『ベイビー・ブローカー』『なまず』など出演作が続々 世界中の注目を集めるイ・ジュヨン

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2022年08月04日 08:01  リアルサウンド

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『ベイビー・ブローカー』(c)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co.

 最近、韓国作品で度々目にする女優がいる。『梨泰院クラス』でトランスジェンダーのヒョニ役を演じたイ・ジュヨンだ。パク・ソジュン演じるセロイが経営する食堂「タンバム」で料理長を務めたヒョニ。繰り広げられる復讐劇を見守りながらも、必死に自身の技術を向上しようと努力する姿にも心を打たれた。


【写真】『梨泰院クラス』出演時のイ・ジュヨン


 ボーイッシュな見た目に、素朴で独特な魅力を感じるイ・ジュヨン。2012年から俳優としてのキャリアをスタートさせた彼女は、今年、是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』で、ぺ・ドゥナとともにブローカーを追跡する刑事を演じ、カンヌ国際映画祭に出席できるまでのキャリアを積み上げた。是枝監督も『梨泰院クラス』を観て、オファーを決めたと発言しており、『梨泰院クラス』の出演がきっかけでブレイクし始めたように見えるイ・ジュヨンだが、実はそれ以前から実力は国内外で既に認められていた。


 俳優としてのキャリアをスタートさせてから数年、『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』でソン・イェジ演じるジナの会社の後輩イェウン役、『恋のゴールドメダル〜僕の恋したキム・ボクジュ』でイ・ソンギョン演じるボクジュと同期の重量挙げ選手ソノク役などを演じ、順調に映画やドラマへの出演で韓国内でのキャリアを積んできたイ・ジュヨン。2019年には、『野球少女』で野球選手を目指す女子高生を演じ、第45回ソウル独立映画祭で独立スター賞、第19回ニューヨーク・アジアン映画祭で国際ライジングスター賞を受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』など、フェミニズム作品が次々と生まれる中で、イ・ジュヨンも女性として野球選手を目指すことに反対されながらも、男性と同じように活躍できる選手を目指すスインを演じ上げた。静かに燃え上がる彼女の感情と、社会の理不尽さが画面から痛いほど伝わってくる。


 そして今年、日本で公開されるのは、第23回釜山国際映画祭で「今年の俳優賞」を獲得した、イ・ジュヨン主演の映画『なまず』である。至るところがカラフルで独特な世界観と、ポップなシュールさを併せ持つ作品だ。


 とある病院で看護師として働くユニョン(イ・ジュヨン)は、男女の情事の瞬間が映っているレントゲンが出回り、容疑者として疑われることに……。自分でも思い当たる節がある彼女は完全に否定できないながらも、逃げずに病院で負けじと働くことを選ぶ。


 レントゲンの事件後なぜか体調不良でスタッフが次々と欠勤したり、町中にシンクホールができたことで就職できた彼氏が仕事中に指輪を失くしてしまったりと、日常に起こりそうで起きないことが描かれていて、不思議な世界線に陥ったような感覚になる作品だ。


 まさに『梨泰院クラス』に抜擢され、爆発的な知名度になる前の、イ・ジュヨンの実力が前面に出ている作品であると言えるだろう。落ち着いた印象がある彼女が、タイムカードを押すのに跳び箱の踏切板を使ってジャンプをしているシーンは、クスッと笑えてしまう可愛さもある。


 イ・ジュヨンが演じたキャラクターは、それぞれどこか落ち着いていて、不思議な魅力を感じることが多い。それは、彼女自身の人柄が表れていると言えるだろう。『なまず』の監督を務めたイ・オクソプも、「とても自然にその人になりきっているような演技を見て、会いたいと思った」と述べ、さらに「完璧な姿を見せている一方で、悩みも尽きない姿がユニョンと重なった」と答えている。(※)自然体だからこそ、親近感を感じる演技に引き込まれるのだ。日本でも彼女の主演作が次々と公開されていることから分かるように、世界中の注目を集めているイ・ジュヨン。今後、世界へ向けてもどのように活動していくのか気になるところだ。


・参考
※. https://youtu.be/ikMd4fva2NE


(伊藤万弥乃)


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