喫煙者、非喫煙者の生存曲線に差がないケース…和田秀樹“自分勝手な生き方”提唱

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2022年08月17日 10:20  AERA dot.

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写真和田秀樹(わだ・ひでき)/ 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。同大医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。30年以上、高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など著書多数。また、映画監督としても活躍し、「受験のシンデレラ」や「東京ワイン会ピープル」などでメガホンを取った。教育分野の論客としても活躍している。(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
和田秀樹(わだ・ひでき)/ 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。同大医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。30年以上、高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など著書多数。また、映画監督としても活躍し、「受験のシンデレラ」や「東京ワイン会ピープル」などでメガホンを取った。教育分野の論客としても活躍している。(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
 精神科医として、30年以上、高齢者医療の現場に携わる和田秀樹さん。作家・林真理子さんとの対談では、高齢者の人生について、語り合いました。


【写真】和田秀樹さんと林真理子さんとのツーショットはこちら
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林:和田先生は、「週刊和田」って言われるぐらい、週単位で本をお出しです。昨年出した『70歳が老化の分かれ道』がベストセラーになって、今年も『80歳の壁』が35万部を超える(対談時)大ヒットだそうですね。


和田:初めての大ベストセラーで、「本が売れるってこういうことなんだ」と思って、林さんの気分にちょっとだけ近づきました(笑)。


林:とんでもない。この本がヒットした要因って、「80歳になっても好きなように生きなさい」というアグレッシブな生き方の提案ですよね。いままでこういう高齢者向けの本って「愛される年寄りになりましょう」みたいなことが書いてあったけど、先生の本は「愛されなくてもいい。自分勝手に生きましょう」と書いてあって、それが年配の人の心を打ったと思うんです。「たばこはやめなくてもいい」とか衝撃的なこともおっしゃってますね。


和田:東京の杉並に日本最初の高齢者専門の総合病院である浴風会病院というのがあって、僕はそこに1988年12月から勤めたんです。もともと関東大震災で家族が亡くなったお年寄り用の養老院だったところで、そこに入居している人を対象に、たばこを吸ってる人と吸ってない人の生存曲線を追いかけると、まったく差がなかったというデータがあったんです。その考察を読むと、「確かにたばこは体に悪いが、そういう人はホームに入る前に亡くなっている。ホームに入るまで生き延びた人に関してはそうとも言えないようだ」というふうに書いてあるんです。


林:喫煙者にとってはうれしいデータですね。


和田:ある年齢まで生き延びたら、食べたいものを食べればいいし、お酒も飲みたければ飲んでいい。余生のつもりでいればいいと思うんですね。大規模調査がないから、本当のところがわからないんですよ。だったら自分が生きたいように生きたほうがいいと思うんです。



林:ええ。


和田:いまのお年寄りは、ただただ長生きするよりも、元気で長生きしたいんですが、医者が言ってることを聞いていても、あんまり元気で長生きできない。たとえば、血圧や血糖値でも、だんだん年とってくると血管が厚くなっちゃうんで、むしろちょっと高めのほうが頭がシャキッとするんですね。


林:先生、血圧200ぐらいなんですって?


和田:僕、200を超えたのに放っといて、それで心肥大になっちゃったんです。血圧が高いと心臓のポンプが激しく動いてるから、心臓の筋肉が厚くなっちゃうんですね。それで正常値の140まで一回下げたら、体がだるくてしょうがないので、いま170ぐらいにコントロールしてるんです。


林:でも、テレビは「130を超えたら」とか言うじゃないですか。


和田:世界基準はそうなってきてるんですよ。でも、僕は高齢者を診てて、血圧はそんなに下げなくてもいいんじゃないかと思ってるんです。


林:ほんとにそうなんですか?


