シャープに聞く「AQUOS R7」の進化点 1型センサーのカメラとIGZOディスプレイは何が変わったのか

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2022年08月12日 11:51  ITmedia Mobile

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写真シャープのフラグシップスマートフォン「AQUOS R7」
シャープのフラグシップスマートフォン「AQUOS R7」

 2022年夏商戦向けのスマートフォンの中でも高価な「AQUOS R7」。大きな特徴はカメラだ。1型のCMOSイメージセンサーを搭載し、ライカ(Leica)が画質監修をした。全画素AFと改良されたAI被写体認識により、オートフォーカス性能がAQUOS R6から向上している。その他にも、240Hz駆動の6.6型Pro IGZO OLEDディスプレイを備え、ディスプレイ内に3D超音波指紋センサーを搭載している。



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 そんなAQUOS R7のカメラ、ディスプレイには、いったいどんな技術や機能が詰め込まれているのか、シャープでAQUOS R7の企画開発に関わった方々に話を聞いた。



通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部



・係長 小野直樹氏



・主任 平嶋侑也氏



システム開発部



・係長 関文隆氏(ディスプレイ関連担当)



・技師 岡坂拓哉氏(ディスプレイ関連担当)



・技師 宮崎大志氏(カメラ関連担当)



●AQUOS R6の弱点だったAFのスピードが向上した理由



―― これまでAFが遅かったのはなぜでしょうか。またAQUOS R7ではどこを改善したのでしょうか



宮崎氏 まずセンサーの種類が異なります。1型センサーをスマートフォンAQUOSとして初めて搭載したのはAQUOS R6でしたが、デジカメ用の1型センサーでしたので、モバイル向けのイメージセンサーとは異なりました。加えて、ToFセンサーによるレーザーAFですので、太陽光などの影響によりピントがうまく合わないといったデメリットが生じていました。



 一方のAQUOS R7では、モバイル向けのイメージセンサーを採用しています。さらに、1つの画素に8つの像面位相差センサー付きのOcta PD AFに対応していますから、AQUOS R6比でAFスピードが約2倍に向上した他、AI処理の速度が1.5倍に向上したため、人の顔や瞳を検出し、かつピントが合いやすくなりました。



―― Octa PDについてもう少し詳しく教えてください。



宮崎氏 AQUOS R5GではDual PDでした。1画素にフォトダイオードが2個含まれています。AQUOS R7のOcta PDは1画素にフォトダイオードが8個あります。ともに仕組みとしては同じですが、AQUOS R7では暗所なら4つの画素を1つの画素として撮影する明るさ優先モード(11.8MP/3.2um)が有効になり、昼間など明るいシーンでのズーム撮影なら解像度優先モード(47.2MP/1.6um)が有効になります。



 47.2MPで撮影/保存できるのはハイレゾモード(カメラアプリの「その他」→「ハイレゾ」)を使用したときのみです。写真モード(オート)の場合は、明るい環境下かつズーム時(UI上で2倍ぐらいから)に解像度優先モードに切り替わります。さらに、ズームの倍率に合わせてセンサーの使う領域が47.2MPからクロップされ、保存時に設定サイズにアップスケール処理をし、11.8MPにしています。



―― 12cm程度まで被写体に近づいて撮影できるようになりました。これはどんな利用シーンを想定していますか。



宮崎氏 テーブル(料理の撮影)と、花などに近づいて撮るマクロを想定しています。もう1つはPayPayアプリなどでQRコードを読み取って使うユースケースです。



 これまで読み込みに時間がかかる、といった意見をいただいていましたので、その読み込み時間をなるべくなくすべく修正を行いました。



 少し補足しますと、AQUOS R6よりもAQUOS R7の方が、レンズとモジュールを限界ギリギリまで繰り出すような作りとなっています。このあたりはAQUOS R6よりもAQUOS R7の方がシビアに調整しています。そのため、多くのユースケースに対応することが可能になりました。



●なぜあえて単眼カメラを搭載するのか



―― 複眼化が流行する中、AQUOS R7のカメラはなぜ単眼なのでしょうか。改めて教えてください。



小野氏 考え方ですよね。スマホの場合はメインカメラにいいセンサーをつけて、周りのカメラにはそれよりもグレードを落としたセンサーを付けて多眼化していますが、お客さまはその時々で最もいいセンサーで写真を撮りたい、と考えていると思います。



 そのため、このボディーに収まる最大サイズを使いたい、という思想に基づき、1つであらゆるシーンをしっかりとカバーできるようにしました。広角から標準、そして望遠に至るまでをしっかりカバーしないと、いくら単眼にしても駄目です。先ほどの内容と重なる部分にはなりますが、別のセンサーを付けなくてもズーム時の画質をよくするという部分において、先ほどのビニングとリモザイクが欠かせないということになります。



宮崎氏 補足しますと、どうしても2つのカメラが離れて付いていたり、そもそも異なるカメラが複数付いていたりすると、いろいろなシーンに対して切り替える必要はありますが、注意深くズームしてもかくつきが出てしまいます。



