ゆるキャラブームから15年、アマビエに次ぐ「ミャクミャク様」が話題に…原点“怪奇”する令和の人気キャラ

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2022年08月17日 08:40  ORICON NEWS

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写真大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」(C)ORICON NewS inc.
大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」(C)ORICON NewS inc.
 2025年に開催される大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」が注目を浴び、先週末のコミケでも複数のコスプレ出現が話題に。早くも大阪万博を盛り上げる役割を十分に発揮している。前回の愛・地球博(2005)で採用された「モリゾー&キッコロ」のような愛らしさはないが、賛否を呼んでいるその“奇怪さ”こそが大きな反響を呼んでいる。思えば2020年には、妖怪・アマビエブームも巻き起こった。2000年代のゆるキャラブームが終焉を迎えた今、令和に求められる“キャラクター像”とは。

【画像】「ああ…ミャクミャク様じゃ…ミャクミャク様がきた…」15万いいね!を超えた自作画ツイート

■公式プロフは「正体は不明」なのに、瞬く間に“崇拝対象”となった「ミャクミャク様」

 大阪万博の公式キャラクターに選ばれた「ミャクミャク」。公式アカウントには「細胞と水がひとつになったことで生まれた、ふしぎな生き物」と説明がされており、赤いロゴマークと水の都・大阪から連想した青の体を持つ、見るからに“異形”の姿を持っている。

 しかもその赤い部分(目玉に見えるのは『細胞の核』)は、細胞が増殖したり分裂したりも可能で、青い体の部分は水のようにいろいろな形に変化(へんげ)が可能。“多様性”が表現されているが、今年3月にイラストが発表された時から、「かわいい」「インパクトがある」という声の一方で、「気持ち悪い」「怖い」といった声も多く寄せられていた。

 そして先月、名称が「ミャクミャク」に決定。見た目に負けず劣らずのインパクトに「かわいい」「子どもが泣きそう」と賛否が起こり、SNS上で一気に拡散。最初のうちは「ミャクミャクさん」「ミャクミャクくん」などと呼ばれていたが、いつの間にか「ミャクミャク様」と“様”付けされるようになり、何かの神や畏怖の対象として、ユーザーたちが崇め始める現象が起きた。

 さらには「ミャクミャク」の自作画投稿もブームに。これは、コロナ禍の2020年に大きなムーブメントをもたらした「アマビエブーム」にも通ずる。当時も、ステイホーム中に「役病退散」の願いを込め、親しみやすく描きやすい妖怪「アマビエ」のオリジナル漫画や動画が次々と投稿され、拡散されていた。

 アマビエも、ミャクミャク同様、いわゆる“ザ・可愛い”容姿ではない。また、本来アマビエは病の流行を予言はしていたとされるが、除災する妖怪ではない。しかし、ユーザーの独自の解釈のもと、個々のアレンジを加えた上で、爆発的に広まっていった。

 そしてミャクミャクも、公式は「正体は不明」と謳っているが、自然発生的に“土着性”、“怪異”、“信仰”の話が持ち上がり、独自の解釈がなされるようになっている。「カワイイ」にも「怖い」にも振れた自作イラストが投稿されている点でも、両者は共通している。

■ゲゲゲ、ジブリ、鬼滅… 江戸時代から続く“怪奇ブーム”の裏に変わらぬ日本人の性?

 アマビエブームに拍車をかけたのが、言わずと知れた妖怪漫画家・水木しげる氏だ。プロダクションが「水木の作品に描かれている」と言及し、さらなる話題を呼ぶことに。ほか、宮崎駿作品の『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』でも“怪異”の存在が姿を現すが、その怪奇性や奇妙さは強烈なインパクトを残すと共に、日本の土着信仰をも呼び覚まさせる。

 これは、「江戸時代から断続的に受け継がれてきた流れである」と話すのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。

「江戸時代半ば、今で言う“妖怪ブーム”が起こりました。中でも、鳥山石燕(せきえん)の妖怪画集『画図百鬼夜行』は非常に人気で、続刊も。これをきっかけに、多くの絵師がこぞって妖怪画を。ただ文化人類学者の小松和彦さんによれば、実はこの当時、江戸の文化人たちは妖怪の存在なぞ、すでに信じてなかったそうです。これは現代のアマビエブームも『ミャクミャク』も同様でしょう。信じてはないが、何かにすがりたかった。または、そんな存在があることを娯楽として面白がりたかった。その意味で、日本人は江戸時代から変わってない」

