ソフトバンク・大関友久、育成出身のシンデレラボーイ【“熱パ”の主役たち】

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2022年07月07日 17:24  ベースボールキング

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ソフトバンク・大関友久 (C) Kyodo News
◆ 7月連載:“熱パ”の主役たち

 ヤクルトが一強独走するセリーグに対して、パリーグのペナントレースは7月に入ると、いよいよ混戦模様を呈してきた。

 6日現在(以下同じ)首位のソフトバンクから4位のロッテまで、わずかに5ゲーム差。稀に見る“熱パ”がやって来ようとしている。どのチームも抜け出すほどの圧倒的な力量の差はなく、秋までデッドヒートは繰り広げられるだろう。

 そんな紙一重の激戦を勝ち抜くためには、ヒーローの誕生が必要だ。暑い夏を乗り切って、栄光のゴールに飛び込むのはどのチームになるのか? それぞれの舞台裏を探ってみる。


◆ 第1回:不安定な投手陣の救世主となった大関友久

 お家の一大事だ。ソフトバンクの選手やチーム関係者は、首位を走る手応えなど今は感じていないだろう。

 先月下旬に襲ったコロナ禍。同月27日に和田毅、ユリスベル・グラシアル選手ら、翌28日には甲斐拓也、アルフレッド・デスパイネ選手らに相次ぐ陽性判定が出る。コーチやチームスタッフを含めると14人もの戦線離脱者を数え、チームは活動停止に追い込まれた。その結果、29日のロッテ戦と7月1日の西武戦は中止に。それでも再開後は西武と楽天を相手に3連勝するのだから、このチームの底力を証明した格好だ。

 春先には外野のレギュラーだった栗原陵矢、上林誠知選手らを故障で欠いたが、柳町達、牧原大成ら若手選手がその穴を埋めていく。

 投手陣に目を転じれば和田が出遅れ、エースの千賀滉大に本来の凄みがなく、守護神の森唯斗も不振からファーム調整に回るなど決して盤石な状態ではなかった。しかし、ここで救世主が現れる。大関友久、育成出身の3年目が大きな花を咲かせた。

 19年の育成ドラフト2位。昨年まで一軍未勝利の未完の大器が、今季はここまで6勝3敗、防御率2.01でチームの千賀、東浜巨と成績でも肩を並べている。3人併せて18勝8敗はチームに10個の貯金をもたらしている。特に大関の成長なくしてチームの首位もなかっただろう。

 185センチ、94キロの大型左腕。巨体から繰り出される150キロ近いストレートは角度があり、フォークボールも鋭く落ちる。藤本博史新監督にとっては2軍監督時代から特徴も把握している。

 開幕2カード目のロッテ戦に先発させると、すくさまプロ初勝利で結果を残して先発ローテーションの一角を掴み取った。2完投はいずれも完封でリーグトップタイ、この安定感があれば1年間を通して活躍も望める。


 今季、パリーグの新人王争いで注目を集めているのは大関の他に西武の中継ぎで活躍する水上由伸投手や、日本ハムの北山亘基投手に、打者ではチームメイトの柳町、野村勇選手らがいる。現時点では大関が頭二つくらい抜け出しているので、このまま2ケタ勝利以上を稼ぎ出せば新人王は当確、さらにチームの2年ぶり優勝も見えてくるはずだ。

 高校時代は甲子園経験もなく、仙台大でもドラフトで注目されるほどの存在ではなかった。

「大関」の名前から昨年までは「幕下以下」の扱いだったが、5月に3勝目を挙げると、藤本監督は「前頭3枚目くらい」と昇格発言。そして6月の日本ハム戦で2度目の完封勝利を上げると、指揮官は「関脇くらいにしておきましょうか」と成長に目を細めた。


 チームがピンチを迎えた時こそ、代替えを含めた選手層の厚さが問われる。1軍から3軍までの激しい生存競争が新たな戦力を生んでいく。

 千賀や甲斐、石川柊太選手らはもちろんの事、牧原や周東佑京選手らも育成出身、そして今季は大関が「育成の星」として加わった。

 このチーム、ちょっとのアクシデントくらいでは弱体化しない。“熱パ”の主役の座も簡単には引き下がらないはずだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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