『週刊さんまとマツコ』めるるを当てこする菊地亜美に見る“悪い思い込み”

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2022年07月08日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今週の有名人>
「私、こんなしゃべらなくても売れるわ」菊地亜美
『週刊さんまとマツコ』(TBS系、7月3日)

 この世で怖いものは何か。考えるといろいろあるけれど、「一つだけ」と言われたら、私は「思い込み」を挙げる。

 思い込みは、私たちを不幸にする。例えば、新卒大学生向けの就活情報サイト「就活の教科書」に公開された記事は、まさに思い込みによる不幸について考えさせるものだった。

 同記事内には“底辺職”として具体的な職業が挙げられており、ネット上で「職業差別だ」と炎上した。ライターや編集部が、こうした極端な言葉をあえて使ったのは、匿名掲示板「2ちゃんねる」開設者・ひろゆき氏らインフルエンサーの真似なのではないだろうか。

 彼らの発言には「人の評価」にまつわる言葉が、よく使われているという印象を受ける。「Fラン」「低収入」「無能」「無価値」……なぜ、彼らがそういう言葉を使うかといえば、人は誰しも「あなたは価値がある」と言われたいもので、特に人に褒められたい気持ちが強い人ほど、けなされることを恐れ、けなし言葉に敏感になってしまうからだ。インフルエンサーはそのあたりの機微を熟知しており、わざと「おまえは無価値だ」と端的に表す言葉を使用して、人の興味を引き、数字を稼ぎ、現在の地位を築いたのではないか。

 先に挙げた“底辺職”の記事も、ニュースサイト「週刊女性PRIME」によると、これが“底辺職”だと脅して耳目を集めた後、その職を回避するために利用すべきサイトを紹介し、クリックを誘導する仕掛けをしていたそうだ。

 問題は、判断力のない若い人が、こういうけなし言葉を含んだPV目当ての情報を信じてしまうことだ。世の中に“底辺職”などというものは存在しないことは言うまでもないが、「お前の仕事は底辺だ」と人から言われたくない思いが強い人ほど、“底辺職”とはどんな職種か知りたくなるだろう。さらにライターや編集部の主観でしかない“底辺職”を、本当に“底辺”だと思い込んでしまい、その職業に就く人をも低く見るようになるのではないか。

 「あの職業は、底辺だ」と思い込むのは個人の自由だ。しかし、そういう人が、何らかの理由でその“底辺職”に就くことになったら、どうなるのだろう。この世に“底辺職”なんて存在しないと思う人は、普通に仕事をして、職場の人間関係を構築していくだろうが、自分は“底辺職”をしていると思う人は、自分を恥じ、自己評価を下げ、そのため人とも関われず、孤立してしまうのではないだろうか。このように、「あの仕事は底辺だ」という思い込みは、人生をまったく別のものにしてしまうかもしれないのだ。

 そうは言っても、思い込みを持たない人はいない。特にテレビでは、思い込みが笑いを誘うこともあるので、一概に悪いものとは言い切れないが、7月3日放送『週刊さんまとマツコ』(テレビ朝日系)を見ていたところ、芸能界での“悪い思い込み”の例を目の当たりにした。

 同番組のゲストは、タレント・菊地亜美と朝日奈央。2人はアイドルグループ・アイドリング!!!出身で、現在はバラエティを中心に活動しているという共通点がある。しかし、現在バラエティでは、モデル、ママタレなどさまざまなジャンルの女性タレントがしのぎを削っていて、菊地、朝日は“ポジション迷子”になっているという。

 朝日はいろいろな番組で見かけるが、本人いわく「特番は呼んでいただける」「でも、レギュラーまでは行かない」そうだが、菊地は「あんたもなの?」「私……前からそうだよ」と、迷子状態が長いことを自ら明かした。ちなみに菊地は、仕事にNGがないため、かつて『うわっ!ダマされた大賞』(日本テレビ系)でエレベーターから落とされたそうだ。当時は「何でこんなに何回も落とすの?」と考えていたが、「今考えたら、早く落ちたい」と現状を自虐的に語った。

 そんな“ポジション迷子”という立場を利用して、菊地は売れっ子にかみついていく。最近は、みちょぱ(池田美優)、藤田ニコル、めるる(生見愛瑠)など、モデルが積極的にバラエティ進出しているが、菊地はめるるについて「うまいんですよ、めるるとかは最初バラエティで始めの頃とかは、毒づいたりしていたんですよ」「たぶん気づいたと思うんですよ、途中で。『私、こんなしゃべらなくても売れるわ』って」「絶対気づいたと思う」「バラエティでもニコニコしていいポジション」と指摘。めるるは、周囲の様子を見ながらキャラを変えた“小ズルい”人物であるというニュアンスをにじませていたように思う。

 しかし、さんまによると、めるるが毒舌をやめたのは、事務所からの業務命令だそうだ。なんでも、めるるが最初にかみついたのが、女優・泉ピン子だったという。同番組の共演者である麒麟・川島明は、ピン子を「狂犬」と表現したが、芸能界の大先輩にしてコワモテとうわさされる人物にかみつくのは、どう考えても得策ではない。事務所がめるるにかみつき禁止令を出すのは当たり前のことと言えるだろう。

 朝日はめるるのルックスが優れていることは認めつつ、芸人と朝日、めるるで大喜利企画に挑戦したところ、「ハナコの菊田(竜大)さんよりウケてて」と笑いのセンスが高いことを証言している。つまり、力があるから売れたということで、めるるが計算高いというのは、菊地の思い込みだろう。

 売れている人を軽く当てこすって笑いを取るのもバラエティの技の一つだから、これはこれでアリなのだが、菊地に「めるるはズルい」という気持ちがまったくなかったとは言い切れない。このように、自分から見てうまく行っている人が「ズルをしている」「トクをしている」と思いが強くなったとき、それは悪い思い込みである可能性が高いように思う。

 「あの人は実力があるから認められている」と思ったら、見習うとか、逆に「あの人には勝てない」と白旗を上げるのが一般的な反応だろう。しかし、「あの人はズルをして認められた」と思っていると、納得できない思いがあるために、自分の仕事に集中できなくなって、パフォーマンスが落ちてしまう可能性がある。

 芸能界のようにオファーがあって初めて成立する仕事も、会社員も、評価のされ方というのは実は不透明な部分が多い。だからこそ、「あの人はズルをして認められた」というようなマイナスな思い込みをしないように注意をする必要があるだろう。

 幸いにも、菊地の場合、番組内でバラエティ界の大物、島崎和歌子のモノマネがうまいことが判明した。さんまも「これで菊地、1年いける」とお墨付きを与えている。悪い思い込みを捨てて、モノマネを磨き、バラエティの世界で活躍してほしいものだ。

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