乱闘シーンでいきなり野球ゲームから格闘ゲームに…衝撃作『がんばれペナントレース!』【プロ野球ゲーム遊戯】

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2022年08月12日 07:13  ベースボールキング

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ベースボールキング

野球ゲームから格闘ゲームへ突如変貌…?
◆ 野球ゲームの移り変わりから見るプロ野球史〜第11回:がんばれペナントレース!

 バットに当たればホームラン。

 先日、村上宗隆(ヤクルト)のプロ野球史上初の5打席連続アーチに、初代『燃えろ!!プロ野球』の“バントホームラン”を思い出した元ファミコン・キッズたちも多かったのではないだろうか。




 止めたバットにボールが当たった瞬間、凄まじい勢いでボールはスタンドイン。重要なのはゲームバランスよりも、パワーとインパクト。

 限られた容量の中で、いかに他社と違う野球ゲームを作るか、各メーカーがしのぎを削ったあの攻防戦。王道の『ファミスタ』、リアルキャラの『燃えプロ』、そしてなんでもありの『がんペナ』。

 えっ……がんペナ?ファミスタや燃えプロに比べたら知名度は低いが、1989年2月28日に発売された『がんばれペナントレース!』である。



 当時の注目度は高く、ファミリーコンピュータマガジン89年1月20日号では、巻頭のギンギラ注目二大続報として、『ファミコンジャンプ』と『がんばれペナントレース!』を特集している。別冊付録の『ファイナルファンタジーII』攻略ブックと並ぶ扱いだ。

 ソフトの発売前人気ベスト20ランキングでは、『キャプテン翼2』と『ダウンタウン熱血物語』に挟まれた5位に『がんペナ』がランクイン。まさに平成初のプロ野球開幕にあわせた春のビッグタイトルとして市場に出た。


◆ 「よんりん」に「さざん」いったい誰?


 ソフトのパッケージ裏に「球団オーナー、監督、選手の3役をこなしてリーグ優勝、日本一をめざす、臨場感ばつぐんのプロ野球ゲームです」とあるように、ペナントモードで試合に勝てば球団運営費が貰え、選手の年俸を増やし能力アップに繋がる。

 トレードや助っ人獲得による戦力補強も可能だが、運営金を使いすぎてマイナスになるとゲームオーバー。要はGM的なチーム編成を楽しめる(といっても、1チームあたり野手12名、投手は4名しかいない)。


 もちろん球団・選手名は実名ではなく、ゲームキャラの“ゴエモン隊”チームも参戦。“セントリーグ”と“ペニーリーグ”に分かれ、ライオンズじゃなくてライターズの左腕は「よんりん」。よんりん……よんりんくどう……工藤公康か!という連想ネームモード。

 ジャイアンツではなく、ジャイラスのエースは「さざん」で抑えは「せんこう」。さざん……サザン……サザンオールスターズのボーカルは桑田……桑田真澄か!

 せんこう……蚊取り線香……鹿取だよ! なんつって実名が使えないことを利用した遊び心溢れるゲームだった。




◆ 乱闘で殴り負けた方が強制退場!?

 『がんペナ』の野球プレイ面は、走者がリードを4段階まで細かく刻んでできる仕様は画期的だったものの、投打の駆け引きや守備は特筆すべきものはなく、ファミスタの亜流といった雰囲気だ。

 正直、よくあるノーマルな野球ゲームなのだが、キッズたちの間では2人でやると爆発的に盛り上がる対戦ゲームとして有名だった。

 なぜなら、序盤は普通に野球の試合を進めるも、5回以降は二死から奇数打順の打者に死球を当てると自動的に乱闘が発生。すると、唐突に画面が切り替わり、格闘ゲームモードが開始されるのだ。


 ここで、えっなんで?なんて真っ当な突っ込みは野暮だろう。ファミコン野球ゲームに意味や理由を求めてはいけない。

 Aボタンがパンチ、Bボタンがキックで戦い、パワーゲージが0になったらKO負けだ。

 危険球を投げた側でも先に殴った側でもなく、乱闘に負けた方が強制退場処分というガチンコの格ゲー仕様。少年たちはこの無茶苦茶な特別ルールに燃えた。

 投手側はわざと当てにいき、打者側も自らボールに当たりにいって乱闘に突入。放課後の誰かの家のテレビの前は、早すぎた地下ファイトクラブのようなものだった。

 恐らく、『がんペナ』の印象を聞けば、ほとんどの人が「あの乱闘モード」と答えるだろう。『燃えプロ』といえば「バントホームラン」のようにだ。





 ちなみに、89年シーズンと言えば、実際のプロ野球では“プエルトリコのアマボクシング元J・ウエルター級チャンピオン”という肩書きを持つ近鉄のリベラが、オリックス戦でヘルメットをかすめる投球に激怒してマウンドへ突進。

 ヤクルトの巨漢パリッシュも阪神戦で死球を食らい、相手捕手・岩田徹の脳天に空手チョップを見舞って退場処分に。それらの様子が『珍プレー好プレー』で繰り返し放送された。

 要はホームランとケンカは野球の華。乱闘もプロ野球におけるエンタメの一部として捉えられていたのである。


 そんな平成初期の荒れた球界を象徴するかのような、乱闘をウリにする令和ではありえない規格外の野球ゲーム。

 いったいどこで作ったんだ……ってコナミだよ。まさに、失敗は成功のマザー(byミスター)。あのチャレンジは無駄ではなかった。

 『がんばれペナントレース!』のスピリッツは、現在の『パワプロ』や『プロスピ』にしっかり引き継がれているのである。


文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)

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  • 使用された応援歌にも絶妙なものが…バースと掛布が混じったのとか、田尾や立花(どちらも当時西武)なんていう渋い選択とか。
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