写真![]() 皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、早期リタイアを希望する30代の会社員男性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。 |
50歳からの完全リタイアは可能でしょうか?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、早期リタイアを希望する30代の会社員男性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
相談者
オレンジさん(仮名)男性/会社員/35歳
イギリス/賃貸住宅
家族構成
妻(専業主婦/32歳)、子1人(1歳)相談内容
会社が激務で、50歳には引退したいです。可能でしょうか? 「完全リタイア=仕事はしない」を希望。リタイア後は、北海道に戻ってゆっくりしたい。北海道に実家があり、そこに住むつもりです。生活費は20万円を想定。それでやりくりしたいと考えています。
家計収支データ
オレンジさんの家計収支データは図表のとおりです。
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家計収支データ補足
(1)子どもについて第2子希望。できれば3年以内。
(2)ボーナスの使いみちについて
旅行/50万円、家電やゲーム/50万円、貯蓄/100万円
(3)加入保険について(保険料1万円の内訳)
・相談者/医療保険(入院2万円)=保険料2000円
・相談者/死亡保険(死亡保障1000万円)=保険料3000円
・その他、イギリスで保険加入。保険料は約5000円
(4)退職金について
現在の勤務先で50歳まで勤務して、退職金制度1000万円程度。
(5)公的年金について
公的年金は、日本の老齢年金(老齢厚生年金)を受給する。勤務先に日本支店があるためとのこと。
FP深野康彦の2つのアドバイス
アドバイス1:90歳の時点で2400万円近くが手元に残るアドバイス2:生活費によってはリタイア後も働くことが必要
アドバイス1:90歳の時点で2400万円近くが手元に残る
50歳での早期リタイア(一切働かないフルリタイア)についてのご相談ですが、結論から言えば、ほぼ問題なくできると考えます。貯蓄ペースが毎月30万円にボーナスから100万円とのことですから、年間貯蓄額は460万円。これを50歳まで継続すれば6900万円。このうち、お子さんが2人となった場合の養育費(教育費を含めた、子育てすべてにかかる費用)を差し引きます。
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これに退職金1000万円と、今ある金融資産の3000万円(貯蓄、投資とも目減りしないと仮定)を加算した6900万円が、50歳以降の生活資金ということになるわけです。
一方支出ですが、リタイア後の毎月の生活費は月20万円を想定されているので、老齢年金が支給されるまでの15年間で3600万円。その時点で、残りの手持ち資金は3300万円となります。
65歳以降は老齢厚生年金が支給されます。その額はこの場で算出できませんが、仮に20万円とします(相談者は50歳まで厚生年金加入。妻は老齢基礎年金を満額受給と想定)。実際は、そこから税金や健康保険料が差し引かれますので、それを3万円とすれば、結果、毎月3万円が不足します。
オレンジさんが90歳まで生きるとすれば、65歳から25年間で不足額の合計は900万円。したがって、90歳を迎えた時点で2400万円が残ります。
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アドバイス2:生活費によってはリタイア後も働くことが必要
では、懸念部分はまったくないかと言えば、2点ほどあります。まず、リタイア後の生活費です。現在の生活費から、家賃を差し引くと33万円となります。また、ボーナスから100万円を支出していますから、それを月割りし加算すれば41万円となります。
対して、50歳以降は20万円で生活するということですから、21万円削減する必要があります。これは、それだけ生活をダウンサイジングする=レベルを下げるということを意味しますが、そう容易ではありません。
ちなみに、もし41万円で生活をすれば1億80万円、先の試算に生活コストを加算しなくてはいけません。そうなると、オレンジさんが64歳のとき、資産は底をつきます。
もちろん、会社員として暮らすイギリスとリタイア後の地元・北海道での生活が、同じコストとは考えにくいですが、本当に生活費の半減は可能か。あるいは、どの程度までなら可能なのか。まだ先の話ではありますが、単なるイメージではなく、細かく試算しておく必要はあるかと思います。
また、もしリタイア後、想定以上に生活費がかさむということになったら、対処法としては、働くしかありません。アルバイトで構いません。月収で6万〜7万円でも、家計にとっては大きなプラス。また、働くことで、新しい環境により早く慣れるという効果もあります。
オレンジさんは完全リタイアを希望されていますが、場合によってはそういう選択肢もあるということを、頭の隅に置いておくべきでしょう。
もう一つが、50歳まで勤務できるかどうか、ということです。リタイアの理由は「仕事が激務」ということ。それがどの程度かは不明ですが、まだ30代で、リタイアを意識するほどハードに感じているわけです。しかも、希望するリタイアまで、まだ16年もあります。
相当に激務であれば、途中で健康を害する可能性も否定できません。仮に、そのために収入が途絶えたら、リタイア計画そのものが白紙となります。ご自身の健康管理には十分に気をつけてほしいと思います。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文:清水京武
(文:あるじゃん 編集部)