 AQUOS R5Gでも違和感のないように、できるだけ合わせこむようにしていますが、限界はあります。一方でAQUOS R7ではカメラが1つですから、切り替えても画角が大きくずれたり色味が大幅に異なってしまったり……ということが起こりません。



―― では複眼化のメリットは何でしょうか。



平嶋氏 高倍率のズームができるのが複眼化のメリットの1つではあります。この先どうなるのか、具体的なことは明かせませんが、AQUOS R6以降の単眼というポリシーは今後も続くと思います。



●深度測定用のモノクロカメラで解像感も向上



―― ポートレートにもこだわったとの説明がありました。AQUOS R6と比べてどう進化したのでしょうか。



宮崎氏 AQUOS R6は1型センサーとToFセンサーで構成しました。一方のAQUOS R7には1型センサーと深度測定用のモノクロカメラが備わります。ハードウェアとしての進化はこれだけでなく、解像感の向上を挙げたいと思います。



 ToFが40キロピクセルなので解像度しては少ないです。一方のモノクロカメラは約2メガピクセルなので、双方を比べると圧倒的に解像感が違います。ある程度の画素数があった方が、髪の毛や服などの細かいディテールを表現できたと考えています。あえてモノクロにしたのはカラーと比べて約2倍の光量を取り込めるためです。そのため、暗所(ナイトポートレートを含む)撮影での性能も向上しています。



―― ポートレートモードではデフォルトで美肌効果がかかるようですね。



小野氏 人の肌の質感、色の部分を見直しました。人に最適な調整が何かを考えたときに、若い人は比較的肌がきれいなのでそこまで補正は要りません。ですが、年齢を重ねると肌荒れなどが目立ってしまう……。かといってそれに補正をかけすぎると不自然ですから、ほどよく補正を行うようにしています。あえて一律で同じようなビューティー補正をかけないことで、人に合わせてきれいに撮れるようになっています。



 肌もそうですが、メガネに光が当たったときの反射が目立たないようにしています。



―― この補正は動物には対応しないのでしょうか。



小野氏 はい。人に特化したものになります。ただ、処理の内容によっては重たくなります。肌やボケの処理を合わせますと、時間を要してしまいますが、AQUOS R7ではそれらの処理速度に時間がかかりすぎないようにしています。



●滑らかさと省電力を両立させた6.6型Pro IGZO OLEDのディスプレイ



―― ディスプレイに関してAQUOS R6から進化したポイントを教えてください。



岡坂氏 AQUOS R7でもAQUOS R6から引き続き10億色表示などを継承しています。一般的な動画コンテンツで求められる性能はそれほど多くないと認識していますが、AQUOS R7のディスプレイ性能を生かして快適に映像コンテンツを楽しんでもらうべく、フレーム補間やAI超解像といった映像処理に力を入れました。



関氏 フレーム補間はテレビでよく用いられる用語ですが、それをAQUOS R7でも搭載しました。前後フレームから中間フレームを予測生成することで、フレームレート数を倍増させることが可能になります。それにより、滑らではっきりとした映像を楽しんでもらえます。



 もう1つのAI超解像については、AIを用いた超解像アルゴリズムで低解像度の動画をリアルタイムに変換します。元の映像の解像度に合わせたディテール復元を行うため、きめ細かで解像感の高い映像を再現できるというものになります。例えば、元の映像では視認しづらかった草木や枝のディテールが、AI超解像によってはっきりと見えるようにしています。



―― なるほど。解像度はどうなるのでしょうか。



関氏 例えば、720×480ピクセルの映像をそのままスマートフォンで表示すると、ぼかしたような映像に見えてしまいます。それを1920×1080ピクセル相当にアップさせています。ただ、AQUOS R7のディスプレイは4Kパネルではないため、仮に必要以上に解像度を向上させても見た目に大きな変化がでない。ですから、フルHDから4Kへは対応しません。



―― DRMコンテンツはAI超解像には対応していません。



関氏 先々を考えると検討すべきだと思いますが、NetflixやHuluなど有料系の動画は非対応です。



平嶋氏 DRMの保護処理が入っているものには、われわれメーカーが手を入れられません。基本的にはAQUOS R7のディスプレイよりも解像度の低いコンテンツを持ち上げるイメージです。



―― 120Hz駆動に関しては、他社が追い付いてきたようです。シャープの優位性はどこにあるとお考えでしょうか。



岡坂氏 大きく2点あります。まず1点目が240Hz駆動です。おっしゃるように120Hz駆動のスマートフォンが増えているなか、われわれは120Hz駆動の合間に黒画面を挿入することで、残像の少ない240Hz駆動を実現しています。動きの速いゲームなどで高いスコアを狙いたい方にとって重宝すると考えています。



 2点目は常にアイドリングストップです。常時120Hz駆動ですとバッテリー消費への影響が大きくなりますので、表示の更新がないときには書き換え速度を1Hzまで低下させて、動きの多いシーンでは120Hzまで可変駆動させます。これにより、消費電力を削減できます。



 ちなみに、他社にも書き換え速度を変えることが可能な製品が存在しますが、われわれはこのような技術を液晶モデルから取り入れてきたので、その点に関しては先行していると自負しています。



