『ロッキー4』ドルフ・ラングレンの衝撃 イワン・ドラゴの恐ろしさに震えた86年のあの夏

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2022年08月13日 10:11  クランクイン!

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写真映画『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』ドルフ・ラングレン演じるイワン・ドラゴ (C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
映画『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』ドルフ・ラングレン演じるイワン・ドラゴ (C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
 とんでもないやつがやって来た。そろそろ夏も近い1986年の6月、イワン・ドラゴを目撃して思わず震え上がったことを今でもよく覚えている。大ヒットシリーズ最新作『ロッキー4/炎の友情』。これまでアポロ・クリード(カール・ウェザース)やクラバー・ラング(ミスター・T)ら、並み居る強敵を撃破してきた「イタリアの種馬」ことヘビー級ボクサーのロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)。その眼前に新たに立ちはだかるのが、ソ連の生んだファイティング・マシーン、「シベリア超特急」の異名を取るドラゴ(ドルフ・ラングレン)であった。

【写真】デカい! 身長196cmのイワン・ドラゴ

■身長196cm 冷酷なソ連の新人ボクサー

 身長196cm、体重118kg。20代半ばでソ連軍大尉を務める一方ボクシングに打ち込み、オリンピックで金メダルを獲得。一説によればアマチュア時代の戦績は100戦100勝100KOという。ソ連がプロボクシング進出への尖兵としてアメリカへ送り込んできたドラゴ。上記のデータを知らずとも、ロッキーを見下ろす冷酷な目つきを見るだけで、その恐ろしさは十分すぎるほどに伝わってくる。今度という今度はヤバいのではないか。そんな予感は的中、ドラゴは手始めに組まれたエキシビジョン・マッチでかつてのチャンピオン、アポロを死に至らしめる。「死ぬ奴は死ぬ…」そう無感情に言い捨てるソ連の新人。

 ロッキーとアポロとの間には戦いを通じて友情が育まれていった。互いが共有するファイティング・スピリットが共鳴した、その結果としての盟友関係だった。第3部で相まみえた挑戦者クラバー・ラングにしても燃え上がる闘志を隠すことなく、ロッキーに噛みついてきた。しかしドラゴはどうか。ただただ無慈悲に恐るべき威力のパンチを振り下ろし、対戦相手を粉砕するのみ。ソ連が誇る科学力に裏打ちされたそのパワー、そのテクニックに、感情が入り込む余地はない。自分より若く大きく強く、心身ともにつけ入る隙のない最強の敵に、ロッキーはどう立ち向かうのか…。

 思わず誰もが知らないはずのない『ロッキー4』のあらすじを書いてしまった。初公開から30余年、監督スタローン自身が再編集を行った最新版『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』として蘇った同作。これまで陽の目を見ることのなかった素材を加えて組み立て直された映画は、特にその第一部において人びとの心情をより深く掘り下げている。たとえばオリジナルにおいて、いわば慢心からドラゴに屠(ほふ)られたとも見えたアポロ。今回の再編集版ではこの元チャンピオンが年齢に抗い、自分自身のなかに残った闘志を燃やし尽くすためにドラゴに挑もうとする、そんな姿が丁寧に描かれる。これを受けてアポロの死はより痛切なものとなり、またその遺志を継いでドラゴを迎え撃つロッキーの戦いもより意味深いものとなっている。同じ映画がここまで変わるものかと思う。

 いくつかの場面やセリフが加えられたことで、大きく印象が異なるものとなったのはイワン・ドラゴについても同じだ。この戦闘マシーンは旧版でもロッキーとの試合を通して戦うことの意味を見出していたが、今回の再編集によってその心の移り変わりがより明確になっている。大国に作られたプロパガンダの道具という立場を捨て、あくまで個人として自分自身を燃焼させることを選ぶに至るドラゴ。ひとつふたつの誇張されたセリフや場面ではなく、小さな追加の積み重ねによって人間像に厚みが増している。今回の再編集版を踏まえて『クリード』2部作を観直すと、また新たに深い感慨が生まれるはずだ。

■ドルフ・ラングレンのその後

 それにしても改めてスクリーンで目撃するドラゴはやはりとんでもない男であった。何しろデカい。それにミックスし直された大音響が伝える、殺人パンチの重さはどうだ。今回はアポロだけでなくロッキーも殺されてしまうのではないか。そう思わざるをえない暴力性があった。86年の夏に震え上がったあの恐ろしさに再度触れる、稀有な体験だった。

 『ロッキー4』で初めて知ったドルフ・ラングレンをその後追いかけ続けたファンも多いことだろう。『マスターズ/超空の覇者』(1987)や『レッド・スコルピオン』(1988)、あるいは『ユニバーサル・ソルジャー』(1992)といったアクション巨篇で主役を張りながら、その後は小規模な作品への出演が続いている。2メートル近い巨体を誇り、極真空手の猛者でありつつ、いくつもの名門大学で数学、化学、物理学を学んだエリートでもあるラングレン(さらにドラムも上手い)。あらゆる面で常人離れしたそのスーパーヒューマンぶりが、逆に映画界では持て余されてしまったのかもしれない。実にもったいない話である。とはいえ近年は『エクスペンダブルズ』シリーズや『アクアマン』といった大作でも確かな存在感を示しているラングレン、その衰えを知らない超人性を活かしてもうひと華咲かせてほしいと切に願うばかりだ。

 だからこそ『ロッキー』シリーズをめぐるスタローンとプロデューサー、アーウィン・ウィンクラーの確執が何とか解決しないものかと思う。シリーズのスピンオフ『ドラゴ』製作との報に触れてスタローンが激怒していた。同作は現状まったく形になっておらず、ラングレンも当然スタローンが関与するものだと思っていたという。たしかに新作『ドラゴ』は超観たいが、ロッキーその人抜きで話を進めるのは大問題だ。円満和解から新作に全員集合、からのみんな号泣、という流れを是非期待したい。(文・てらさわホーク)

 映画『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』は、8月19日より全国公開。

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  • 殺人マシーンは同じ頃にもっとインパクト強いのが出てきちゃったから…
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