◆ 先発陣を襲う不測の事態
ラストスパートへ、広島が目指すべき方向性はハッキリとした。
「いかにして打ち勝つか」を追い求める残り試合となりそうだ。
今季の開幕ダッシュを牽引した先発投手陣は、疲労の色を隠せない。
開幕投手の大瀬良大地が不調から抜け出せずに出場選手登録を抹消。前半戦でチームトップタイの8勝を挙げた床田寛樹は「右足関節骨折」。ドリュー・アンダーソンはコンディション不良で戦線から離脱した。
さらに、昨季最多勝を獲得した九里亜蓮、新型コロナ感染により一時離脱した遠藤淳志も本調子から遠のいている。自慢の先発陣に相次ぐ不測の事態は、打線一丸で補うしかない。
◆ マクブルームの離脱で狂った歯車
幸いにも、野手陣はベストメンバーがそろった。
チームは球宴を挟んで今季最長の7連敗を喫した。その期間に痛感させられたのは、“4番”の存在の大きさだった。
ライアン・マクブルームが、7月20日のPCR検査で新型コロナウイルスの陽性判定を受けて戦線を離脱。不在だった9試合は3勝6敗。2試合で零敗を喫するなど、打線がふるわない試合も目立った。
マクブルームは、離脱するまで打率.279で12本塁打、52打点。決して、圧倒的な数字を残していたわけではない。ただし、見た目の数字以上に4番の存在が打線に流れを生んでいた。
1番から野間峻祥、菊池涼介、秋山翔吾と並ぶ3人が出塁し、4番・5番を迎えるまでに得点圏に走者を進める形を目指してきた。
マクブルームの直後に坂倉将吾を固定できていたことも、中軸を機能させるポイントの一つだった。
それがマクブルームの離脱によって、坂倉に経験したことのない4番の重責を背負わせることになった。
坂倉が4番で出場した9試合は、打率.250(36−9)、3打点。不振とまでは言えないものの、打率3割前後を残す本来の姿を見せることはできなかった。
4番の不在は選手それぞれの役割を変化させ、調子を落とす先発投手陣を救うまでのつながりを生むことができなかった。
その中で、マクブルームが今月5日から復帰。体調不良により再度離脱するも、12日の巨人戦から先発復帰して、打線を本来の形に戻すことができた。
◆ 頼れる男も復帰
加えて、6月上旬から下半身のコンディション不良で離脱していた西川龍馬も帰ってきた。
再昇格後の出場8試合は打率.438(32−14)、9打点。実戦勘が不足する状況でも別格の数字を残している。
離脱前は3番で固定されていた打順は、再昇格直後に6番へ。12日の巨人戦からは5番に変更された。
西川の打順変更は、離脱前よりも打線に厚みが増したからに他ならない。
野間が1番から外せないほどの打力を見せ、新加入した秋山は3番として勝負強さを発揮。西川に得点源としての役割を与えることが可能となり、佐々岡監督も「(西川)龍馬もライアン(マクブルーム)も帰ってきて、野手陣がそろってきた」と新オーダーに手応えをつかんでいる。
ベストメンバーがそろったことで、1番から下位まで流れの途切れない形をつくることはできた。4年ぶりのクライマックス・シリーズ進出は、打線の底力にかかっている。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)