札幌なのに、しょうゆ>みそ? 『サッポロ一番』初代が"しょうゆ味"だった意外な理由

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2022年08月09日 07:30  ORICON NEWS

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写真56年愛される『サッポロ一番しょうゆ味』。商品開発・パッケージは前社長・井田毅氏が手掛けた。パッケージ右上の「矢印と星」の由来は社内でも諸説あり、真相は分かっていない。
56年愛される『サッポロ一番しょうゆ味』。商品開発・パッケージは前社長・井田毅氏が手掛けた。パッケージ右上の「矢印と星」の由来は社内でも諸説あり、真相は分かっていない。
 札幌ラーメンと言えばみそ。ご当地ラーメンの中でも知名度の高い「故郷の味」だ。にもかかわらず、発売から56年目を迎える『サッポロ一番』はしょうゆ味から始まった。その2年後に「みそラーメン」、さらに3年後に「塩らーめん」が登場している。“サッポロ”と銘打ちながら、なぜ、初代テイストは“みそ味”ではなく“しょうゆ味”が選ばれたのか。発売元の担当者に話を聞いた。

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■「札幌ラーメン=みそ」は『サッポロ一番』が定着させた?

『サッポロ一番』は1966年に誕生した。開発者は当時専務であった前社長・井田毅氏(サンヨー食品創業者のひとり)。当時、井田氏は全国で売れる“王道のしょうゆラーメンを作りたい”と、各地を食べ歩き、研究を重ねていたという。

「井田が札幌のラーメン横丁で食べた一杯に感銘を受け、この美味しい体験が新商品のイメージへと結びついたと聞いてます。そのときに食べたのがしょうゆラーメンでした」(サンヨー食品・マーケティング本部 広報宣伝部課長 水谷彰宏さん/以下同)

 現在はラーメン通でなくても“札幌ラーメンと言えばみそ”が定着しているが、当時、ラーメンはしょうゆ味が一般的だった。札幌でも1960年代までしょうゆラーメンがメインだったと言われている。

 北海道・すすきの地区にある「元祖さっぽろラーメン横丁」の歴史年表を見ると、札幌の地にみそラーメンが登場するのは1961年(昭和36年)だ。それから1964年(昭和39年)に高島屋(東京・大阪)の北海道の物産展で実演販売したことで、“札幌のみそラーメン”が評判になったとある。つまり、井田氏が札幌の食べ歩きをしていた頃は、しょうゆ味とみそ味が同程度の知名度だったと推察される。

 そうした時代背景もあって、『サッポロ一番』の初代製品がしょうゆ味だったのは自然の流れだった。『サッポロ一番みそラーメン』がリリースされたのは、その2年後の1968年。“札幌のみそラーメン”が物産展で話題になった4年後のことだった。

『サッポロ一番』は札幌のご当地テイスト“みそ”をあえて初代に選ばなかったのではなく、物産展と『(同)みそラーメン』の登場によって、“札幌ラーメン=みそ”のイメージが全国に広がり定着したとみていいだろう。

「確証はありませんが、もしそうでしたら多くの方にご支持いただけた結果なので嬉しいですね。寒い北海道でいただく濃厚なみそラーメンは格別ですから、そういった部分もマッチしたのではないでしょうか」

当時、目新しかった地名入りネーミングも人気を後押し 

 イチ商品がご当地の味を決定づけたことは驚くべきことと言えるだろう。『サッポロ一番』の人気のほどがうかがえるが、ヒットした背景には味わいだけでなく、ネーミングの妙もあるように思う。

 サッポロ一番の開発を手がけた井田毅氏は、インスタントラーメン業界では日清食品の創業者である安藤百福と並び称されるラーメン王の異名をもつ。その井田氏は『サッポロ一番』の発売に先駆け、1964年に塩味ベースの『長崎タンメン』を製品化させて爆発的にヒットさせた実績を誇る。

