「蚊」を見失ったらどこを探せばいい? 専門家たちに聞く撃退法&かゆみ対策

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2022年08月08日 11:55  AERA dot.

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写真※写真はイメージです
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 今年もヤツの季節がやってきた。おなかの卵を育てるため、血を求めて飛び回る。部屋に1匹いるだけでイライラは募るもの。家の中だけでも安全地帯にして、かゆーいストレスから逃れたい。専門家の英知を結集して、対策をまとめました。


【図表】蚊にまつわる噂を検証した、専門家の見解はこちら
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 ぷーん。自室で原稿を書いていた記者の目の前を一匹の蚊が悠々と横切った。部屋はマンションの10階。一体どこから入り込んだ?


「人間の後についてエレベーターに乗ったり、ビル風に乗って20階くらいまで吹き上がってきたりするんです」


 そう解説してくれたのは、殺虫剤「バルサン」を製造販売するレックの技術顧問・津田良夫さん。人についてくるのは仕方ないとして、ちゃんと網戸は閉じているんですけど……。


「網戸に引っかかっても、表面を歩いて抜け穴を探します。5ミリ程度の破れ目や隙間があれば連中は入ってくる。地下の排水設備などで生まれた蚊が、排水管や通気口を通って侵入することもあります」


 やはり蚊を絶対に家に入れないのは難しそう。せめて部屋にいる蚊は確実に迎撃したいが、ふらふらと飛ぶ姿を目で追っていると、ふっと消えることがある。これは蚊の飛び方が不規則で、急に予測不能な方向に動くからだという。見失ったらどこを探せばいいのか。


「昼行性のヤブカ類は壁などどこにでも止まりますが、夜行性のイエカ類は暗がりを好みます。テーブルの下や家具の裏などを探すか、部屋の照明を暗くして刺しに来たところをたたくのがよいでしょう」(津田さん)


 たたくときのポイントは、止まっているか、止まろうとしている蚊を狙うこと。飛んでいる蚊は周囲を警戒しているので素手で仕留めるのが難しい。津田さんは自宅に捕虫網を置いているそうだ。


 ただ、手に頼らずとも撃退できる方法はある。手軽さから人気を集めているのが、ワンプッシュ式の蚊取り剤だ。


 フマキラーの開発研究部員、中原良成さんは「ボタンを1回押すだけで霧状の薬剤が部屋中に広がり、速効性があります。床や壁についた薬剤は再浮遊するので、後から入ってきた蚊にも効く。当社製品の場合、4.5〜8畳の部屋にワンプッシュすると、効果が24時間続きます」と話す。




 大半の蚊取り剤に含まれるのはピレスロイドという成分。虫の体内に入ると神経を異常興奮させ、筋肉の過収縮や呼吸困難を引き起こす。人間の場合は虫よりも神経系が複雑なため、異常興奮が起きる前にピレスロイドが分解されて無害になる。


 肌に塗るタイプの虫よけも進化している。2015年に国内で承認されたイカリジンという成分は、皮膚や衣類への刺激が従来の成分(ディート)より弱く、子どもへの使用制限がない。においもないため各社が続々と製品化している。ただ、塗った部分にしか効果を発揮しないのはディートと同じ。蚊は塗り残した場所を狙って刺しに来るので、気をつけよう。


 蚊の襲来から逃れるには、発生源もたたいておきたい。まずはボウフラが湧く水たまりをなくすことだ。害虫駆除を請け負うアペックス産業の佐々木健(たけし)・研究室部長に、対策のポイントを聞いた。


「庭に放置したじょうろやプランターの受け皿などは代表的な温床です。家の周りの水たまりを一掃しても蚊が減らない場合、道路の側溝に作られた雨水桝(ます)が原因でしょう。私も、自宅前の雨水桝に殺虫剤を入れたら、蚊が出なくなりました」


 しかし、努力もむなしく蚊の餌食になることもある。針を刺した蚊は、皮膚内をまさぐって血管を探す。うまく血が吸えないと、別の箇所に移動して再び刺す。刺すたびに麻酔や血を固まりにくくする作用のある唾液(だえき)を注入し、その唾液成分がかゆみを引き起こす。


 動物性皮膚疾患に詳しい九段坂病院の谷口裕子医師によると、かゆみが起きるのは、引っかくことで体内に入った異物を排除しようとする防御システムが作動しているからだという。ただ、かきすぎて皮膚を傷つけると、細胞からかゆみの神経を刺激する物質が出て、ますますかゆくなる。


「皮膚を傷めずにかゆみを抑えるには冷やすのが一番です。ちまたで言われている『爪を押し当てて×印をつける』『セロハンテープを貼る』『なめる』といった方法は、どれも間違い。テープははがすときに角質が取れるし、なめるのは『舌なめずり皮膚炎』という疾患があるように、唾液の消化酵素で肌が荒れてしまいます」(谷口医師)



 なお、年をとってから蚊に刺されなくなったと感じる高齢者は、刺されないのではなく、免疫ができたことで「刺されても反応しない」状態になったと考えられる。


「かゆみや腫れといった蚊へのアレルギー反応は、刺された直後の『即時型反応』と、数時間後に始まる『遅延型反応』があります。この2種類の反応の出方は、刺された回数によって変化すると言われています。乳幼児期は遅延型のみ、幼児〜青年期は両方、青年〜壮年期は即時型のみが起き、老年期になると何の反応も起きないことが多い。繰り返し刺されるうちに体が慣れ、過剰な炎症を止める作用が働くのでしょう」(同)


 祖父母が「うちの庭に蚊はいない」と思っていても、遊びに来た孫がボコボコ刺される可能性もあるというわけだ。


 彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず。まずは蚊の生態や自分の体を知ることから、戦いは始まる。(本誌・大谷百合絵)

※週刊朝日  2022年8月12日号


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