トレードもFA移籍も極少 プロ野球の移籍市場は今後も“静かな状況”が続くのか

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2022年08月05日 18:00  AERA dot.

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写真トレードでオリックスから中日に移籍した後藤駿太(写真提供・中日ドラゴンズ)
トレードでオリックスから中日に移籍した後藤駿太(写真提供・中日ドラゴンズ)
 7月31日、選手をトレードで獲得することができるNPBの新規選手契約可能期間が終了した。最近ではトレードが増えてきた印象もあったが、今年は2月1日のキャンプイン以降に成立したトレードはわずか3件と少なかった。


【写真】2013年のトレードで話題となった大物選手といえば
 NPBの支配下選手登録の上限は70人で、7月31日時点で巨人、ヤクルト、中日、阪神、楽天、ロッテ、オリックス、ソフトバンクの8球団が上限に達した。今後も契約を放棄された選手を他球団が獲得するウエーバー移籍は可能ではある。しかし余程のことがない限り、今季終了まで大きな動きはないだろう。


 一方、メジャーリーグでは現役最高のプレイヤーとの呼び声もあり、まだ年齢が23歳と若いホアン・ソト(ナショナルズ→パドレス)がトレードされるなど、例年のように移籍市場は締め切り前に活発化。ソトと同じく動く可能性が指摘されていたエンゼルスの大谷翔平は残留となったが、それでも8月2日の締め切り日だけを見ても、シーズンを左右するような実績のある選手を含め31件のトレードが成立している。


 NPBではキャンプイン以降というスパンでみても、リーグ全体でトレードの数は先述の通り3件。今季から日本ハムの指揮官に就任した“BIG BOSS”こと新庄剛志監督が「超大型トレード」などに言及していたが、トレード市場は熱を帯びることなく期限が終わった。


 日本でも“現役ドラフト”が今オフに導入される見通しで、近年は選手の流動性を高めることが叫ばれている。だが、メジャーリーグと比べるとトレードを含め選手が動くことが少ないのが実情だ。メジャーリーグはチーム数が多く、補強に関するルールなども異なるため単純に比較はできないが、なぜ日本では移籍の市場が静かなことが多いのだろうか。


 その理由の一つとしては、球団内での人間関係などが影響して活発化しないということが挙げられる。日本球界はフロントと現場の役割が明確に分かれている米国とは違い、選手の放出に関して、そこまで“ドライ”になれない事情もあるよう。また、いまだに日本ではトレードは戦力とみなされない選手を放出するというネガティブなイメージもあり、選手の出身学校や企業に対しての配慮もあるとのことだ。



 さらに、近年は監督が編成面での権限を持ち合わせているケースも多く、巨人・原辰徳監督、楽天・石井一久GM兼監督をはじめ、ほとんどの球団で現場の意向が編成に関わっているというのも少なからず、関係しているようだ。


「監督が契約時に編成面への権限もある程度、認められている。余剰戦力が他球団へ移籍流出した場合に戦術面を含めた情報が流出する危険性もある。自身の監督就任期間中は移籍に反対する指揮官もいる」(在京球団編成担当)


 また、2月以降にNPBで成立したトレードを見ても、その中で一軍の実績があると言えるのは後藤駿太(オリックス→中日)と森原康平(楽天→DeNA)ぐらい。大物選手が絡んだものは2013年に糸井嘉男(現阪神)が絡んだ日本ハムとオリックスのトレードまで遡らないと成立しておらず、リーグの勢力図に影響を及ぼすトレードはなかなか起こらないのが日本の特徴でもある。


「監督、コーチという職に就いた者がリスクを犯したくない気持ちもあるのではないか。移籍などによる選手補強は、現状のような凪の状態がしばらく続きそうでもある」(スポーツマネージメント関連会社)


 FA市場を見ても、昨年オフは“目玉”と称された大瀬良大地(広島)、梅野隆太郎(阪神)、宮崎敏郎(DeNA)らが揃って残留。中日からFAとなった又吉克樹がソフトバンクに移籍しただけだけでこちらも静かな動きとなっている。


「最大の理由はコロナ禍によるNPB球団の経営悪化。(観客数の上限がなくなり)通常営業に戻っているが、各球場が集客に困っており満員になる試合の方が少ない。チケット、グッズ、飲食などを含めた興行収入は軒並みダウンしている。収益が悪くなれば人件費を減らさざるを得ないのは、どのビジネスでも変わらない」(スポーツマネージメント関連会社)


 収益が下がった場合、経営を成り立たせるためにはどこかの予算を削る必要があるが、一番最初に手をつけるのは人件費=選手の年俸となってくる場合が多い。実績がある高額年俸選手より、戦力として計算ができるレベルの若手選手を多く抱えた方が良いとなりつつあるようだ。



「昨オフは日本ハムが主力の西川遥輝、大田泰示、秋吉亮に契約を提示せず、ノンテンダーとなった。FA権を保持する3選手との契約延長には年俸アップは避けられない状況だったのもある。球団経営を重視した場合は的確な判断だった」(スポーツマネージメント関連会社)


「実績があるとはいえ、(昨オフの時点で)西川が29歳、大田が31歳、秋吉が32歳。年齢的に考えると高額年俸を払ってまで獲得するにはリスクが大き過ぎる。3人が事実上の自由契約だったので獲得球団も動きやすかった。今後はこういったケースでない限り、主力クラスの移籍はまとまりにくいはず」(在京球団編成担当)


 このように、トレードを含め日本の移籍市場が静かな理由には様々な要因が絡む。


 今オフには西武の森友哉らがFAとなってストーブリーグを迎えるが、動きはあるのだろうか。日本の生え抜きを育ててチームを強くするという楽しみ方も魅力的だが、もう少しトレードなど移籍市場が活発化した方がプロ野球は盛り上がっていくのではないか。今は状況的に難しい部分があるのは間違いないが、今後は現役ドラフトの活用を含め、選手の流動性が高まる仕組みが整備されることを望みたい。
 


このニュースに関するつぶやき

  • トレードが少ないのはコロナ禍の影響もあるだろう。FAは選手の権利だし大金獲得狙っての移籍よりチヤホヤされながら末長くプロ野球界に留まれる道を好む様になってるんでないの
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