 さらにこの時代、「やまびこ」など、姿かたちがなかったものに姿を与えて妖怪化することも流行。これは、水木しげる氏の「子泣きじじい」や「砂かけばばあ」「ぬりかべ」「一反木綿」などが、昭和後期から平成時代にかけて爆発的人気を博したように、令和に誕生したオリジナルの“怪異”として、「ミャクミャク様」も似通った印象を受ける。

「水木氏の偉業の1つは、単に妖怪画を真似て書くのではなく、精密な背景に妖怪を描き出し、“もしこの妖怪が現れたら、こんなシチュエーションになるだろう”という生々しさを創り上げ、現代になじませたこと。おそらくこれが『妖怪ウォッチ』『鬼滅の刃』など、今も鬼・妖怪ものが受ける土壌となってつながっている。また、ここ数年のインターネットの盛り上がりの1つに、エジプト神話の“メジェド神”が挙げられる。単に頭から布をかぶっている、あまりにも子どもの絵のような簡素な姿であることを受け、『メジェド様』と面白がるブームが。これも『ミャクミャク』に“様”をつける楽しみにつながったようにも思います」(同氏)

■ゆるキャラの乱立化で訪れた“カワイイ”倦怠期… “怪奇性”が新たなインパクトに

 奇しくもアマビエブームが巻き起こった2020年、全国のゆるいマスコットキャラクターの頂点を決める『ゆるキャラグランプリ』が閉幕した。2007年、滋賀県彦根市の「ひこにゃん」を火付け役に、「くまモン」や「ふなっしー」など、数々の人気キャラが誕生。2011年開催の『第1回ゆるキャラグランプリ』で1位に輝いた「くまモン」の年間売上高は1700億円、累計売上高は1兆円に及ぶ。それまでのキャラクター産業は、ポケモン・サンリオ・ディズニーが席巻していたが、そこにゆるキャラブームが見事に新風を吹き込んだのだ。

 しかし、2016年から「地方創生推進交付金」として毎年2000億円の交付が開始されると、「くまモン」に次げとばかりに、全国各地でゆるキャラを開発し、地方PR動画を作る流れが加速した。その結果、全国で1700体以上のご当地キャラが生まれ、濫造・乱立状態に。やがて「税金の無駄遣い」といった声も上がるようになり、徐々に衰退。市民は「ゆる可愛い」に飽き飽きしていたのだ。

 “ゆるキャラ”の生みの親・みうらじゅんは、その定義を「(1)郷土愛に満ち溢れた強いメッセージ性があること。(2)立ち振る舞いが不安定かつユニークであること。(3)愛すべき、ゆるさ、を持ち合わせていること」としている。その不安定さやゆるさは、従来の人気キャラクターにはない要素であり、全国各地でブームを巻き起こした。

 しかし、今度はそのゆるさに倦怠期が訪れ、対極とも言えるアマビエやミャクミャクのような怪奇キャラが“新たなインパクト”として受け入れる土壌が出来上がっていたのではないだろうか。思えば、ゆるキャラブーム初期、奈良県の公式マスコットキャラクター「せんとくん」も「気持ち悪い」と物議を醸した。製作費に1000万投じられたことに対しても批判が殺到し、炎上。しかしSNSで大きく拡散された結果、それが大きな宣伝となり、話題を呼ぶとともに全国的な人気を獲得してしまった。

 ミャクミャクも同様、「カワイイ」と「気持ち悪い」の両意見が寄せられているというのは、大いなる拡散力を秘めている。どちらを感じた人も、つい拡散したくなる容姿だからだ。水木しげる作品が絶大な人気を博したように、“怪奇性”は日本人を惹きつける強い吸引力を持つ。それがゆるキャラブームの終焉を経た今、上手く時代にフィットしたミャクミャクは、2025年まで大阪・関西万博の宣伝隊長として、“この世にお楽しめあそばせる”存在として活躍するだろう。


(文/西島亨)

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