昭和レトロ感が満載! 1964年製ボンネットバス「伊豆の踊子号」が復活

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2022年08月10日 11:31  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
東海バスが所有するボンネットバス「伊豆の踊子号」が約5カ月間のリニューアル整備を終え、バスツアーにて運行を開始した。最初の東京オリンピックが開催された1964年に誕生した貴重な1台は、どんな姿で令和の日本を走るのか? レストアが完了したばかりの伊豆の踊子号に対面してきた。


○改修後も色濃く残る当時の雰囲気



伊豆の踊子号はもともと、山間路線車としてバス人生を歩み始めた。1964年に5両導入された中の1台だ。



1969年までは山間路線車として伊豆の山中を走り回り、その後は東海バスで教習車としてのセカンドライフをスタートさせたのだが、1976年6月に天城路の観光路線バス「伊豆の踊子号」として復活。ボンネットバスブームの火つけ役であり牽引役でもあるこのクルマは、東海バスのシンボル的存在としてながく愛されてきた。


ボンネットバス自体が「クラシックカー」と呼んでも差し支えのないクルマであるだけに、実際のところ、客を乗せて走行できる状態の車両は非常に少なくなっているのが現状。伊豆の踊子号も、これまでは動態保存のために必要な整備を受けてきたのだが、近年では老朽化が進み、安全運行が困難な状況が続いていたという。



そうした中でも、ファンからは「どこに行けば乗れるのか」との声が数多く寄せられていたとのこと。東海バスとしても、伊豆の踊子号を再び元気にして活躍させたいという思いは強かったという。そうした経緯から、創業105周年の記念事業の一環として実施したのが、今回のリニューアル整備だ。



レストアを担当したのは、多数の旧車再生を手がけている愛知県の新明工業。トヨタ博物館に展示してある車両のレストアを担当するなど、その技術は折り紙付きだ。



搬入された伊豆の踊子号は、サビにより外装塗装にヒビが入っていたり、車窓のサッシを外すとサビだらけになっていたりするなど、製造から約60年という年月による痛みが随所に確認されたという。



外装の修復作業では古い塗装は全て剥がし、くぼんだ部分にあらためてパテ処理を施した上でオールペイントを実施。リフレッシュで特にこだわったのが、サイドに描かれる東海バスの当時のロゴだ。この手書きロゴが醸し出す雰囲気も伊豆の踊子号のデザインの一部であり、それを消してはいけないと考え、手書き風のステッカーで再現した。


インテリアでは、「窓枠やガラスも含めて伊豆の踊子号から見える景色」だと捉えて改修を施した。窓周りは細部まで綺麗にするとともに、スムーズに窓を上げ下げできるよう機能性も重視して整備したそうだ。

安全面で重要なブレーキ関連では、バキュームポンプをオーバーホールして組み付けるとともに、ブレーキ倍力装置を刷新。これは必ずしも最新のものに交換すればいいというわけではないそうだが、ブレーキの信頼性を上げることで、安全運行につなげるのが狙いなのだという。


○座席に灰皿が! 昭和を感じるレトロバス



披露式の後には、修善寺周辺で約40分のドライブに出発。乗車してシートに腰掛けると、前方には懐かしの灰皿が! 最近は目にする機会がほぼ絶無の設備だが、これもレトロバスならでは光景だ。もちろん使用不可だが、当時の姿を保存する意味合いであえて残したのだろう。


乗り心地はさすがに最新バスのように快適とはいえず、ガタガタと結構な揺れを感じたが、これも伊豆の踊子号の味だ。車内にはエアコンがないので窓を開けての走行だったが、開放感があり、旅情も感じられた。


東海バスに今後の予定を聞いたところ、これからは「伊豆の踊子号」を使ったバスツアーを継続的に企画し、多くの人に乗車機会を提供していくとのことだった。ツアーの情報は同社のホームページにて随時公開されるので、興味のある方はチェックしてほしい。


安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。twitter:@andYSYK。 この著者の記事一覧はこちら(安藤康之)
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