新型SUV「ZR-V」を日本に導入するホンダの狙いは?

0

2022年08月11日 11:31  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

写真画像提供:マイナビニュース
画像提供:マイナビニュース
ホンダは新型SUV「ZR-V」を日本で2022年秋に発売する。詳細は明らかになっていないが、位置づけとしては、ホンダが日本で販売している2台のSUV「ヴェゼル」「CR-V」の中間的なクルマになるのではないだろうか。ZR-V米国仕様のスペックも参考にしながら、このクルマを日本に導入するホンダの狙いを分析してみる。


○「ZR-V」のスペックは?



ZR-V米国仕様の諸元を見る限り、ボディサイズはヴェゼルの格上となる。また、ヴェゼルが排気量1.5Lのガソリンエンジン(自然吸気)と同1.5Lのハイブリッド車(e:HEV)であるのに対し、ZR-Vは1.5Lガソリンターボと2.0Lガソリンエンジンを使うe:HEVの設定だ。このラインアップは「アコード」と同様である。


米国で発表されている新型「CR-V」の諸元は、ZR-V(米国での車名は「HR-V」)よりもさらに格上の車体寸法となっている。ただし、車載するガソリンエンジンやハイブリッドシステムの設定はZR-Vと同じだ。


ホンダはその昔、悪路走破を目的とした4輪駆動(4WD)車を持っていなかった。また、「ワンボックスカー」と呼ばれたキャブオーバー(運転席の下にエンジンを搭載する)式の商用バンも持たなかった。



そのバンを基にした乗用のワゴンが、4輪駆動車とともに1980年代に人気を呼ぶとホンダは苦戦し、倒産や他社との合併が噂されるほどの経営危機に陥った。それを挽回したのが、「クリエイティブ・ムーヴァー」と名付けたミニバンやSUVの開発と販売だった。



ミニバンでは「オデッセイ」が1994年に生まれ、「ステップワゴン」が続いた。SUVではCR-Vが誕生。それらをアコードや「シビック」といった乗用車を基に開発することで、ホンダの生産工場で製造できる「レクリエーショナル・ヴィークル」(RV)となったのである。


その後、CR-Vは米国での販売を視野に車体が大型化し、一時は国内販売が中断された。現行の5代目は、約2年の空白期間を経て日本に再導入されたモデルだ。大型化していくCR-Vに代わる国内向けSUVとして誕生したのが、ヴェゼルである。たちまち国内で人気車種となり、トヨタ自動車が「C-HR」を開発するきっかけにもなったと伝えられるほどだ。

○「ヴェゼル」では物足りない人に待望の1台?

ところで、ZR-Vは米国ではHR-Vとして販売されている。



初代HR-Vは1998年にクロスオーバー的な車種として誕生したクルマだ。乗車感覚は小型ステーションワゴンのようだが、床下と路面の間が大きくあいているのでSUVのように見え、多少の未舗装路であれば床下を路面にこする心配なく走れる設定だった。初代CR-Vとは違った印象のクルマであり、2代目CR-Vが3ナンバー車となってからは、5ナンバーの扱いやすさを好む消費者に愛用された。


しかし、HR-Vは2006年に生産中止となり、その後はヴェゼルが登場するまでの7年ほど、国内の交通事情に適したホンダSUVの選択肢が途切れることになった。そしてヴェゼルは、米国ではHR-Vの後継として売り出されたのである。



CR-Vが世代を重ねるごとに大型化したのと同じように、米国でHR-Vとして販売されてきたヴェゼルも、米国内では競合他社に対し小柄過ぎたのかもしれない。米国のHR-Vが、日本国内ではZR-Vとして販売されるクルマに置き換わったとしても、過去の情勢からすれば自然な成り行きといえるだろう。



日本では、初代とほぼ同等の寸法でモデルチェンジした2代目ヴェゼルの販売が順調で、2022年1〜6月の実績では登録車の販売台数で12位に位置し、月平均4,000台近くを売っている。ヴェゼルは3ナンバー車だが車幅は1.8m未満であり、それを超えてしまうと国内販売への影響が出るだろう。



それでも国内には大柄なSUVを好む消費者もいて、輸入車を含む高額なSUVも継続的な人気がある。そうしたなかで日本に上陸するZR-Vは、ヴェゼルではやや物足りないと感じている消費者の購入意欲を刺激する1台となる可能性がある。



米国での発表を参考にすれば、次期CR-VはZR-Vに通じる外観となるようだ。現行ヴェゼルの顔つきはグリルレスに見えるような斬新さがあるが、ZR-Vはまた別の趣であり、それがCR-Vにもつながっていくのかもしれない。



ヴェゼル、ZR-V、CR-Vの3車種をそろえることで、ホンダのSUVラインアップは抜けのない選択肢を持つことになる。あるいは、これまでCR-Vの国内販売が必ずしも順調とはいえなかった状況もあるので、国内においてはZR-VがCR-Vに代わる大型SUVという位置づけになるのかもしれない。


ZR-Vの走行性能については、アコードで存分にその威力を体感させたガソリンターボエンジンの胸のすく走りと、e:HEVの電気自動車(EV)のような上質な乗り味による高級な趣を味わわせてくれるのではないか。ヴェゼルも運転を楽しめる動力性能を備えているが、ZR-Vがより格上の走行感覚をもたらすのはほぼ間違いないだろう。単に外観や車体寸法の違いだけでなく、運転し、あるいは同乗して、ヴェゼルとは別の走りを体感できるSUVがZR-Vとなるのではないか。



今秋発売とのことだが、試乗が待ち遠しいSUVである。


御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)
    ニュース設定