横浜F・マリノスの指揮官は「ベストゲーム」と評価。では、なぜ川崎フロンターレ相手につまずいたのか

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2022年08月08日 16:31  webスポルティーバ

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 8月7日、首位に立つ横浜F・マリノスは、昨季王者である川崎フロンターレとの天王山を戦っている。結果は2−1の敗戦となった。試合終了間際、無念の一発を浴びた。

 横浜FMは「力闘した」と言えるだろう。猛暑の気配が残るピッチで走りきった。前線からの果敢なプレッシングで出どころを塞ぎ、攻守の切り替えではオートマティックに反応し、弾丸のように前線へ飛び出した。同点ゴールは、まさにその展開だった。十分に勝てる要素があったし、「引き分けが妥当」という彼らの口惜しさもわからないではない。

「我々は支配するサッカーをしたと言える。自分が見たなかでは、今シーズン、ベストのパフォーマンスをした。選手たちを誇りに思う」

 Jリーグ覇権奪回を目指す横浜FMのケヴィン・マスカット監督は、そう敗戦の弁を述べた。はたして、それは強がりだったのか、本心だったのか。




 横浜FMの選手たちは、前半から一心不乱に戦っていた。ただ、攻撃に関しては目を覆うほどに単調だった。「前へ」という意識が強すぎ、リズムが出ず、「ゲームを支配していた」とは言えない。ボールを握ってタメを作ることで優位を作れるはずが、スピード、パワー系のアタッカーばかりを並べていることもあって、どうしても攻め急ぐ展開になった。

 結果として45分間、ほぼ防御ラインを突破できていない。

 しかし、王者川崎にも、昨シーズン前半までの面影はなかった。家長昭博を中心に変幻自在にポジションを変え、撹乱しながら序盤は優位に立っているが、足を使うことで消耗した。ボールを運ぶところでミスが出始め、じりじりとしたゲームに引きずり込まれつつあった。

 だが前半25分、谷口彰悟がバックラインから蹴り込んだボールを、山根視来が右サイドからダイレクトで折り返し、レアンドロ・ダミアンがヘッドで叩き込む。

「今日負けたら終わり。シーズンがかかっている」(山根)

 背水の陣の覚悟は、先制点だけでなく、逆転弾にもつながる。

 では、横浜FMはその勢いに流されたか?

後手に回った選手交代

 繰り返すが、選手は奮闘していたし、互角にぶつかり合い、各所で質の高いプレーがあった。前半アディショナルタイム、横浜FMは左からのクロスをニアでエドゥアルドがひっかけ、エウベルがマルコス・ジュニオールとのワンツーで抜け出す。右サイドからインサイドに入った仲川輝人が裏に抜け出して受けると、GKと1対1を、ボールを浮かして冷静に決めた。迫力満点で、典型的なカウンターだった。

 マスカット監督は勝利の算段を整えていただろう。後半に入って、次々に有力選手を投入し、総力をかけた消耗戦で上回るのは、常套手段のひとつだった。ただ、前半で西村拓真の負傷交代により1枚カードを使っていたことで、レオ・セアラひとりは後半18分に投入したが、積極的に交代カードを切った川崎よりも後手に回った。

 端的に言えば、水沼宏太の投入が遅れた。

 後半37分にピッチに立った水沼は、横浜FMに流れを与えている。32歳で初めて代表デビューを飾った男は、知性を感じさせるアタッカーで、決して急がない。ボールを受けた瞬間、味方が猛然と裏に走り込むシーンがあったが、一か八かのタイミングだったことで、あえて後ろに下げ、ボールを回してリズムを作り出していた。また、クロスのシーンではファーに送り、ニアで引っ掛けられ、カウンターを浴びるリスクマネジメントもしていた。

 水沼のおかげで、ようやく右サイドを崩せるようになった。押し込む展開が増え、決定機も作り出した。勝機はあった。

「今シーズン、一番いいのはマリノスで。(王者とはいえ)僕らは謙虚にやらなきゃいけない」(家長)

 E−1選手権に7人も代表選手が選ばれるほど、水沼を中心にした横浜FMのコンビネーションはJリーグで突出している。

 しかし、水沼の投入が遅れたことで、すでに味方は消耗していた。前がかかりになると、守る力の弱さを露呈し、ひとりひとりに寄せきれていない。そこで老練な家長にクロスを上げられて、足をつりながらも豪快に跳躍したDFジェジエウのヘディングを被弾した。

 勝敗に関して言えば、スクランブルでどちらに勝利が転がり込んでも不思議ではなかった。王者川崎の背水の覚悟が勝った、とも言えるが、それは結果論の面もある。どちらも死力を尽くした。
 
 しかし、横浜FMが単調な攻撃を続け、疲弊していたのは間違いない。少なくとも、支配するサッカーではなかったし、ベストゲームとも言えないだろう。攻撃陣では唯一、テンポを変えられる水沼を先発から外したことで(途中交代出場のマルコス・ジュニオールも同じタイプだが、今シーズンはやや不振だ)、カウンター一辺倒になった。昨季から提言していることだが、マスカット監督はパワー、スピード中心の攻撃を好む傾向が強すぎる。

「今は終わったばかりで、感情の整理が難しい。明日の朝起きて見えることもあるはずで、落ち着いて分析する」

 マスカット監督は、どんな答えを出すのか。前への強度ばかりに囚われたら、苦しい戦いに巻き込まれるかもしれない。この後は8月10日、13日、18日と、ルヴァンカップ、J1、アジアチャンピオンズリーグと、たて続けに覇権をかけた戦いが続く。

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