皮膚トラブルの悩み、医師とのコミュニケーションが課題

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2022年08月12日 15:00  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

「医師とコミュニケーションを十分にとれている」患者さんは半数以下

 みなさんは、医療機関を受診した際、医師とコミュニケーションを十分にとれていますか。長い間病気によって傷ついたり、苦しんだりした経験をもつ人も少なくない皮膚の病気では特に、なかなか心を開けず、医師と満足のいくコミュニケーションをとれないことが課題となっています。

 乾癬という皮膚の病気の普及啓発活動を行っている患者会であるINSPIRE JAPAN WPD乾癬啓発普及協会は2022年5月29日、横浜で乾癬啓発イベントを開催し、コミュニケーションに課題を抱える患者さんの背景や、その解決策について話し合いました。

 乾癬とは、皮膚が赤くなって盛り上がり、その皮膚の一部がはがれ落ちる病気です。患者数は世界で約1億2,500万人、日本では約40〜60万人1)2)とされており、根治療法はいまだに見つかっていません。

 29日のイベントで報告された患者さんと医師の意識調査の結果によると、「患者さん/医師とコミュニケーションを十分にとれているか」との質問に対し「とれている」と回答した割合は、患者さんが45%、医師が62%で、患者さんと医師の間で“認識のギャップ”が存在することが明らかとなりました。「コミュニケーションを十分にとれていない」と回答したのは、患者さんが22%、医師が9%でした。

 意識調査は製薬会社のベーリンガーインゲルハイムが2022年4月、乾癬の確定診断を受けた18〜99歳の患者さん116人と、直近1か月以内に5人以上の乾癬患者さんを診察した24歳以上の皮膚科医師100人を対象に実施したもの。「医師は質問しやすい雰囲気づくりを心がけているか」との質問では、「心がけている」と回答したのは患者さんで48%、医師で80%でした。

 2割以上の患者さんが医師とコミュニケーションを十分にとれていないとした調査結果を踏まえ、乾癬をもつ角田洋子さん(INSPIRE JAPAN WPD)はイベントで、「長い期間、症状がよくならずに悪い状態が続いていたので、どうせ治らないと諦め、診察室で医師に『どうですか』と聞かれても、『変わりありません』と答えるだけだった時期があった」と自身の過去を振り返りました。「当時は、よくなりたいという気持ちや不満を外に出せるタイプの人間ではなかった」という角田さん。治療への意欲がわき、医師とのコミュニケーションが良好になるきっかけとなったのは、「話をよく聞いてくれる医師との出会いや、患者会で症状が改善している患者さんをみたことだった」といいます。角田さんは、「医師も人間。嬉しいことを報告すれば喜んでくれるし、悲しいことを報告すればなんとかしたいと思ってくれる。通院を続けるなかで、一歩一歩医師と信頼関係を築いていけるといい」と考えを述べました。

 同じく乾癬をもつ奥瀬正紀さん(INSPIRE JAPAN WPD)は、患者さんと医師のコミュニケーションの課題について、「治療してもよくならない、症状が改善するイメージがわかないという患者さんもおり、諦めの気持ちから自身の殻に閉じこもってしまうケースがある」と指摘しました。また、「診察室の独特な雰囲気に緊張して頭が真っ白になってしまう患者さんもいる」として、「受診の際、症状や治療について聞きたいことはたくさんあると思うが、すべて聞こうとすると混乱してしまうこともあるため、質問をひとつに絞ってはどうか」と提案しました。

 これについて皮膚科医の山口由衣先生(横浜市立大学附属病院)は、「診察時間は限られているため、ひとつの質問であれば、それについて深く説明することができる」と話しました。山口先生は、「質問項目が多いと、質問に対する医師の答えを忘れてしまう可能性もある」として、「質問は、1〜2つくらいにするとよいのではないか」との見解を示しました。

皮膚のトラブル、受診する医療機関に悩んだら「皮膚科専門医」の検索を

 同日のイベントでは、「皮膚科の上手なかかり方」と題したトークセッションも開催。皮膚にトラブルが発生した場合に受診する医療機関を選択する方法について、皮膚科医の大塚篤司先生(近畿大学病院)は、「日本皮膚科学会が認定している皮膚科専門医かどうかを基準にしてほしい」と説明しました。

 皮膚科専門医は、日本皮膚科学会のホームページから検索することが可能です。

 大塚先生は、診療で嬉しかったことを問われると、「皮膚の病気は外観でわかるため、対人関係に影響をおよぼすことがある。異性からの視線を気にする患者さんも多い」と問題視したうえで、「治療によって症状が改善し、恋人ができたと報告を受けた。すごく嬉しかった」と笑顔で答えました。

 また皮膚科医の遠藤幸紀先生(東京慈恵会医科大学附属柏病院)は、乾癬患者さんを例に「目立つところに症状が現れ、いじめや嫌がらせを受けて、引きこもってしまうこともある」と指摘。治療で症状が改善したことで社会復帰を果たした患者さんの例を紹介し、「患者さんのそれまでの人生を取り戻すことは難しいが、これから晴れやかな人生を歩めるのではないかという患者さんにたくさん出会うことができた」と語りました。

 乾癬だけでなく、病気が「よくならないのではないか」と諦めてしまっている方は少なくないのではないでしょうか。医師と信頼関係を築き、コミュニケーションをとることで、治療に前向きに臨めるようになるかもしれません。気になる症状があったら、医療機関を受診するようにしてくださいね。(QLife編集部)

1)Kubota, K , et al:BMJ Open. 2015;5(1):e006450. 2)照井正,ほか:臨床医薬. 2014;30(3):279-285.

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