宗教法人に消費者契約法は適用されないってホント? 消費者庁に聞いてみた

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2022年08月02日 17:11  弁護士ドットコム

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安倍晋三元首相の銃撃事件で、宗教団体による「霊感商法」をめぐるトラブルや、霊感商法について規定する法律に注目が集まっている。


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報道によれば、事件の被疑者は母親が団体に多額の寄付をした結果、破産に追い込まれたという。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を含む新興宗教にまつわるトラブルについては、多額の献金や物品の購入を求められ金銭トラブルとなったなどの相談が弁護士ドットコムにも寄せられている。



消費者契約法は、霊感等による知見を用いた告知により締結された消費者契約の取り消しを認めている。この規定は、2018年の同法改正により新たに設けられた。



SNS等では、この規定によって「霊感商法が大幅に減っている」「改正法で旧統一教会に打撃を与えた」などの意見がある一方、「宗教法人への寄付お布施には対処しない」「本人の意思で行った献金にも適用されるのだろうか」「献金は消費者契約法には当たらないので何の救いにもなっていない」など、規定の実効性について疑問の声もあがっている。



●消費者庁「消費者契約に該当するかどうかがネック」

宗教団体に対する消費者契約法の適用について、消費者庁はどのように考えているのか。



消費者庁消費者制度課の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「宗教法人や、法人格がなくとも組織としての体裁のある団体であれば、消費者契約法の適用対象になる」と話した。



消費者契約法は、適用対象となる「事業者」について、「法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」と定めており、宗教法人・団体はこの「法人その他の団体」に当たるとする。



むしろ、消費者契約法を適用する上でネックとなり得るのは、事業者たる宗教法人と消費者との間におけるやり取りが消費者契約法の適用対象となる「消費者契約」に該当するかどうかだという。



「たとえば、宗教的な要素の強い寄付行為やお布施だと、そもそも『契約』ではなく、『単独行為(一個の意思表示のみで成立する法律行為)』に当たる可能性があります。



金銭の授受があったとしても、消費者契約法上の『契約』かどうかが同法の適用についてネックになるところでして、民法の解釈になってきますが、いわゆる贈与契約や不当な対価の売買契約などの『契約』になるかどうかが1つのポイントになるかと思います」(担当者)



●「宗教絡みというだけで対応断っているということはない」

では、宗教団体とのトラブルに関する相談が消費生活センター等に持ち込まれた場合、どのような対応をしているのか。



消費者庁地方協力課の担当者は、個別の案件によると前置きしたうえで、「消費者契約法が適用されるケースかどうか判断が難しい場合には、国民生活センターと協議したり、各センターで提携している法律事務所に法的な見解を問い合わせるなどの対応をおこなっている」という。



「トラブルだとして相談されたケースでも、『本人としては心からの献金だった』というような場合だと、(消費者契約法が適用されるケースなのかどうか)どうしても判断が難しいことがあります。



また、二束三文の物品を高額で買わせるなど詐欺的な事案の場合には、警察に相談するよう案内することもあります。



法律事務所との提携などは各自治体の消費生活センター等ごとでおこなわれているので、すべてのセンター等で対応しているわけではありませんが、法的な見解についてもできるだけ回答できるように努めています」(担当者)



SNS等には、消費生活センター等は宗教団体関連の相談について「政教分離」の観点などから対応してくれないとの声もある。



この点については、全ての案件を把握しているわけではないとしつつ、「宗教団体が関係しているということだけで、相談対応を断っているということはない」と話す。



「結論として消費生活センター等で処理することが難しいと判断することはあり得ますが、『宗教』というだけで対応しないということにはなっていません」(担当者)


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  • つまり法は「怪しい売買契約」からしか守れない、ということではあるんだが、それまでの野放し状態よりはるかによくなったのは事実。
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