がん放置療法の近藤誠医師死去 かつて語った「一人の意見は『抗がん剤をやめさせる』根拠にはなる」

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2022年08月15日 12:45  AERA dot.

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写真近藤誠医師
近藤誠医師
『患者よ、がんと闘うな』などの著者として知られる近藤誠医師(73歳)が亡くなった。近藤医師の著書『医者に殺されない47の心得』(2012年刊)がベストセラーとなっていた2013年に、『週刊朝日』ではその科学的根拠をめぐる検証記事を企画し、複数の専門医と近藤医師(当時・慶応大学放射線科講師)に取材を敢行していた。がんの9割は、治療するほど命を縮める。放置がいちばん−−。そんな過激な主張を繰り返していた近藤医師は、学術的な論文などではなく、もっぱら一般向けの書籍や雑誌でしか主張を発表してこなかった。その理由はどこにあったのか? 当時の記事(週刊朝日2013年6月21日号、28日号)から抜粋して振り返る。


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 近藤医師は1980年代から、「がんを見つけたら手術や抗がん剤治療をしたほうがいい」という通念に誤りがあると指摘してきた。その主張は、がん放置療法と呼ばれ、医師任せだった患者に「医師を疑う」視点を喚起させた。しかし、科学的根拠を重視する医学界からは相手にされてこなかった。


 それゆえか、持論を学会の論文などではなく、一般向けの書籍や雑誌でしか発表してこなかった。


「かつては学術的な論文を投稿していたが、医学界は何も変わらなかった。医学界にものを言ってもダメだという悲観がある。一般向けに発表したほうが、効率的に私の主張を発信できるからね」


 と、近藤医師は話す。


『医者に殺されない47の心得』の中で近藤医師は「がんの9割は、治療するほど命を縮める。放置がいちばん」「がん検診は、やればやるほど死者を増やす」と説いていて、その論の根幹として、「抗がん剤の臨床試験には人為的操作が入っている」といった問題点を挙げている。


「これまでの僕の本では、肝心なところは根拠となるデータを示していたけど、一般の人には読みにくいでしょう。だから今回(の『医者に殺されない47の心得』)は、結論だけ書いてある。いちいち論文根拠は示さない。そうするとわかりやすくなる。それは執筆にあたって工夫したところで、それゆえに読者の支持を得ているわけ」(近藤医師)



 その内容は、現在の医療の常識とはかけ離れた主張で、しかも断定的な論調で書かれている。近藤医師はこう続ける。


「根拠というのは、聞かれたときに示せばいい、という考え方もある。僕のほかの本には専門的な根拠が書いてあるわけだから、読者が、僕の主張の根拠を知りたければ、それらの本を読めばいい」


 記者が近藤医師に対して「他人の論文や臨床試験の問題点を指摘するばかりでなく、自分が提唱したいことを科学的根拠をもって証明していけばいいのではないか」と問いかけた。近藤医師はこう答えた。


「理論は、何かを築き上げる理論だけではなく、従来の考え方やデータなどが間違っていると指摘することに使える場合がある。僕は、抗がん剤や手術といった治療に間違いがあると指摘しているわけで、新しいデータを提示してはいないんだよ。『抗がん剤をやったほうがいい』という介入行為は医師一人の意見でやってはいけない。しかし、一人の意見は『抗がん剤をやめさせる』根拠にはなるわけだ。臨床試験の方法や結果の解析が妥当か? 専門家がインチキしていないか? その点では、一人の意見は有用なんだよ」


 近藤医師本人が言うように、主張している内容は、新しいデータの提唱ではなく、現代医療に対する問題点の指摘だ。


「今は、がんを見つけ次第なんでも治療してしまう時代になっている。どういうがんに対しても、手術や抗がん剤治療に意味があると言っている。では、本当にそうなのか、だれもわからなくなっている。僕はがんを自然に任せたらどうなるかを広く伝えて、人々の意識を改革したいと思っている」(近藤医師)


※週刊朝日2013年6月21日号、28日号から抜粋して再構成


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