「0円」で集めたユーザーを手放した楽天モバイル プラン改定の功罪を読み解く

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2022年08月13日 06:11  ITmedia Mobile

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写真6月末時点でMNOとMVNOを合算したユーザー数は546万。3月末時点より減少しているが、三木谷氏は1GB以上のユーザーは純増だと強調した
6月末時点でMNOとMVNOを合算したユーザー数は546万。3月末時点より減少しているが、三木谷氏は1GB以上のユーザーは純増だと強調した

 0円からスタートする「Rakuten UN-LIMIT VI」の廃止により、楽天モバイルからユーザーが大量に流出している。8月10日に開催された楽天グループの第2四半期(4月から6月)決算説明会で、その現状が明らかになった。解約数は新規加入者数を大きく上回っており、四半期ごとの契約者数は、MVNOも合わせると22万の純減。MNOとしても、4月からの比較で23万ほど契約者数を失った格好だ。0円で維持していたユーザーが、発表を機に、一気に抜けたことが伺える。



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 楽天モバイルにとっては、これは必ずしも悪い話ではない。料金を毎月払うユーザーの比率が高まり、経営状況が大きく改善するからだ。既に第2四半期からその兆候は見え始めており、ようやくモバイル事業単体での黒字化も視野に入ってきた。とはいえ、契約者の流動性は大きく高まり、大手キャリアやMVNOの草刈り場になっているのも事実だ。この状況はいつまで続くのか。UN-LIMIT VIの廃止で大きく変わった今のモバイル市場を読み解いていきたい。



●0円廃止発表の直後から解約が急増、四半期で初の純減に



 7月1日に、新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を導入した楽天モバイル。1GB以下が0円になる衝撃的な料金体系を廃止し、3GB以下の最低料金を1078円(税込み)に改めた。これに伴い、料金を払わず楽天モバイルを維持していたユーザーが、大量に同社を解約している。その数は、新規契約者を大きく上回り、四半期ごとの契約者数で初めて純減を記録した。



 決算に合わせて公開された補足資料によると、6月末時点での契約者数は、MNOとMVNOを合わせて546万回線。3月末時点では568万回線だったため、差し引きすると22万回線の純減になる。自社回線であるMNOのみに絞っても、純減は14万回線と大規模だ。楽天モバイルのMNOは、4月に500万回線を突破していたが、ここを基準にすると、MNO単体でも純減数は23万回線にのぼる。



 第2四半期というくくりで見ると、5月半ばまではペースを上げつつ純増していたが、UN-LIMIT VIIの発表を境に、解約者数が急激に増加したことがうかがえる。その激しさは、同社が公開した解約者数のグラフからも見て取れる。実数が公開されていないため、正確な規模はつかめないものの、発表前日と比べ解約者は10倍以上に拡大。4月に最も解約が多かった日との比較でも、2倍程度に伸びている。



 0円廃止のインパクトは、非常に大きかったようだ。楽天グループの代表取締役会長兼社長を務める三木谷浩史氏によると、解約者のうち、実に8割のユーザーのデータ使用量が1GB以下に収まっていたという。0円を目当てにしていた契約者が、楽天モバイルの発表を聞き、即座に動いてしまったというわけだ。UN-LIMIT VIの最終日にあたる6月30日には、解約数が最大を記録。発表日当日の2倍近いユーザーが離脱した格好だ。



 もちろん、この間に新規契約者も増えているため、実際の解約者数の規模は純減数の23万回線より大きくなる。楽天モバイルの場合、直近では1四半期あたり40万回線ほどの純増を記録していた。仮に第2四半期もこのペースを継続できていたとすると、解約者数は60万回線に達する。UN-LIMIT VIIの発表で獲得ペースが半減程度まで落ちていたとしても、40万回線以上の解約があった計算になる。この恩恵を受けたのが、大手キャリアのオンライン専用ブランド/プランやMNVOだ。



●大手キャリアのオンライン専用プラン/ブランドやMVNOが狙う“ヤメ楽天”



 中でも、同じ0円スタートを売りにしていたKDDIのpovo2.0に、ユーザーが殺到した模様だ。楽天モバイルの発表直後からpovo2.0の申し込み件数は2.5倍に伸び、無料で回線を維持したいユーザーの受け皿になった。7月に発生した通信障害で、「一時期の勢いからは落ちている」(KDDI 代表取締役社長 高橋誠氏)というものの、7月末時点でも「うちから出ていく数より、入ってくる数の方がまだ多い」という。



 月額990円の「ミニプラン」を用意するソフトバンクのLINEMOも、楽天モバイルの影響で加入者を伸ばした。ソフトバンクの代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏は、「今までのLINEMOの純増より、角度が高く増え始めている」と語る。LINEMOは、他社のオンライン専用プラン/ブランドと比べ、やや勢いに欠けていたところはあったが、低料金を求めるユーザーの流動性が高まり、伸びが顕著になった。



 とはいえ、オンライン専用プラン/ブランドは、楽天モバイルの0円プランと比べれば割高だ。基本料無料のpovo2.0ですら、3GBのトッピングを購入すると990円の料金がかかり、楽天モバイルの3GB以下とほぼ横並びになる。より料金を抑えたいユーザーが注目しているのは、“格安スマホ”として以前から定着していたMVNOだ。実際、MVNO各社も、楽天モバイルの新料金発表を機に、契約者獲得に弾みをつけている。