 しょうゆラーメンが主流の時代に、いち早く塩味を製品化したことも斬新だったが、長崎という地名を製品名につけたところに先見の明があった。今でこそご当地名を冠した商品はあふれかえるほどだが、地名から異国情緒が漂うイメージを広げ、消費者の心をしっかりつかんだこのネーミングセンスは見事だったというしかない。

「ところが、製品名にした『長崎タンメン』は一般名称の組み合わせのため、当時、類似品が横行したんです。この経験が、2年後に発売された『サッポロ一番』のネーミングに生きたんだと思います。札幌ラーメンからヒントを得たので、地名を入れることを考えたようですが、前例もあり、どうするかずいぶん悩んだようです」

 当時、札幌には輸入雑貨や外車販売も手がけトレンドを先取りする評判の百貨店「五番舘」があり、外観のレンガ造りもシンボリックで目をひいていた。そこで製品名の候補として“サッポロ五番館”も考えられた。しかし最終的には、製品として一番を目指すという意味を込めて『サッポロ一番』に決まったという。この斬新で印象的なネーミングが当時の人々の目を引いたことは間違いない。

ちなみに、井田氏は商品パッケージのデザインも手掛けていたという。

「よく、しょうゆ味のパッケージ右上にある“矢印と星”について由来を聞かれますが、社内でも諸説あり、詳しくは分かっていないんです。井田氏は何か特別な想いを込めていたのかもしれません」

2強はみそと塩 課題は「みそと塩以外のテイストの知名度アップ」

 2019年、サンヨー食品ではTwitter上で『サッポロ一番みそラーメン』と『サッポロ一番塩らーめん』、どっちが好きかをユーザーに問い、人気投票が行われた。このときの総投票数は706,525票にもなり、大いに話題となった。結果は、みそ派337,181票、塩派336,495票となり、わずか686票差でみそ派が勝利したものの、ほぼ人気を二分したといえる。

「お客様の間で以前から“みそラーメン”VS“塩らーめん”の構図で熱く語られていたのは知っていましたが、あまりの反響に驚きました。今でも、このふたつのテイストが圧倒的に人気です」

 そんな人気の『サッポロ一番みそラーメン』でスープの改良が行われたのは広く知られていない。

「発売45周年のときに7種類みそのブレンドから8種類にし、味に少し奥行きをだしました。ただ、そのほかはほぼ発売当初から変えていません。長く愛されてきた味こそが『サッポロ一番 みそラーメン』なので、これからも味のベースは変わらないと思います」

 袋麺市場で最も売れているとも言われる『サッポロ一番』シリーズ。今の課題は「みそと塩以外の知名度アップです(笑)」と、水谷さん。

『サッポロ一番』袋麺シリーズは現在、しょうゆ、みそ、塩、ごま、みそ旨辛、塩とんこつ、ソースやきそばの7種を展開している。中でも最近見かけるようになったごま味ラーメンは気になる人も多いだろう。実は、2020年まで『サッポロ一番 しょうゆ味』は近畿以東で販売され、『サッポロ一番 ごま味』は中国、四国、九州エリアで販売されていたのである。今では、全国でどちらも販売されているが、地域のニーズに合わせて営業展開していた商品なのだ。

「しょうゆベースの味わいに、香ばしいごまの風味が食欲を刺激する非常に美味しい商品です。しょうゆ味もおいしいですが、ごま味はコクがあって個人的にはこちらもおススメです。みそ・塩ファンの方にもぜひ、いろんな味わいを食べ比べてほしいですね」

(取材・文/福崎剛)

このニュースに関するつぶやき

  • 父の出身が北海道なんだけど、子供の頃、北海道の親戚が送ってくる荷物の中に、黒熊の絵のラーメンがいつも入っていて、それは醤油ラーメンだったんだけど、すごく美味しかったのね。今もあるのかな?
    • イイネ!33
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