アフリカで待っていた2匹の保護猫  セネガルからモザンビークに引っ越しで“ビビり猫”がキャラ変

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2022年08月13日 14:00  AERA dot.

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写真鼻チューする2匹
鼻チューする2匹
 飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回はアフリカのモザンビークで国際協力の仕事をしている優美さん(30歳)のお話。1年前に縁あって現地の野良猫2匹を家に迎えましたが、その行動に一喜一憂。仕事の関係で一時帰国し、アフリカに戻ると猫に大きな変化が……。異国の“可愛いパートナー”について語ってもらいました。


【写真】路上で暮らしていた保護前の様子
* * *


 私は大学生の頃からアフリカで働くことを考えるようになりになり、6年前からアフリカで暮らしています。2021年に、アフリカ4カ国目の赴任先であるセネガルで。雌猫キキと雄猫トトと出会いました。


 猫との暮らしは初めてだったので、すべてが新鮮。アフリカに来て以来、ずっと一人暮らしでしたが、今はもう猫たちのいない生活は考えられません(笑)。こちらアフリカでの猫の保護や生活の様子などをお伝えしたくて、海外でもよく読むこのサイトのコーナーに応募しました。どこの国でも、保護される猫たちと幸せな飼い主が増えるといいなと思っています。


■一時預かりのつもりが気持ちがぐらっ


まずはキキとの出会いから。


 昨年5月、現地の動物保護団体でボランティアをしていた友人から、「家の前に、毎日餌を食べに来るシャイな成猫がいる」という話を聞きました。彼女の家には、ハンデの子も含め10匹ほどの犬猫がいて増やせない状況で、保護できる人を探していたのです。


 セネガルの保護団体は「人なれした野良猫の引き取り手を国内外で探す」という取り組みをしていたので、私は数カ月してなれたら引き取り手を探すという友人の提案にのり、キキを一時的に預かることにしました。仕事の移動も多いし、動物を飼うことはまったく考えていなかったけど、路上で踏ん張るようにたたずんでいたキキを見て、何かしてあげたいと思ったし、コロナで在宅勤務だったので、短期間なら面倒を見られるかな、と思ったのです。




 そうしてキキを預かったのですが、キキは究極の「ビビり」で、私のアパートに着くと食器棚の下に入り込みました。夜になると玄関前でずっと鳴いていたので、「路上の方が良かったのかな」と、胸が痛みました。


 それでもとにかく距離をとりながら、お互いに観察し合っていました。キキはしばらくすると、食器棚の下からランニングマシンの下に移りました。触ろうとしていなくても、横を通る度に威嚇の「シャーシャー」をします。



 そんな状態のキキだったので、私もキキファーストで生活するようになりました。あちこちに餌を数粒置いて、少しでもキキの行動範囲が広くなるようにしたり、物音に驚く状態だったので、大きな音を立てないように気を付けたり、来客の時はキキの隠れ場所に布をかけたり。


 そうした日々の中、キキは少しずつ進歩していきました。隠れる時間や逃げる頻度が徐々に減って、ビビりながらも毎日懸命に生きている様子がいとおしくなり、私は預かってから1カ月後に、ボランティアの友人に「このままキキを引き取りたい」と連絡しました。


 友人には「ずっと触れなくてもいいの?」と聞かれたのですが、キキを大事に幸せにしたい!と思ったのです。


■トトを迎えてにぎやか2匹に


 トトとは、キキと出会ってから3カ月後の8月に会いました。生後6カ月くらいでした。
 
 場所は引っ越し先のアパートの地下のゴミ捨て場なのですが、キキと正反対で、フレンドリーで究極の甘えん坊な子。茶白柄でキキと見た目が似ていて、(私と会う前の)キキの子猫時代はこんなだったのかなと、感じ入るものがありました。


 1週間毎日ゴミ捨て場に通いましたが、母猫の気配はなく、駐車場内の一画にあるゴミ捨て場だったために、車の出入りも多く、保護を考えました。友人にも相談しましたが、保護団体に預かるキャパがないというので、「じゃあ私が」と決めたのです。



 自分にとって初の捕獲でしたが、これは慎重にしました。アフリカは日本と違って狂犬病発症国が多いのです。最初に赴任したマダガスカルで猿になめられた人が、狂犬病の注射を3回も打っていたんです。それを見ていたので、トトが驚いて暴れてかまれたりしないように、キャリーケースに餌を入れて捕まえました。扉を閉じた瞬間からトトは驚いてずっと鳴き叫んでいましたが、アパートに連れてきてキャリーの扉を開けた数分後には、私にスリスリ。




 獣医さんに来てもらい、すぐに予防注射を打ってもらったのですが、獣医さんにも甘えていました。キキと同じ猫なの?とびっくりしたものです。


 キキの名は「魔女の宅急便」の主人公の女の子からもらい、トトは、「Africa」という素敵な曲を歌うロックグループTOTOからもらいました。アフリカに憧れていた頃によく聞いていたんです。キキとトト、あわせて“キキトト”。響きも好きでした。


 こうして猫2匹との暮らしが始まりましたが、最初の2週間はキキと離し、トトにはキッチンで過ごしてもらうことにしました。本当に甘えん坊でぎゃーぎゃー私を呼び、足にしがみついてくるので、私はキッチンにヨガマットを敷いて、そこで仕事をしたり、トトと寝たりしました(笑)。