和田:昔は死因のトップが脳卒中で、そのころは確かに血圧が140や150の人の血管が破れてたんです。ところが、いまはクモ膜下出血でもない限り脳内出血はほとんどないんですよ。昔の人は良質なタンパク質をとってなかったから血管が破れやすかった。いまの人はちゃんととってるから、昔と比べると、血管が破れる可能性は低いんです。確かに動脈硬化は進んじゃうかもしれないんだけど、これだって年をとるとみんなあるもので、昔ほど血圧に関してナーバスになる必要はないと思っています。


林:先生は前から「車の免許証も返納する必要はない。若い人は老人の何倍も事故を起こしてるのに、たまに老人が事故を起こすと、なぜそんなに騒ぐんだ」とおっしゃってますよね。


和田:日本は車の死亡事故がすごく減って、「交通戦争」と言われたころは年間1万6千人を超える交通事故死があったのに、去年なんか2600人ぐらいなんです。それから、75歳以上のドライバーは、死亡事故の4割が単独事故なんですよ。




林:自分でぶつかって死んでるんですね。


和田:そう。人をはねた死亡事故は2割。ところが、75歳未満だと単独事故が2割くらいで、人をはねた死亡事故が4割なんです。


林:なるほど、そうなんですか。


和田:もう一つ大事なことは、高齢者は動体視力が落ちて、ブレーキを踏む反応時間も遅いことはわかっていて、急に飛び出してきた子どもをよけられない可能性はあるんですけど、そういう事故は実際は少ないんです。僕も運転してるからわかるけど、高齢者マークをつけている車の多くってゆっくり走っている。報道されるほとんどは暴走とか逆走の事故なんです。


林:はい。


和田:ふだんおとなしい運転をしてる人が暴走するというのは、頭がぼんやりしてたからで、これは高齢者にわりと起こりやすいことなんです。血圧や血糖値を下げすぎちゃったり、塩分を控えすぎて低ナトリウム血症になったりすると意識障害を起こしやすいんですね。そうした点については注意したほうがいい。


林:先生はこの本の中で、「いま日本には600万人の認知症患者がいて、国民の20人に1人は認知症だ」とお書きになっていますが、年をとったらある程度は仕方がないものなんですか。


和田:いまの医学ではそうですね。僕が勤めていた浴風会病院では、毎年100例ぐらいの高齢者を解剖してたんですが、病理の先生は「85歳を超えてアルツハイマーがない人はいない」「80歳を超えて動脈硬化が起こっていない人はいない」と言うんです。つまり加齢による老化現象ですから、「ちょっともの忘れはあるけど、上手に生きましょう」「動脈硬化があるんだから、血圧や血糖値はむしろ高めのほうがいいかもしれない」と、そういう生き方に変えていったほうがいいと思うんです。


林:なるほどね。


和田:僕はいまでも脳の写真を年間100例ぐらい見てるんですけど、脳がすごく縮んでるのにしっかりした人もいれば、大して縮んでないのにボケボケの人もいるんですよ。だからやはり頭は使ってるほうがいいと思うんです。



林:はい、これからもできる限り頭は使うことにします。


和田:認知症そのものは、軽いうちだったら何でもできるんです。認知症の人にとって大事なのは、新しいことを覚えるのは無理なんだけど、いまできていることを減らさないことです。5年前10年前にしゃべったことは覚えてたりするので、たとえばもの忘れが激しい高齢の学者でも、講演はできるんですよ。講演をすることが認知症の進行を遅らせると思うんです。それから、いま料理ができるんだったら料理を続けさせる。アルツハイマーの変化がある以上、なるべく続けさせる。


林:はい。


和田:たとえば、レーガンとサッチャーは、大統領や首相をやめてから5年くらいして、「自分はアルツハイマーだ」と国民の前で告白しましたけど、その記者会見を見ると、完全に話が通じなくなってるんですよ。僕の実感としては、おそらく在任中だった5年前にももの忘れが始まってたはずなんです。


林:軽い認知症でも大統領や首相を務めることができるんですね。一方で、このあいだ96歳のエリザベス女王の映像が流れましたけど、ユーモアもあってすごくお元気そうでした。


和田:エリザベス女王も、もの忘れはたぶんあると思います。ただ、認知症の場合、もの忘れがあっても話は通じます。ユーモアが保たれてるということは、前頭葉機能が比較的保たれてるからで、意欲もあって、認知症が進みにくいタイプだと思います。当たり前ですけど、認知症という病気は誰でもなるんで、平等な病気なんですよ。ただ、同じぐらいの認知症でも、現役で仕事をしている人と、ふだん家に閉じこもってる人とでは、前者のほうが明らかに軽く見えるはずです。


(構成/本誌・唐澤俊介 編集協力/一木俊雄)

※週刊朝日  2022年8月19・26日合併号より抜粋


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