野球の楽しさと面白さを再発見する軟式野球大会「座間ひまわりカップ」

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2022年08月04日 19:42  ベースボールキング

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ベースボールキング

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中学生に野球の楽しさと面白さを再発見してもらう野球大会『座間ひまわりカップ』が、7月の終わりに神奈川県相模原市の上溝中学で開催された。



【みんな平等公平に試合に出してあげたい】
このイベントを開催したのは座間ひまわりクラブ代表の榊原貴之氏。榊原氏がイベントを開催した理由は3つある。

・野球本来の楽しさ、面白さを再認識してもらう
・選手の試合出場機会の確保と実戦経験を積んでもらう
・指導者にコーチングを勉強してもらう機会を提供する

中学野球に限らずだが、小学校から高校まで公式戦と言えばほとんどがトーナメント戦。負けたら終わりの戦いであるため、ミスが許されない。そうなると日頃の練習や試合でも、指導者は子ども達のミスを許容するゆとりがなくなり、ついつい大声で叱責をしてしまいがちだ。それではスポーツ本来の楽しさや息抜き、娯楽と言った要素が影を潜めてしまう。
「トーナメント戦だと負けたら終わりなので試合に出場できる選手と出来ない選手が出てきますよね。でも(クラブチームであれば特にそうだが)毎月月謝を払っているのですから、本来はみんな平等公平に試合に出してあげないといけないと僕は思うんです。だから今回のイベントのように、どんな選手も試合に出られるし、打席に立てる、みんなと同じように試合に参加できるということが、本来の野球の姿なんじゃないかなと思うんです」(榊原氏)。



【山なりボールと竹バット】
このイベントには「野球の楽しさと面白さを再発見」してもらうため、参加チームをシャッフルして即席チームで試合を行うことや、全員が全ポジションを守るなどいくつかの仕掛けが用意されていた。なかでも特にユニークなのはマウンドから打者までの距離を12mとし、ピッチャーの前に防球ネットが置かれていたことだ。その狙いについて榊原氏はこう説明してくれた。
「ピッチャーの前にネットを置くのは安全対策というのももちろんですが、距離が近いからストライクが取りやすいのでどんな子もピッチャーができるんです。また目の前のネットを越えるには山なりのボールを投げないといけないため、必然的に球速が遅くなります。そうなるとバッターが打ちやすいボールになりますよね。やっぱり打てないと試合はおもしろくないですからね(笑)。また、どんな放物線を描けばストライクゾーンに投げることができるのか、力の入れ加減や指先の感覚などを普段より意識する事も、投げる練習の一つになりますよね」



いつもと違うのはピッチャーだけではない。バッターも長さの違う4種類の竹バットを使うことがルールとされていた。
野球を楽しむのであれば高反発バットを使った方が子ども達は楽しいのではないか? そんな疑問を榊原氏にぶつけると、その狙いをこう話してくれた。
「このJBというメーカーの竹バットはグリップが細くてトップバランスになっているので、芯に当たれば金属バット並みに飛ぶんです。きちんと芯で捉えないと飛びませんから初めは苦戦していましたけど、午後の試合ではみんな慣れて良い打球を飛ばしていましたよね」

ただ楽しいだけではなく、無意識に技術の向上にも繋がる仕掛けが散りばめられている。それも榊原氏の狙いであり、このイベントの特徴の一つと言えるだろう。


【できないと決めつけているのは大人】
参加チームをシャッフルした即席メンバーで戦うためか、午前中のベンチは会話も少なく、ぎこちなく映った。ファウルボールが飛んでも誰も拾いに走らない。バットも誰も引きに行かない。「誰かがやってくれる」そんな風に思っていたのかもしれない。



しかし、時間が経ち自然にコミュニケーションが増えてくると、子ども達が率先して動くようになり、午後からは誰がファウルボールを捕りに行くのか、バットを引くのかなどルールを決めたチームも見られた。そして、「上手い!」「ナイスプレー!」など、相手選手を讃える声も飛びはじめた。違うユニフォームの選手達と楽しそうに会話する姿もグラウンドのあちらこちらで見られるようになった。

「コーチングで大事なのは『黙って見ていること』。大人が1から10まで言わなくても子ども同士で指示を出し合ったり、打順を決めたり、全部できていましたよね? やらせてあげたらできるんですけど、大人が勝手にできないと決めつけるんですよね。野球の戦術でも『指示したとおりのことをやれ』ということになっていると思うんです。それだと面白くないですよね」

イベントを通じて、指導者の怒声や罵声はもちろん、叱責の声も全くなかった。空振りしても「初球空振り全然OKだよ!」などの声が指導者から上がっていた。
「今日、このグラウンドに来てくれた指導者の皆さんには、ぜひ日頃のグラウンドでも子ども達を暖かく見守って欲しいなと思いますね」と榊原さんは話す。(取材・写真:永松欣也)

【イベント参加チーム】(2日目は雨のため中止)
相模原市立上溝中学校
相模原市立相武台中学校
相模原市立相模台中学校
相模原市立上鶴間中学校
藤沢市立第一中学校
厚木市立相川中学校
座間市立座間東中学校
厚木市立玉川中学校
世田谷区立砧中学校
座間ひまわり野球倶楽部
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