巨人、低迷の原因である「投壊」は改善するか 将来的には“別の心配要素”も

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2022年08月09日 18:00  AERA dot.

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写真巨人・菅野智之
巨人・菅野智之
 昨年3位からの巻き返しを図ったシーズンだったものの、首位ヤクルトには大きく引き離され、2年ぶりのリーグ優勝はかなり厳しい状況となっている巨人(8月7日終了時点で首位から11.5ゲーム差の4位)。一時は二桁以上あった貯金もなくなり、クライマックスシリーズ進出にも黄色信号がともっている。シーズン前にここまで苦戦することを予想していたファンも少なかったのではないだろうか。


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 大きな原因となっているのが投手陣だ。チーム防御率は先発、リリーフともに12球団でワーストの数字となっており、7月には4試合連続で満塁ホームランを浴びるという屈辱も味わっている。先発では長年エースとして君臨してきた菅野智之に絶対的な力がなくなっており、リリーフも中川皓太が怪我の影響で一軍での登板がなく、ビエイラ、デラロサ、鍵谷陽平などが揃って低迷している。リーグトップのチーム防御率を誇る阪神と比べてみると与四球の数が100個以上多く、奪三振率もリーグで唯一6点台と最低の数字となっている。力で圧倒することができる投手が少ないことをよく物語っていると言えそうだ。


 しかし、今シーズンに限って言えば苦しい投手陣だが、明るい材料があることも確かだ。先発では高卒4年目の戸郷翔征が早くもキャリアハイと並ぶ9勝をマーク。防御率も2点台と、昨年と比べても投球内容が安定していることは間違いない。またリリーフではルーキーの大勢がクローザーに定着し、タイトル争いをするほどの活躍を見せている。他にも堀田賢慎、平内龍太、山崎伊織、赤星優志などここ数年で獲得した投手が軒並み一軍で通用する投球も見せており、世代交代の機運は確実に高まっているのだ。外国人選手もメルセデス、ビエイラの2人はまだ20代と若さがあるだけにここから巻き返すことも十分に期待できる。菅野のような圧倒的な存在になれる投手が出てくるかは未知数だが、来年以降は成績が向上する可能性は高いだろう。



 その一方で気になるのが野手陣だ。長年攻守にわたってチームを支えてきた坂本勇人が度々戦列を離脱しており、ここまでわずか49試合の出場にとどまっている。リーグ連覇の大きな原動力となった丸佳浩、今年復活の兆しを見せている中田翔も今年で33歳と完全にベテランと言える年齢に差し掛かっており、安定して長打を打てる若い選手と言えば主砲の岡本和真しか見当たらない。さらに二軍でもホームランを量産している若手選手は見当たらず、外国人選手とベテランに頼らざるを得ない状況となっているのだ。昨年から歴史的な貧打に苦しんでいる中日と主砲の鈴木誠也がメジャーに移籍した広島と比べるとまだ岡本がいるぶん救いはあるものの、このままでは確実に数年後は長打力不足に悩むことになりそうだ。


 その大きな要因となっているのはやはりドラフトである。2014年の岡本以降、1位と2位の上位指名で獲得した強打者タイプの選手は1人もいないのだ。近年、ドラフト1位での抽選をことごとく外しているという事情はあるものの、入札してきた選手の顔ぶれを見てもホームランバッターと言えるのは2017年の清宮幸太郎と外れ1位で入札した村上宗隆、2020年の佐藤輝明の3人だけである。この3人のうち1人でも獲得できていたら状況は違っていたかもしれないが、もう少しスケールの大きい打者に目を向けても良いのではないだろうか。


 もうひとつ大きいのはFAでの補強の失敗だ。かつては落合博満に始まり清原和博、江藤智、小笠原道大、村田修一など他球団の4番打者が多く加入していたが、ここ数年FAで獲得した野手で大きな戦力となっているのは丸だけである。本物の大物はメジャーリーグを目指すようになっており、また過去2年間を見てもFAでの移籍自体が減っていることを考えると、今後もこのような流れが続く可能性は高い。大枚をはたいて他球団の主力を獲得するというやり方は過去の手法になりつつあると考えた方が良いだろう。



 もちろん巨人もこれらのことは当然認識しているはずで、ソフトバンクに倣って三軍制を導入し、来年にはファームの新たな球場が開場予定となるなどハード面への投資も積極的に行っている。ただ、育成ドラフトで獲得した選手を鍛えて一軍の戦力とするのはどうしても時間がかかるため、あと数年はそれ以外でやりくりする必要はどうしても出てくるだろう。


 2リーグ制になった1950年以降、巨人がBクラスに沈んだのはわずか8度で、最下位は長嶋茂雄監督1年目の1975年しかない。今年はそれ以来となる危機を迎えているとも言えるが、今後どのように巻き返しを図っていくのか。残りのシーズンの原辰徳監督、そして球団の動きに注目だ。(文・西尾典文)


●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。


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  • もう、ことしのドラフトは育成ふくめ全員投手の指名でいいよ。
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