現代の英国流ラグジュアリーとは? 新型「レンジローバー」に乗ればわかる!

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2022年08月12日 11:31  マイナビニュース

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ランドローバーのSUV「レンジローバー」がフルモデルチェンジを実施して5世代目となった。豪華さや上質さの定義は時とともに変わっているようで、新型はテーマに「リダクション」(そぎ落とすこと)を掲げる。現代の英国流ラグジュアリーカーは、どんな仕上がりなのか。試乗して味わってきた。


○英国貴族御用達のクルマは今



所有する広大な荘園内を巡るため長靴でドライブしたり、狩猟のために銃や猟犬を載せて領地の野山に分け入ったり、公式行事に出席するため五つ星ホテルの玄関に乗り付けたり(このシチュエーションではベントレーやロールスロイスを使うことが多かったようだが)、そして女王陛下に愛されたり(結果的に、だが)……。そんな生活を常とする英国王侯貴族にふさわしいクルマとして開発されたのが、初代「レンジローバー」だ。誕生は1970年。日本では大阪万博が開催された年だ。



大きなグラスエリアを持つシンプルな四角いボディに丸目2灯のヘッドライト、高級サルーンもかくやと思わせるほどに贅を尽くした内装、4輪の大径オフロードタイヤを軽量アルミニウム製V8エンジンで駆動するそのスタイルは翌1971年、パリのルーブル美術館に「工業デザインの模範的な作品」として展示された最初の車両となったことで一気に注目の的に。エリザベス女王からもすぐにオファーがあり、英王室御用達車両となった。



ラダーフレーム式のボディは当初2ドアのみだったが、1981年には4ドアモデルが登場。1987年には北米での販売を開始し、オフロードでの走破性能とオンロードでの快適性を両立した世界最高のマルチパーパスモデルとしての地位を確立した。1995年に2代目、2002年に3代目、2012年に4代目がデビュー。今回試乗したのは2021年10月にワールドプレミアされた5代目だ。


○5代目のキーワードは「リダクション」



約10年ごとに世代交代を繰り返してきたレンジローバー。次の10年を見据えて採用したアーキテクチャーは「MLA-Flex」(Flexible Modular Longitudinal Architecture)と呼ばれる最新のプラットフォームで、ICE(マイルドハイブリッドを含むガソリンとディーゼルの両方)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(電気自動車)のいずれのパワートレインにも対応できるよう設計されている。



デザインは「リダクション」がキーワード。同社のチーフクリエイティブオフィサーであるジェリー・マクガバン氏によれば、要素を極限までそぎ落とし、シンプルにすることを目指したのだという。


確かに実物を目にすると、シンプルで飾り気がなく、それでいて高級感が漂うその姿に圧倒される。フロントは伝統の「クラムシェルボンネット」と新しいグリルデザインが新型であることを主張。サイドはボンネット上端からテールゲートのプレスラインまで伸び、後方に向かって上昇する「ショルダーライン」、リアに向かって下降する「ルーフライン」、後方に向かって上昇する「シルライン」の明確な3本のラインで構成されている。AピラーからDピラーまでの全てをブラックアウトし、まるで浮いているように見せる「フローティングルーフ」は初代からの伝統だ。



ウインドウとピラーの立て付け部分は段差がないフラットな形状。格納式のドアミラーによって走行時の風切り音の低減を図っている。リアは伝統の上下スプリット式ゲートになっていて、グロスブラックのパネルには、点灯するまで存在がわからない縦型テールランプが隠されている。ヨットを彷彿させるデザインを採用したテールエンドも特徴だ。


インテリアも同様にシンプルかつ豪華。横基調のインストゥルメントパネル中央には、「Pivi Pro」と呼ばれる13.1インチ曲面型「フローティングガラス」のフルHDタッチスクリーン(触覚コントロール付き)を搭載。リアのアームレストには8インチのタッチスクリーン式コントローラーを装備している。


新型には4人乗り仕様、5人乗りのスタンダードホイールベース(SWB)仕様、7人乗り3列シートのロングホイールベース(LWB)仕様がある。試乗車のシートはエボニーのパーフォレイテッドセミアニリンレザー表皮のもので、クッションは前後ともに、高級セダンでもなかなか見られないほどたっぷりとした厚みがあった。ホワイトのダッシュボードとのコントラストも鮮やかで、センターコンソールのウッドと渋く光る梨地のアルミパーツの組み合わせが派手すぎず、心地よい空間をつくり出している。


心地よさといえば、パナソニックが開発した「ナノイーX」テクノロジーを採用した「空気清浄システムプロ」を搭載しているのも特徴。アレルゲンの低減とウイルス除去を行う今時の装備である。サステナビリティを重視するなら、レザーを使わないウール混紡の「Kvadratプレミアムテキスタイル」を選択する手もある。



リアのスプリットテールゲートにはロードスペーススピーカーと照明を装備している。テールゲートを開けてそこに座れば、周囲の環境を楽しめるのもこのクルマのいいところだ。さらにプレミアムレザークッションを追加すれば、“リアゲートパーティー”を行えるほどの豪華な空間を演出することができる。


○「無音」のパワートレインと極上の後席



試乗した「オートバイオグラフィー D300」モデル(2,031万円)は全長5,065mm、全幅2,005mm、全高1,870mm、ホイールベース2,995mm。パワートレインは最高出力221kW(300PS)/4,000rpm、最大トルク650Nm/1,500〜2,500rpmを発生する3.0リッターの直列6気筒ディーゼルターボに最高出力13kW、最大トルク42Nmの48Vモーターを備えたマイルドハイブリッドシステムを搭載。電子制御の8速ATトランスミッションで4輪を駆動する。



試乗では軽井沢を出発し、鬼押出し方面へと向かった。途中にある登りのワインディングでは、2.6トンもの車重をものともせずにぐいぐいと加速していく。オーバースピード気味にコーナーに侵入すると、23インチのオールシーズンタイヤ「ピレリ スコーピオンゼロ」のわずかなスキッド音と比較的大きなロールを伴いつつ、くるりと巨体を回頭。4輪操舵システム「オールホイールステアリング」の効果を味わうことができた。


印象的だったのは、車載の「MERIDIANシグニチャーサウンドシステム」の機能のひとつであるアクティブノイズキャンセリングが抜群の効果を発揮していること。こんな走り方をしていても、キャビン内はびっくりするほどに静かなのだ。頭上のガラスサンルーフから差し込む光と緑の中をノイズレスで走っていると、「ひょっとしてBEV(電気自動車)モデル?」と勘違いしてしまいそうになるのだが、試乗を終えて車外に出ると確かにはっきりとエンジン音が聞こえるし、駐車モードに入ることで「プシュッ」というエアサスの放出音が聞こえたりもするので、なんとなくアナログ感があってそれもいい。



試乗後のランチ会場には4.4LのV8を搭載するP530の後席に乗り込んで移動したのだが、こちらの車内も圧倒的な静けさを保っていて、シートをリクライニングさせながら極上の時間を過ごすことができた。



ランチ会場は軽井沢のお隣、御代田町の森の中にある「土管のゲストハウス」。長短5本の土管を井桁状に積み上げて構成された建物は、TOKYO2020の聖火台デザインを担当し、2025年の大阪万博では日本政府館の総合プロデューサーを務める気鋭のデザイナー、佐藤オオキ氏によるミニマル建築の見本ともいえるものだ。玄関前にたたずむ新型レンジローバーとのコラボは、まさに高品位な「リダクション」の世界を表現していた。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)
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