【漫画】ワケありの夫婦、妻の“はじめての床屋”で関係性がどう変化? 創作漫画『港町のカクタス』が温かい

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2022年08月12日 11:11  リアルサウンド

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創作漫画『港町のカクタス』(はじめての床屋さん)より

 嘘から始まる真実もある。最初の嘘が優しいものだったとしたら、それは素敵なことかもしれない。7月19日にTwitter上で公開された創作漫画『港町のカクタス』(はじめての床屋さん)は、歪な夫婦による純粋な愛情がつまった作品だ。


(参考:漫画『港町のカクタス』(はじめての床屋さん)を読む


 ある事情から世間を知らぬまま大人になったニコル。同情したリュウセイは、そんな彼女に居場所を作ってやろうと、勢いのままに結婚を決意する。その後、“形式上の夫婦”という関係である2人ではあるが、平和な日々を送っていた。そんなある日、髪の長さを気にするニコルに、リュウセイは床屋に行くことを提案。生まれて初めての床屋にニコルは胸を高鳴らせるのだった――。


 作者のmonoさん(@mono_lith_)は約4万人のフォロワーを数える注目度の高いクリエイター。絵の美しさ魅了しつつ、温かいストーリーにほっこりさせる本作を描いた経緯など話を聞いた。(望月悠木)


■キッカケはあの名曲


――なぜ『港町のカクタス』を制作しようと思ったのですか?


mono:加山雄三さんの『お嫁においで』の歌詞がとても好きで、「海や港を舞台にした爽やかな男女物の作品を作りたい」という着想を得ました。また、2018年からイラストの連作でニコルというキャラを描き始めたのですが、段々とキャラが動き出して物語ができはじめたので漫画という形でも発表を始しました。


――登場人物にモデルはいたのですか?


mono:2人とも明確なモデルはいません。男女物の男キャラは黒髪で前髪がある髪型、イケメンもしくは平凡な顔つき、地味な服装のキャラクターデザインが多い、という印象がありました。ただ、「リュウセイはそれらの要素を反転して作ろう」と考え、額を出して派手なシャツを着て、顔もそんなにイケメンじゃないキャラに仕上げました。男性向けの作品にするにあたり、自己投影感が薄れるのはデメリットでしたが、「キャラクター性で好きになってもらえるよう頑張ろう」という思いから、最終的にこのデザインに決めました。


 一方、ニコルは過去設定が重いキャラクターですので、外見はシンプルにしてギャップを作りたいと思いました。また、「同じ現実世界のどこかで今も日常を送っているような女の子」にしたかったため、奇抜なカラーリングや服装を避けるようにしています。また、先述しましたが、『お嫁においで』の影響も大きく、歌詞に出てくる「(浜辺で自分に向かって)駆けてくる」ような自分の気持ちに素直でキュートな女の子にしたいと思いながら作りました。


■初めて床屋に行く感動


――「大人が初めて床屋に行く」というシチュエーションは斬新でしたね。


mono:『港町のカクタス』はニコルが様々な初めての体験をしていく物語にしたいと思っています。そのわかりやすい第一歩として床屋を選びました。床屋に行くことは大人なら慣れてしまっていますが、小学生や中学生で初めて床屋に行った時の緊張や感動は誰しも体験があると思います。「誰もがしたことがあるあたりまえの体験を、初めての目線で楽しむ姿を描いていけたらいいな」と思って選びました。


――ニコルは辛い過去を持っていますが、そういったネガティブさを感じさせない雰囲気でした。


mono:周囲から見ると辛い過去ですが、ニコルにとってはまだ辛さの実感がない状態、という感じですので、あまりネガティブな内容に焦点を当てずに描きました。


――『港町のカクタス』は漫画投稿サイト“DAYSNEO”で連載されており、その中で漫画雑誌の編集者の方からのメッセージが数件見られました。本作を投稿したことによって、どのような反響がありましたか?


mono:これまでは「はじめての床屋さん」の1本のみを出版社さんに持ち込んでおり、「読み切りとして弱い」という講評を多くいただいてきました。DAYSNEOでは、連載という形で何本かのエピソードを投稿して、続けて見ていただける機会となり、「コンセプトや作品の雰囲気がより伝わりやすかったのではないか」と感じています。読み切りの制作は苦手だったため、こういった形式で編集者の方々に見ていただけて良かったです。今後も引き続き連載という形式で続け、編集者の方を始め多くの読者さんに読んでもらえればと思っています。


――今後の目標などあればお聞かせください。


mono:できれば商業誌で『港町のカクタス』を描ければいいなと思っていますが、どんな形でもシリーズを続けていきたいです。媒体に関わらず、ニコルの過去と現在と未来をしっかりと描き切って終えるのが目標です。


(望月悠木)


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