自身の命運まで左右する楽天・石井GM兼監督【“熱パ”の主役たち】

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2022年07月21日 18:44  ベースボールキング

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楽天・石井 一久監督
◆ 第3回:開幕ダッシュも急失速で進退が危ぶまれる石井GM兼監督

 楽天打線が久々に火を噴いた。

 20日のソフトバン戦は今季最多21安打17得点で爆勝。浅村栄斗、炭谷銀仁朗選手が、それぞれ2発に辰己涼介選手も本塁打を放ち、1試合5発も今季初のこと。

「チームがぐっといい方向に進んだんじゃないかと思います」と石井一久監督も久々に手応えを感じた。前を行くソフトバンク、西武に再び1.5差(20日現在、以下同じ)だが、後ろを振り返れば5位のオリックスまでも2ゲーム差だから、気の休まる暇はない。


 見事な開幕ダッシュだった。

 開幕から4月までに16勝6敗1分け。5月5日には7連勝で20勝一番乗り、わずか27試合での大台到達だった。

 パ・リーグで同時点に20勝を上げたチームは過去に14度、そのうち10チームが優勝のデータもあり、順風満帆の船出だった。

 GM兼監督の「二刀流指揮官」として2年目。昨年は勝負所で敗れ、3位に甘んじた。19年には同じく3位に終わった平石洋介監督(現西武コーチ)を解任したのも石井GM。今年が背水の陣なのは本人が一番分かっている。

 勝負のシーズンを前に、指揮官が執ったのは前年の反省から学んだチームの大改造だった。

 昨年のチーム打率(.243)はリーグ3位ながら、同本塁打(108)は5位で盗塁数(45)はリーグワースト。塁上は賑わすが、一発もなければ、機動力もない。

 そこで日本ハムを自由契約になった西川遥輝選手を獲得。さらに新外国人としてホセ・マルモレホス、クリス・ギッテンス選手が入団、共にクリーンアップで20本塁打以上を期待出来るとの前評判だった。

 西川の加入で機動力は飛躍的に向上している。現時点のチーム盗塁数は64だから、昨年の1年分をすでにクリア。だが、打線に厚みを増すはずだった助っ人に誤算が相次ぐ。

 ギッテンスは開幕直後に左手首を骨折、マルモレホスも極度の打撃不振で6月上旬には2軍落ちする。その結果、昨年同様に主砲の浅村と島内宏明選手の前後を打つ人材が枯渇してしまった。

 そこにエースの一角を占める涌井秀章投手の故障や早川隆久投手のコンディション不良、西川のコロナ陽性離脱など誤算が相次ぎ、チームは失速する。

 交流戦後は今季初の5連敗を喫するなど8勝16敗の成績では、よくAクラスにとどまっている、と言うのが実情だ。


◆ チームの将来を考えながら目先の勝利を求める難しさ

 普通の監督なら、新外国人の失敗をフロントの責任と叫ぶことも出来る。しかし、自らがGMとして選手補強にあたってきたのだから怒りのぶつけるところもない。

 数年後のチームのあるべき姿に向けて青写真を描くのもGMの重要な仕事となるが、一方で指揮官としては目先の勝利を求めていかなければならない。極めて難しいかじ取りである。

 シーズン前には田中将大、岸孝之、則本昂大、涌井のエースを称して「490勝カルテット」と呼ばれた。いずれも実績十分な男たちだが、現状は4人併せて21勝16敗、チームに貯金5しか、もたらせていないのも誤算のひとつかも知れない。特に田中は5勝7敗と好投しても報われない日々が続いている。

 かつては“神の子”と呼ばれて13年の日本一に大貢献した田中も30代半ばに差し掛かりつつある。かつての球威はなくなっているが、打線がかみ合えばまだまだ勝てる投手だ。今後、逆転優勝を果たすには、最大のキーマンとなるかも知れない。

 100点満点の春から苦渋の夏。石井GM兼監督は辛抱を重ねながら勝負の時を覗う。三木谷浩史球団オーナーの信頼は厚いとされる石井監督だが、今後の戦いに自らの進退を賭けるのも間違いない。

 ひとたびつかんだ上昇機運は本物なのか? まずは今季の相性が悪い西武戦(4勝10敗)がオールスター前の23日から組まれている。大きな試金石となりそうだ。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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