●指紋センサーに対応した保護フィルムが増加



―― AQUOS R7はQualcomm 3D Sonic Max(3D超音波指紋センサー)ですが、これまでのAQUOS R6のセンサーと何が違いますか。



平嶋氏 結論から申し上げると同じものになります。メリットは一般的な超音波式センサーと比べ、AQUOS R7の方が認識できる領域が広いことです。センサーを狙って指を置かなくても、しっかりと認識できますので、即座にロックを解除できます。AQUOS R6から継続して同じものを使うことで、検証期間やチューニング期間が長くなります。アクセサリーメーカーさんと早い段階から共同検証が行えます。



―― 保護フィルムの種類によっては指紋認証ができないという課題がありました。これは改善されたのでしょうか。



平嶋氏 AQUOS R6に対応した指紋認証の保護フィルムはそれほど多く存在していませんので、お客さまにご不便をおかけしていたと認識しています。超音波式であるがゆえに薄さや偏光特性、素材などによっては認証できないことを把握していました。特にブルーライトカットの表面処理が施されたフィルムや、硬くて分厚いフィルムですと認証しづらいことが分かっています。



 具体的な数はお伝えできませんが、AQUOS R7では対応する保護フィルムの種類が増えています。とはいえ、技術的なブレークスルー、調整によって改善できるように、引き続き取り組んでいく考えです。



―― 市販の保護フィルムがAQUOS R7の指紋認証に対応しているか否かを、ユーザーが見分ける方法はありますでしょうか。



平嶋氏 家電量販店で売られているもの(そのメーカー)にも記載を弊社側からお願いしていますので、すぐに見分けられるようになっています。オンラインで販売されているものに関しましては、DESIGN FOR AQUOSというページから対応/非対応を確認できます。



―― 光学式だとどうなるのでしょう?



平嶋氏 フィルムの観点でいうと超音波式よりも光学式の方が認証しやすいです。ただし、超音波式の方が光学式よりも認証速度が速いですし、センサーが小さいのでスペースを取らないです。メリットとデメリットがそれぞれにあると考えています。AQUOS R7のデザイン性を重視したりするという意味では超音波式を採用したかったです。



―― 認証精度はAQUOS R6から向上したのでしょうか。



平嶋氏 長期に渡り検証を行いましたから、少なからず向上していると思います。ですが、冬場などで指が乾燥し過ぎて使えない……という課題は残っていますし、これは超音波式と光学式のどちらにも当てはまることだと思います。



●なぜフラットな形状に変わったのか



―― これまでのモデルでは本体の持ち上げやすさを意識した側面の形状でした。AQUOS R7ではフラットになりましたが、考えが変わったのでしょうか。



平嶋氏 トレンドを見つつ判断しています。AQUOS R6はどちらかというと、3Dガラスでデザイン性、つまりフラグシップにふさわしいデザインとしていました。それに対して、R7は普段の生活になじみやすいデザインに仕上げたため、ディスプレイ面、側面をフラットにしました。



 ユーザビリティに直結する部分ですと、背面が少しラウンドしておりまして、そこに指がかかりやすいようにしています。考えが大きく変わったわけでは決してありません。



―― 背面はざらつきのある質感になっていますね。何か意図したものでしょうか。



平嶋氏 角度を変えると光沢感が表れます。特別な粉や溶剤を混ぜたことにより、このようなざらつきのある手触りを実現しつつ、光沢感も表現できたと思います。



―― ベーシックな色を投入された印象を受けました。何かトレンドを意識したカラーなのでしょうか。



平嶋氏 AQUOS Rのブランドカラーでもある黒はたたずまいを意識しています。デジタルカメラ、一眼レフカメラからもインスピレーションを得ています。グレーはニュアンスのある明るいカラーを意識したものになります。目立ちすぎないシルバーとなっています。



―― Google アシスタントキーが廃止されました。いらない、という意見を聞きますが、実際、どうでしょうか。



平嶋氏 こちらはAndroid OSの振る舞いが変わったこと、それに追従したものになります。Google アシスタントの呼び出しは電源キーの長押しでもカバーできるので、特に設ける必要がないと判断したものになります。シンプルスマホでは専用キーがありますので、商品特性やお客さまのニーズに合わせて決めています。



●取材を終えて:カメラとディスプレイにこだわる人に勧めたい



 ライカの監修による1型センサーのカメラを搭載したことで話題を集めたAQUOS R6の発売から1年。後継機のAQUOS R7は、スマートフォンに特化したセンサーに刷新することで、AQUOS R6の弱点だったAF性能を改善させ、モノクロカメラの搭載で解像感の向上も図れた。シャープならではの省電力性に優れたIGZOディスプレイも健在で、AQUOS R7ではフレーム補間やAI超解像といった機能も追加した。



 AQUOS R7はドコモとソフトバンクから販売されており、税込みでドコモが19万8000円、ソフトバンクが18万9360円という価格がネックだが、「カメラ」の機能と「ディスプレイ」の品質にこだわる人には一考の価値があるだろう。


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