 やがて2匹を一緒にしましたが、トトは遊んで欲しくてキキにちょっかいを出し、キキはそんなトトに対して威嚇して仲良くなる気配がありません。ネットで検索すると、「相性が悪い猫同士が暮らすのは不幸だ」なんて記事もあり、やってしまったか!と落ち込むことも……。でもトトがのびのびしてこちらに甘える様子を目にして、キキも徐々にのんびりした様子を見せるようになりました。



 このままどんどんキキが慣れるといいな……と思っていたのですが、じつはトトを迎えた1カ月後、仕事の関係で引っ越しが決まりました。


■悩んだ末の2匹の輸送


 次の行き先はモザンビークです。


 アフリカの最西端のセネガルと南東にあるモザンビークは、時差が2時間。飛行機でもかなりの時間がかかります。


 私はもちろんキキトトとずっと生活を共にするつもりでいたので、よりよい移動方法を考えました。


 仕事の手続きで日本に戻る必要があったのですが、その時にキキとトトも連れ帰り、そこからモザンビークに一緒に行くのがいいのか。それともセネガルから直接、2匹をモザンビークに送るのがいいのか。


 調べると、トトが日本の受け入れ条件(狂犬病予防接種後6カ月)を満たせなかったし、輸送が一度で済む方が猫に負担がかからないと思い、モザンビークに送ることにしました。モザンビークで動物保護団体紹介のペットシッターさんが見つかったので、その家で預かってもらうことにしたのです。




 2匹の出発は11月末に決まりましたが、コロナで減便という状況もあって、エチオピア経由での動物輸送にはなんと30時間以上。キキとトトには申し訳なかったですが、それでも無事にペットシッターさん宅に着いたと聞き、ほっと胸をなでおろしたものです。


 私が日本での仕事の手続きを終えて、モザンビークに向かったのは今年1月末。約2カ月、シッターさん宅に預かってもらったのです。


 果たして私のことを覚えているでしょうか……。それが次の心配ごとでした。


■猫同士に変化!キキがキャラ変?


 キキとは半年、トトと2カ月しか暮らしていなかったので、「忘れられてもしかたない」と覚悟して、シッターさん宅にキキとトトを迎えにいきました。すると、トトは私を見て近づき、「どこに行ってたんだい」というようにスリスリして離れませんでした。キキの方は、少し離れてこちらをじっと見ていました。


 シッターさんから、キキはおびえてシャーシャーいうし、餌をあげる時も近寄ってこないと聞いていたので、「キキはあまり変わってないかな」とその時は思いました。


 しかし、2匹を私の新たな家に連れていくと、それまで見たことのない光景を目にしたのです。セネガルの時は、キキはトトに向かって威嚇して常に“ヨガマット1枚分”の距離があったのですが、何と、グルーミング(毛づくろい)し合ったり、一緒に遊んだり、昼寝したり。



 さらに驚いたことに、キキをなでられるようになりました。前はちゅーる(アフリカでも売ってます)をあげる時がいちばん私と近い距離でしたが、トトがするように、キキが私に「なでて〜」と甘えてくるようになったのです。リラックスして、“へそてん”まで!


 キキとトトが仲良くなったのも、キキが甘えて触れるようになったのも、どちらもうれしいこと。環境が目まぐるしく変わる中で2匹は互いに絆を深め、キキのキャラも変化したのでしょうか? そう思うと、会えない間の心配もつらさもすべて溶けていくようでした。



■これからもよきパートナーとして


 8月。モザンビークに来て、はや半年が経ちます。


 振り返ると、コロナ禍でアフリカ赴任という日常生活の制限も不安も大きい中、キキトトと暮らすようになって、自分も幸せを感じる時間が増えたなとあらためて感じます。


 猫たちにも変化がありましたが、私の生活も大きく変わりました。


 外で何があったとしても、家に帰ってキキトトの姿を見て、2匹をなでていると安心して癒やされます。餌が欲しくて、朝「早くちょうだい」と起こしに来るので、以前に比べて、休日でも生活が規則正しくなりました。



 トトがいたずらするので(髪ゴムを食べる、服のひもをかむ、置物を棚から落とすなど)気を付けていますが、何でも引き出しの中にしまう癖がつき、家の中の見た目もシンプルできれいになりました。


 猫との暮らしは「いいこと尽くし」です(笑)


 そういえば、私の好きなTOTOの「Africa」には、<アフリカに降る雨をたたえよう。急げ青年、あそこでお前を待っている……>という歌詞があります。アフリカで私を待っていたのは、可愛い2匹の猫たちでした。


 キキトトと楽しそうに暮らしている私を見て、日本の家族もうらやましがり、今ではすっかり2匹のファンになっています。猫に救われたという言葉をよく聞きますが、私の場合も同じです。おっかなびっくりしながら少しずつ成長していくキキと、甘えん坊のままだけどたくましくなってきたトトに救われて、今の元気な自分がいるのだと思います。


 イタズラばっかりするトトだけれど、そんなトトのお陰で、キキと私の距離もグッと近づきました。


 キキトト、いつも幸せな時間をありがとう!



(水野マルコ)


 【猫と飼い主さん募集】
「猫をたずねて三千里」は猫好きの読者とともに作り上げる連載です。編集部と一緒にあなたの飼い猫のストーリーを紡ぎませんか? 2匹の猫のお母さんでもある、ペット取材歴25年の水野マルコ記者が飼い主さんから話を聞いて、飼い主さんの目線で、猫との出会いから今までの物語をつづります。虹の橋を渡った子のお話も大歓迎です。ぜひ、あなたと猫の物語を教えてください。記事中、飼い主さんの名前は仮名でもOKです。飼い猫の簡単な紹介、お住まいの地域(都道府県)とともにこちらにご連絡ください。nekosanzenri@asahi.com


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