのを好みます。今回紹介したものもすぐに変わっていきますし、新しいものも出てくるでしょう。面白いものを見つけたらまた紹介したいと思います。



(五島正浩)


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