「カルト宗教」の法規制、寄付の上限設定やクーリングオフ案などの案も 弁護士278人に聞く

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2022年08月11日 07:41  弁護士ドットコム

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旧統一教会(世界平和統一家庭連合)を中心に宗教団体への多額の寄付や物品購入などの問題に関心が集まっている。生活・家庭崩壊など、悲惨な被害実態も報じられており、反社会的なカルト宗教について何らかの法規制が必要との声もある。


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弁護士ドットコムが、弁護士を対象に法律による「カルト規制」が必要かを尋ねるアンケート(7月23〜31日)を実施したところ、278人が回答し、うち6割超が法規制が必要と答えた。不要は8.3%だった。



信教の自由や結社の自由に配慮しながらも、返金や脱会を容易にする仕組みの必要性を強調する声が大きかった。



カルト規制をめぐっては、宗旨ではなく、団体がおこなっている問題行動に着目したフランスの「反セクト法」も日本で報じられる機会が増えている。



●寄付の総量規制や一定額以上のクーリングオフ案など

カルト規制が必要かを尋ねたところ、必要が過半数となった。




<結果詳細:カルト規制の法律は必要と思うか?>
必要:64.0%
何とも言えない:27.7%
不要:8.3%






具体的にどういう法律が必要かを自由記述で尋ねたところ、以下のような回答があった。



・宗教団体の布教の自由よりも、個人の宗教的自己決定権の方が優先されるという憲法解釈が可能であろうと考えるので、近時成立したAV被害救済法のように、一定額以上の献金については無条件のクーリングオフを定める立法等を行っても違憲ではないと思う



・貸金法での総量規制のように、献金、寄付に上限を設ける



・フランスの反セクト法に近い法律の制定



・活動を制限することはできないが資金の流れを容易に開示できること、献金寄付に制限を設けること、あるいは宗教法人に対する課税の強化



・円滑な脱会を目的とした、宗教団体による脱会希望者に対する慰留を規制する法律



・信者の家族の要請で脱会を認める措置



●カルト案件、弁護士には珍しくない?

このほか、これまでにカルト宗教が絡んだ案件を受任したことがあるかも尋ねたところ、約3割の弁護士がそれらしき案件にかかわったことがあると答えた。



結果はあくまで参考値で、20〜30年前のケースも含まれた結果だが、弁護士にとって、カルト宗教のトラブルは決して縁遠いものではないようだ。




<結果詳細:カルト絡みの案件を受けたことはあるか?>
ある:21.2%
疑わしい案件があった:7.6%
ない:71.2%






●返金や脱会以外にも…離婚問題が最多

「ある」「疑わしい案件があった」と答えた弁護士計80人に、どの分野の問題だったかも複数回答で尋ねた。



もっとも多かったのは離婚などの男女問題(40.0%)。続いて、返金や契約の取り消しなどの消費者問題(30.0%)、債務整理など借金問題(25.0%)、脱会(23.8%)と続いた。




<結果詳細:どんな案件だったか?>
離婚・男女問題:40.0%
消費者問題:30.0%
借金問題:25.0%
信者の脱会:23.8%
刑事事件:10.0%
その他:21.3%






自由記述でより具体的な内容を尋ねた。前述の「その他」にあたるものとして、宗教団体が名誉を傷つけられたとして、メディアや個人を訴えようとする事件もあるようだ。



・離婚事件で、依頼者が新興宗教にはまり、それが離婚原因となった



・宗教関係で親族間対立が発生し、弁護士の自分が成年後見人に選任された



・認知症気味(後見などはついていない)の親の財産を宗教団体が搾取



・名誉毀損。カルトを取り上げたメディアを宗教団体が提訴した



・電子掲示板上のカルト宗教に対する批判的言論に対する発信者情報開示請求事件



・知的障害者を言葉巧みに勧誘して入信させたので、退会依頼を受任した



・脱会したいと本人が言ってくるケースは体感としては皆無に近い。相談は別の形をしてやってくる。洗脳が解けるケースは極めて少なく、弁護士にとっても難しく、かつ、無力感を感じやすい


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