 MVNOトップシェアのIIJmioを率いる代表取締役社長の勝栄二郎氏は、第1四半期(4月から6月)の「獲得ペースが明らかに強まっている」と語り、その影響の1つとして楽天モバイルの料金プラン改定を挙げた。同社がMVNEとして支援する、他のMVNOも楽天モバイルから流出するユーザーを獲得できているという。同社の第1四半期は、IIJmioだけで3.6万回線の純増を記録。前四半期の1.7万回線、前々四半期の1000回線から、純増数を大きく伸ばすことに成功した。



 IIJmio以外では、やはり低料金を強く打ち出しているMVNOが強い。1GB、290円の「合理的シンプル290プラン」を展開する日本通信は、楽天モバイルの発表後に、最大で10倍程度、新規契約者が増えたという。同社の代表取締役社長、福田尚久氏は「楽天モバイルの基地局整備が完了してくればどこかで影響は出ると思っていたが、今は逆にポジティブな影響として出ている」と語る。維持費を抑えたいユーザーにとって、290円という価格は魅力的だったことがうかがえる。



 他社にとっては“棚ぼた”ともいえる楽天モバイルの料金改定だが、獲得合戦はまだまだ続く見込みだ。緩和措置として、Rakuten UN-LIMIT VIユーザーのデータ使用量が1GB以下の場合、7月〜8月は無料、9月〜10月は1078円がポイント還元されるからだ。もともとUN-LIMIT VIを契約していたユーザーは、現時点でも“0円プラン”が継続していることになる。これが楽天ポイントでの還元に切り替わるのが、9月だ。三木谷氏は「今はかなり落ち着いてきている」と語っていたが、8月末に向け、再び流動性が高まると見ていいだろう。ポイント付与が終了する10月末も、大きな山になる可能性が高い。



【更新:2022年8月17日14時00分 初出時、Rakuten UN-LIMIT VIから移行する場合、7〜8月は返金する旨の記載がありましたが、正しくは無料です。おわびして訂正いたします。】



●第3四半期からARPUの上昇が本格化するが、ブランドイメージをどう回復させるか



 とはいえ、料金を払っていなかったユーザーが離脱すれば、おのずと楽天モバイルのARPU(1ユーザーあたりの平均収入)は上がることになる。ARPUを算出する際の分母が減るからだ。残ったユーザーも、最低1078円支払うことになり、収益性は大きく改善する。実際、楽天モバイル三木谷氏は9月以降、ARPUが現状の1.5倍まで上昇するとの見込みを明かしている。



 単にARPUが上がるだけではなく、0円ユーザーが減れば、コストの削減にもつながる。1GB以下でも、ローミングでKDDI回線を使われれば、ローミング費用が発生していたからだ。Rakuten Linkでの音声通話も無料だが、これも他社に発信すれば、楽天モバイルに接続料が課される。端末割引や楽天モバイル契約時につく楽天ポイントも、同社にとってのコストだ。0円で利用するユーザーがいなくなることで、こうした負担は軽減される。



 UN-LIMIT VII発表後に契約したのは、ある意味“覚悟を決めてきた”ユーザーだ。そのため、発表後の契約者は、発表前と比べ、楽天モバイルをメイン回線にした割合が8.3%高く、料金が上限に達する20GBを超えるユーザーも5.7%ほど高まっているという。同様に、UN-LIMIT VIIでは、楽天市場でのポイント付与率が最大で2%アップすることもあり、楽天エコシステムへの貢献度も上がる。三木谷氏は、「われわれにとっての優良ユーザーに変えて成長していく上でよかった」と語る。



 第2四半期には、その成果が既に出始めている。前四半期に約1350億円計上していた赤字がピークアウトし、第2四半期には1242億円にまで減少。現状では無料が継続しているユーザーが残っていることもあり、どちらかといえばユーザーの規模を拡大してきたことや、ローミング費用を圧縮してきた効果の方が大きいとみられるが、第3四半期からは、ARPUの上昇が本格化する。来年(2023年)度の単月黒字化を目指していた楽天モバイルだが、料金プランの改定でその実現度が増したといえそうだ。



 一方で、0円から始まる料金プランを廃止すれば、ARPUが上がるのはある意味当たり前の話。ユーザーの維持にはコストがかかることも、開始前から分かっていたはずだ。赤字を垂れ流してまで、背伸びをして契約者を獲得していた戦略には疑問符がつく。当初からUN-LIMIT VIIのような料金体系を打ち出していれば、ユーザー数はここまで伸びなかった半面、赤字を圧縮できていた可能性はある。朝令暮改で料金プランを廃止したことで、ブランドイメージにも傷をつけてしまった。



 覆水盆に返らずで、0円プランを導入してしまった事実は変えられないが、獲得コストをかけて集めたユーザーを一気に放出してしまう料金プラン改定は、本当によかったのか。多くのユーザーが有料のプランしかない他社に転出していることを踏まえると、“0円死守”が絶対的な条件ではないようにも見える。楽天モバイルは、段階制の料金プランを採用しているため、使ってもらえばARPUはおのずと上がっていく。その工夫が十分だったかは、振り返ってみる必要がありそうだ。


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  • そもそも無期限タダとはうたってなかったのに0円で使えてた期間は儲けものだったとなぜ思えないのか?あさましいな…🤔�ե����
    • イイネ!26
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