「甲子園まであと2人」から異例の“ノーゲーム”も 地方大会で起きたまさかの出来事

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2022年07月07日 18:00  AERA dot.

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写真様々なことが起こる夏の甲子園の地方大会 ※画像はイメージ
様々なことが起こる夏の甲子園の地方大会 ※画像はイメージ
 今夏も高校野球の地方大会が開幕。全国各地で甲子園出場を目指して球児たちの熱い戦いが繰り広げられている。


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 地方大会は甲子園常連の強豪も部員不足に悩むチームも同じ土俵で戦うとあって、甲子園以上にまさかのハプニングが目白押しだ。


 過去の熱戦の中から、思わず目を白黒させられるような珍プレーや珍場面を紹介する。


 盗塁に成功した走者が一塁に逆戻りする珍事が起きたのが、1977年の熊本県大会準々決勝、熊本工vs熊本二だ。


 同年、3季連続甲子園出場を実現し、甲子園でも8強入りをはたした熊本工だが、この日は、度胸の良さを買われて三塁手から投手になった熊本二・東政明の超スローボールにタイミングを狂わされ、2回に1点を挙げただけで、6回までスコアボードにゼロを並べる大苦戦となった。


 だが、1対0の7回に4番・小林裕一の中越えランニング本塁打で2点を追加すると、8回にも5番・山森雅文(元オリックス)の左中間へのランニング本塁打など、打者一巡の猛攻で大量7得点し、ようやく試合を決めた。


 まさかの珍プレーが見られたのは、その8回攻撃中だった。東が7番・林田孝史に初球を投じた直後、一塁走者の土田秀明がスタートを切り、二盗を決めた。


 ところが、内野陣の「ファウルだ」などの声に惑わされた土田は、せっかくセーフになった二塁を放棄して、スタスタと一塁にUターンするではないか。


 これにはボールを持っていた捕手・橋口和明もあっけに取られ、結果的に帰塁を許してしまった。


 想定外の事態に審判団も「どうしたものか」と首を捻ったが、「二塁ベースを越えるほどのリードをした」という“超法規的解釈”がなされ、走者一塁で試合再開となった。


 土田はすぐに気持ちを切り替え、次の2球目、東のモーションの隙をついて鮮やかに二盗成功。スタンドから大拍手が贈られた。


 甲子園初出場まで「あと2人」の9回1死から、異例の降雨ノーゲームに泣いたのが、89年の大分雄城台だ。



 大分大会決勝の鶴崎工戦、0対1とリードされた大分雄城台は8回、四球と犠打で1死二塁と反撃し、大神敏行の右中間三塁打で同点。なおも四球と盗塁で1死二、三塁とチャンスを広げたあと、田中篤史の左越え3ランで4対1と逆転に成功した。


 だが、台風11号接近の影響で、雨が降ったりやんだり、不安定な天候のなか、行われていた試合は、あと1イニングで大分雄城台の勝利という9回に雨が激しくなる。8回まで1失点のエース・植木貴弘が制球を乱し、すっぽ抜けを連発。濡れたボールを何度も交換したが、効果なく、3長短打で2点を返されてしまう。


 1点差に迫られ、なおも1死三塁のピンチで、雨が一段と激しくなり、試合中断。1時間余り回復を待ったが、午後4時46分、ついにノーゲームが宣告された。


 準決勝までなら降雨コールドで大分雄城台の勝利だったが(高校野球は7回で試合成立)、決勝戦は9回まで行うルールで、コールドが適用されないため、9回1死まで試合が進みながらノーゲームという県高校野球史上初めての珍事に……。


 野球部長が中止を伝えると、ナインの一部から「ああ、あほらしい」と不満の声が上がり、決勝3ランを放った田中も「えっ、あのホームランは幻になったんですか」と驚きの表情を浮かべたが、坂東一彦監督は「ホッとした気分。中断したときは鶴工が押していたし、1死走者三塁は同点にされたと一緒。負けもあったかもしれない」とまっさらな状態での仕切り直しに胸をなで下ろしていた。


 だが、翌日も雨で順延となり、翌々日に行われた再試合は、鶴崎工が6対2で逆転勝ち。大分雄城台にとっては、最初の試合の勝利目前での“無情の雨”が悔やまれた。


 同校は安藤優也(元阪神)を擁し、甲子園が期待された95年も、準々決勝の日田戦で、テキサス安打を放ち、二塁を狙った安藤がクロスプレーの際に左手を負傷して交代する不運なアクシデントで敗退。99年、08年にも決勝で敗れ、あと一歩甲子園に届かなかった。


 なお、今年から甲子園では継続試合が導入され、ノーゲームや降雨コールドはなくなった(地方大会は主催者が判断)。



 試合を決める劇的な本塁打を放った選手が、“カニ歩き”しながらホームインする珍風景が見られたのが、18年の茨城大会2回戦、石岡一vs竜ヶ崎一だ。


 7回に1点を先制した石岡一は、1対0の8回にも無死一塁のチャンスをつくり、主将の1番・河嶋駿太郎に打席が回ってきた。


 ここはどうしても追加点が欲しい場面だったが、河嶋は3回から足が痙攣して走れなくなっていた。川井政平監督からも「この打席が終わったら、交代させる」と告げられていた。


 これまで3打数無安打だった河嶋は、最後の打席で主将の意地を見せようと「走れないので、ホームランを狙いました」と気合を込めて執念のひと振り。快音を発した打球は、見事値千金の2ランとなって、右翼席に突き刺さった。


 両足を吊った状態にもかかわらず、歩きながらダイヤモンドを1周しようとした河嶋だったが、三塁ベースに達したところで、ついに限界となり、ベース上で小休止。ひと息入れたあと、今度はカニのようにゆっくり横歩きしながら、やっとの思いで、3点目のホームを踏んだ。


 生還後は「メッチャ恥ずかしかった」と照れることしきりの河嶋だったが、チームメイトたちに抱きかかえられ、ヒーローになった喜びを全身で体感していた。(文・久保田龍雄)


●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。


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