「呼吸するだけで痛い」帯状疱疹は治療の遅れに注意 虫刺されと勘違いも

279

2022年08月17日 17:10  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
 患者数が増加している帯状疱疹。新型コロナウイルスの感染拡大以降、さらに増えて静かに流行中という指摘もある。特に問題なのは、発疹が治ったあとも、長期にわたって痛みに悩まされるケースがあることだ。


【図表】帯状疱疹の発症部位はこちら
*  *  *


「あのときは仕事を辞めるつもりでした」と話す横浜市在住の中島正雄さん(67歳・仮名)。今年2月に帯状疱疹を発症し、ベッドから起き上がれないほどの痛みに苦しんだ。最初に右側の腰に痛みを感じたのは、ゴルフに行った翌日だった。


「アップダウンのあるコースを走ったので、そのせいかと思って貼り薬を買いました。そのとき薬剤師さんに『皮膚がかぶれるかもしれない』と言われたんです。翌日から本当にかぶれてきたので、今度はかぶれの薬を買って塗ったのですが、全然よくならない。痛みも強くなっていきました」


 中島さんが皮膚科を受診したのは、最初に腰痛を感じてから1週間後。そこで帯状疱疹と診断された。


 帯状疱疹は、からだに帯状の発疹が出現する病気で、発疹が出る数日前から痛みを感じる。原因は「水痘・帯状疱疹ウイルス」の感染で、10歳までに感染することが多く、初めて感染したときには水ぼうそうとして発症する。水ぼうそうが治ったあともウイルスは体内に潜伏し、何らかの原因で再活性化すると、帯状疱疹を発症する。


 水ぼうそうにかかったことがある人は、誰でも帯状疱疹になる可能性があるが、リスクが高いのは免疫力が低下している高齢者や抗がん剤治療中の人、関節リウマチなどの膠原病で免疫抑制剤を使用している人だ。過労やストレスが引き金になることもある。


 治療の中心は、抗ウイルス薬(「アメナメビル」など)と痛み止め(「アセトアミノフェン」や「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」)だ。抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を防ぐ作用があるが、現時点で活性化しているウイルスを抑えるわけではない。できるだけ早く服用し、新たにウイルスがつくられるのを抑え込むことが重症化を防ぐカギとなる。理想は発疹が出て3日以内の服用だ。




 中島さんは、抗ウイルス薬と痛み止めを1週間服用したところ、発疹は徐々に改善した。問題はここからだ。翌週になると痛みが強くなり、話すのも呼吸をするのもつらく、食事がのどを通らない。寝つけず、ようやく眠れても2時間くらい経つと目覚めてしまう。そんな日々が続いた。


「最初の痛みに比べると10倍増しの感覚です。洋服が触れるだけでもピリピリして痛く、下着はつけられませんでした」


 実は中島さんは、皮膚科を受診したときに医師から「(抗ウイルス薬が効く)ぎりぎりのタイミングですね。万が一痛みが残ったらペインクリニックを受診してください」と言われていた。そこで近くのペインクリニックを受診し、神経ブロック(硬膜外麻酔)と神経障害性疼痛治療薬「ミロガバリン」による治療を受けた。週に1回通院し、1カ月ほど経つと徐々に痛みが軽くなり、2カ月後には出社できる日も増えた。


「帯状疱疹後神経痛と診断され、ネットで調べると、10年苦しんだ人もいて不安になりました。ただ、神経ブロックの注射を打ったあとは半日くらい痛みから解放されるので、少しずつ気は楽になっていきました」


 3カ月後には痛みがなくなって完全に職場に復帰し、現在は趣味のゴルフも再開している。


 発疹が治ったあとに続く痛みは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、帯状疱疹になった人のうち、50歳以上の約2割が移行すると言われている。移行しやすいのは、高齢者や帯状疱疹発症時の発疹や痛みが重症だった人だ。


 帯状疱疹の痛みは、主に炎症によるものだが、帯状疱疹後神経痛の痛みは、神経を損傷したことによるもの。愛知医科大学病院皮膚科教授の渡辺大輔医師はこう話す。


「帯状疱疹の治療が遅れると、神経の損傷が悪化し、痛みが残りやすくなります。中島さんのように発疹が出てもかぶれや虫刺されだと勘違いするのはよくあるケースです。かぶれなどの場合、かゆみが強いことが多いですが、自分で判断するのは難しいので、帯状疱疹の可能性も考え、早めに皮膚科を受診してください」




 帯状疱疹後神経痛の場合、アセトアミノフェンなどの痛み止めは効果を期待できない。治療は神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリン)、抗うつ薬(三環系抗うつ薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、神経ブロックが中心となる。効果が出なければオピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)を使用することもある。


 しかし、誰にでも効く薬はない。副作用もあるため、症状やからだの状態に合わせて薬を選択していく。


 帯状疱疹は、80歳までに3人に1人はかかるとされる身近な病気だ。最近はさらに急増していることが話題になっている。


 新型コロナウイルスの感染が、帯状疱疹の発症因子になるという米国のデータがあるほか、コロナワクチンとの関連も指摘されている。


「帯状疱疹は、コロナが流行する前から増加傾向にあります。特に20〜40代の若い世代で増えています。一因は水ぼうそうにかかる子どもが激減したことです」


 2014年から1〜2歳児を対象に水痘ワクチンの定期接種が開始された。水ぼうそうの患者が減ると、帯状疱疹の患者は増える。大人は水ぼうそうの子どもと接触することで水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫が増強し、帯状疱疹の発症を抑えられるためだ。


 帯状疱疹は、ワクチンによっても予防できる。50歳以上を対象に16年から「水痘ワクチン」、20年から「不活化ワクチン」が接種可能だ。


 この2種類はどう違うのか。帯状疱疹の発症、帯状疱疹後神経痛への移行ともに不活化ワクチンのほうが予防効果は高い。免疫抑制剤や抗がん剤を使用している人でも、接種できる。


 一方で費用が高く、迷うところだ。


「高齢者や基礎疾患がある人は、水痘ワクチンだと免疫が上がり切らないので、不活化をおすすめします」(渡辺医師)


 帯状疱疹は命に関わる病気ではないが、長く続く痛みは人生の楽しみを奪う。年を重ねたあとの日々を楽しく過ごすためにも、予防について考えたい。(ライター・中寺暁子)

※週刊朝日  2022年8月19・26日合併号


このニュースに関するつぶやき

  • 相当、辛いようですね。数年前に息子がなりました。最初わからなくて整形外科に行って内科に行くように言われそこで皮膚科を紹介と診断にも手間が掛って丸一日でそれも大変でした。
    • イイネ!32
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(156件)

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定