『ペーパー・ハウス・コリア』で再注目!? 海外ドラマをリメイクした傑作韓国ドラマ3選

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2022年07月20日 08:01  リアルサウンド

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『サバイバー:60日間の大統領』(tvN公式サイトより)

 スペイン発のNetflixシリーズ『ペーパー・ハウス』のリメイク作で、Netflixで配信中の韓国ドラマ『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』が、Netflixで配信中だ。本作に限らず、近年海外ドラマを原作とした韓国リメイクが盛んな中、韓国国内で高い評価を受けた傑作3作品を紹介したい。


【写真】ブレイク中のソン・ソック


■『夫婦の世界』


 2020年のメガヒット作『夫婦の世界』は、イギリスのヒットドラマ『女医フォスター 夫の情事、私の決断』のリメイク作だ。番組掲示板に270万件もの書き込みが寄せられたことからも、本国での話題っぷりがうかがえる。「百想芸術大賞」では、演出賞、キム・ヒエが最優秀演技賞を受賞した。イギリスBBCからも「本質を貫いた脚本、緻密な演出で完成度の高いリメイク作」(※1)と高評価を受けている。


 富と名誉を手に入れ、愛する夫と息子に囲まれ順風満帆な日々を送る女医チ・ソヌ(キム・ヒエ)が、ある日夫のマフラーに1本の長い髪を見つけてしまうことから始まる妻の復讐と夫婦の心理戦を描いている。夫が「不倫しているのでは?」と一度疑い始めたらきりがない。ソヌは信じていた世界が全て偽りであることを悟り、狂気と憎悪、そして悲しみで理性を失っていく。サレ妻の吹き荒れる復讐劇にサスペンス展開も加わり、スリリングにストーリーは加速していく。キム・ヒエの迫真の演技が緊迫感を掻き立て、「1話だけ観よう」と思っても再生ボタンを押す手が止まらない。


 「不倫ドラマ」と聞くと、どうしても昼ドラ的なドロドロ展開を想像してしまうが、本作では、それぞれの夫婦を通じて、理性的には説明できない情や執着心、葛藤といった夫婦が抱える複雑な感情をリアルに描き出している。ドラマティックではあるが、私たちの身に起こり得ない、非現実的な話とは言い切れない。スリリングな展開に釘付けになってしまう一方で、「自分だったらどうするだろうか?」と、思わず考えてしまう共感性が高いのも、大きな支持を集めた理由だろう。ソヌやダギョン(ハン・ソヒ)をはじめ、登場する全ての女性たちが、傷つき、もがきながらも自らの生き方や幸せを模索する姿には、感情移入してしまう。他人には分からない夫婦や家族の本質を捉え、まさに「夫婦の世界」を赤裸々に描き切った本作は、単なる刺激的な「不倫ドラマ」には収まりきらない名作だ。


■『サバイバー:60日間の大統領』


 『24 ‐TWENTY FOUR‐』で知られるキーファー・サザーランド主演の同名のアメリカドラマ『サバイバー:宿命の大統領』を、韓国の状況に合わせてリメイクした本作品。突然の国会議事堂爆弾テロで大統領をはじめとする長官、国会議員のほとんどが壊滅状況になり、政治経験ゼロの環境部長官パク・ムジン(チ・ジニ)が60日間、大統領代行として務めることで繰り広げられる物語だ。


 小難しい政治ドラマを想像する人も多いだろうが、「権力」という単語とは関係ない人生を生きてきた、政治経験ゼロのムジンの視点から政治を眺めていく為、まるで大統領代行を疑似体験しているような感覚になり、自然に観る人を政治の世界に引き込んでいく。容赦なく突き付けられる選択と決断の連続の中で、「正直であること」「国民の為の政治」という一般人の視点から極めて「当たり前」である信念を貫き通していく姿には胸が熱くなる。大統領代行を支える人々の、コミカルかつ胸熱な人間ドラマが実に「韓ドラ」らしくて心地いい。


 さらに、カン・ハンナ演じる国家情報院対テロチームの分析官ナギョンを通じて、“テロの主犯”は一体誰なのか、またその目的は何か、というサスペンス要素が濃密に絡んでいき、一瞬たりとも目が離せない。


 『私の解放日誌』で今大フィーバー中の“ク氏”ことソン・ソックが秘書という重要な役どころを演じているのをはじめ、『39歳』の号泣演技が印象的だったイ・ムセン、『グリーン・マザーズ・クラブ』の“女神”キム・ギュリ、『最愛の敵』で注目を浴びるカン・ハンナなど、今ホットな俳優たちが勢揃いしているのもポイントだ。


■『ライフ・オン・マーズ』


 イギリスBBCドラマ『時空警察1973 ライフ・オン・マーズ』をリメイクした本作。様々な国でリメイクされ、広く愛された作品だったために、このような完成度の高い原作をどのように脚色するのか案ずる声も少なくなかったが、「出演俳優の代表作」とも言われた俳優たちの熱演とともに、原作の長所を活かしつつも韓国だけの色を吹き込み、高い評価を得た一作だ。


 連続殺人の容疑者を追っていた最中、事故に遭ってしまった刑事ハン・テジュ(チョン・ギョンホ)。目を開けてみると、人々の装いも、街の看板も、通り過ぎる車も見慣れない風景が広がっている。夢なのか現実なのか分からない中、1988年の刑事たちと出会い、失われた過去の記憶を探し、自分が捜査していた連鎖殺人事件の真実に近づいていくエキサイティングなレトロ捜査劇だ。多くのミステリーマニアを魅了した原作の面白さを引き継ぎながらも、1988年に起こった実際の事件をモチーフにしたエピソードも交え、緊迫感溢れる展開が続いていく。


 防犯カメラ、DNA鑑定、科学捜査が当たり前の時代に生きていたテジュが、身一つで事件とぶつかっていく88年の刑事たちとともに、アナログな捜査現場を体験していく過程が興味深い。最初は反発していたテジュと、情が溢れる彼らの間に芽生えていく仲間意識と絆に、心がほっこり温まるのも本作の魅力だろう。


 過去に帰る、あるいは過去と連絡を取って進行するいわゆる“タイムスリップ”ものは、『シグナル』や『トンネル』など今や“韓ドラあるある”素材だが、本作の面白さは、ハン・テジュの一人の視点でストーリーが進行していくため、昏睡状態に陥ったテジュの幻想なのか、本当に彼が過去に戻ったのか、現実なのか夢なのか観る人を最後まで混乱させる点だ。そしてその混乱が、最後には「幸せとはなにか」を問いかける温かなメッセージとなって観る人を感動させる。


 『賢い医師生活』のチョン・ギョンホと、パク・ソンウン、オ・デファンといった、個性派キャラを演じさせたら一級の演技派俳優たちとのコミカルなやりとりと胸熱ブロマンスは必見だ。


・参考
※1. https://newsis.com/view/?id=NISX20200515_0001025520&cID=10601&pID=10600


(Nana)


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