shroudが『VALORANT』のプロプレイヤーに。異例の現役復帰からeスポーツの選手寿命を考える

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2022年07月16日 10:01  リアルサウンド

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(画像=Sentinels Twitterより)

 7月9日、アメリカのeスポーツチーム・Sentinelsは、shroud(シュラウド)が同チームの『VALORANT』部門に所属することを明らかにした。


 shroudがプロゲーマーとして第一線に復帰するのは、実に4年ぶりのこと。リアルスポーツ同様、加齢やブランクによる影響が大きいと言われるeスポーツ分野において、異例の現役復帰となった。


 これまでは選手寿命が短いとされてきたプロゲーマーという職業。そうした常識は、取り巻く環境の変化や整備によって過去のものとなるだろうか。


【動画】世界中で反響の「復帰発表動画」


〈28歳にして、4年のブランクから異例の現役復帰を果たしたshroud〉


 shroudは、カナダ出身・アメリカ在住のプロゲーマーだ。かつてSentinelsとは別のアメリカのeスポーツチームであるCloud9に所属し、FPSタイトル『Counter-Strile: Global Offensive』のプレイヤーとして活躍した。その後、2018年にチームからの脱退と競技シーンからの引退を発表。以降は、Twitchなどでストリーマーとして活動している。


 2022年6月に28歳となったshroud。現役時代に華々しい実績を残したとはいえ、プレイヤーとして脂が乗ってくるであろう4年間を競技シーンから離れて過ごしたこと、プレイヤーの若年化により28歳という年齢は「ベテラン」に位置することなどから、以前のような活躍は難しいと考えるのが一般的だ。そもそもこのような背景があるなかで、プロチームから声がかかること自体が異例。往年の彼のプレイを知るフリークたちにしてみると、期待と不安の入り混じった複雑な心境だろう。シーンに爪痕を残せるのか、今後の動向に注目が集まっている現状だ。


〈“衰え”というスポーツ共通の課題。プロゲーマーの寿命は今後伸びていくか〉


 運動競技においては、加齢による身体能力の衰えとどう向き合っていくかが、長く現役を続ける上でのテーマであるといえる。eスポーツも例外ではなく、反射神経や動体視力、周辺視力、視野の広さなど、さまざまな面がベテランプレイヤーの障害となっているはずだ。


 たとえば動く物体を正確に認識するための能力である動体視力では、「男女とも15歳をピークに、その後は加齢とともに一定の割合で衰えていく」というデータ(※)がある。スポーツでは極めて重要とされるこの能力。いくら反射神経の数値が衰えていなかったとしても、動く人や物を正確かつ迅速に認識できなければ、同じ感覚でのプレイは困難となる。


 こうした身体能力の衰えによる影響は、運動性の高いゲームジャンル・タイトルほど大きくなる。その意味でshroudが主戦場とするFPSは、格闘ゲームなどと並び、“最も影響の大きい分野”と言えるだろう。


 一方、eスポーツには、「マインドスポーツ」の側面もある。マインドスポーツとは、フィジカルと同等、またはそれ以上にインテリジェンスが求められる競技を指す言葉だ。勝敗を決するにあたり、思考力や記憶力、判断力、集中力、競技に対する理解といった要素が大きく作用する特徴を持つ。わかりやすい例では、将棋やチェスといった伝統的なボードゲームがここに分類される。広義には、ゴルフやビリヤード、アーチェリーなどもマインドスポーツの一種と捉えられるかもしれない。


 もちろんバレーボールやバスケットボール、サッカーといった典型的なフィジカルスポーツにもインテリジェンスは必要だが、マインドスポーツの例として挙げた上述の競技では、身体能力が十分でなくても勝利を手にするケースがある。FPSや格闘ゲームといった運動性の高いeスポーツジャンルも同様。流行のFPSバトルロイヤル『Apex Legends』において、技術的に優れたプレイヤーが常にチャンピオンとなるかを考えれば、納得してもらえるのではないだろうか。


 eスポーツにはこうした側面があるからこそ、たとえ身体能力が全盛期より衰えていたとしても、競技シーンで再び活躍できるケースが考えられる。直近では、王道の競技タイトル『League of Legends』や『Halo』において、往年のトッププレイヤーが現役復帰した例、または現役復帰に向けて動いているとの噂もある。国内の格闘ゲーム界隈では、梅原大吾やときど、ふ〜どといった30代中盤〜40代にかけてのプロゲーマーが現在も活躍する姿を見せている。


 shroudの現役復帰で注目を集めるプロゲーマーの寿命問題。競技シーンが成熟しつつあるからこそ、単純な運動能力だけでなく、知識や経験に基づいた活躍もありえるのだろう。eスポーツ以上に運動能力にシビアであろう、野球やサッカー、競馬といったフィジカルスポーツに目を向ければ、50代となってもなおプロとして活動する例もある。今後は同分野にも、こうした稀有な存在が現れるのかもしれない。(結木千尋)


※https://cir.nii.ac.jp/crid/1570854177298228352
(数値は横方向の動きに対する能力であるDVA動体視力のもの)


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