東大、コロナ感染での試験欠席に厳しい「救済策」 学生から「留年する」「学費が……」の悲痛の声

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2022年08月18日 08:00  AERA dot.

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写真東大・安田講堂
東大・安田講堂
 東大のコロナ対応を巡り、学生から悲痛な声が上がっている。大学側は「コロナ感染の虚偽申請」があることを理由に、感染して試験を欠席した学生のための追試を廃止した。その結果、その後の進路に大きく影響しそうな学生が出ているという。日本のトップの大学で何が起きているのか。


【学生自治会が作った、「コロナ欠席」の代替措置を訴えるビラはこちら】
「進路に影響が出てしまう。本当にショックです」


 こう話すのは、東京大学教養学部(文科3類)の女子学生Aさんだ。Aさんは7月の定期試験の期間中に、コロナに感染した。39度以上の高熱が続き、ひどい倦怠(けんたい)感もあったという。自宅療養の期間中に予定されていた試験は四つ。すべて欠席することになった。


 教養学部ではこれまで、コロナの感染者、濃厚接触者、疑似症がある学生たちについて、定期試験が受験できない場合、全ての科目で100点満点の代替措置(追試)を行ってきた。


 しかし、6月6日、教養学部はコロナ感染に関する追試を一部の科目以外は廃止、追試がある科目でも75点を上限とすることになった。


 これは定期試験を受けられなかった1、2年生にとっては、その後の進路にかかわるのだ。大半の東大生は1・2年次は教養学部に所属し、3年次に法学部、経済学部、理工学部など各学部に進学する。希望の学部・学科に行くためには、1・2年次の成績が重要になってくるのだ。


 Aさんは欠席した4科目のうち、2科目は追試があったが、もう2科目については追試がなかった。なんとか1科目については特別に受けられたが、もう1科目については「学部から認められていない」として断られたという。Aさんはこう語る。


「追試が受けられた2科目についてはどんなに頑張っても通常の75%しか点数が取れない。もう一つの科目は、追試がないので0点。目指していた進路は厳しいかなと思い始めました。コロナの高熱でうなされているときも『進路はどうしよう』『一生懸命勉強してきたのに』ってずっと考えていました。今後の計画が狂ってきている」



 なぜ感染者らに対する追試を廃止したのか。東大に尋ねると、


「進学選択制度において学生間の成績の公平性を厳密に担保する必要がある」


 と強調する。


 教養学部が在学生向けに出した通知によると、廃止した最も大きな理由として、<(コロナの)虚偽申請をした学生が学修時間をより多く確保した上で、通常の定期試験同様に100点満点で評価される機会を得る><この状況は、進学選択制度の前提となる成績の公平性を確保する上で大きな課題である>と説明している。


 教養学部のこの対応によって、今後の進路に何かしらの影響が出るとみられる学生は、Aさんだけではない。


 東京大学教養学部学生自治会の調査によると、今回の定期試験の追試がなくなった学生が、少なくとも27人確認できた。21人がコロナに感染し、5人が濃厚接触者、1人は疑似症状のため欠席。そのうち「進路選択に影響が出るだろう」と答えたのが12人、そのうち2人は「留年するだろう」と答えた。


 学生自治会にもこんな声が届いていた。


 文科3類・2年生<(試験当日に)コロナか風邪か判断がつかず迷ったが、症状がある場合は出席を控えるよう大学から要請されており、公共交通機関の利用は控えるべきだと判断し、試験を欠席した。二つの教科について成績は0点。人気の学科に進むことが難しくなり、他の進路を選ばざるを得なくなってしまった>


 理科1類・1年生<家族を通じてコロナに感染。人気の高い学科にいくことを念頭に、高い平均点を取るために努力していたが、5科目が上限75点の追試になってしまい、80点台などの平均点を目指すのは非常に難しくなった。自主留年して、来年度に100点を上限とした試験に臨むこともいとわないとの気持ちだったが、家庭の事情などで授業料のことを考えると……>


 学生自治会長の長谷川恭平さんは「留年したり、成績が悪くなったりすれば、奨学金を打ち切られる学生もいる。問題は深刻だ」と訴える。




 先のAさんは学部の対応にこう疑問を投げかける。


「大学は虚偽申請する学生がいることで成績が不公平になるといっていますが、いったいどのくらいの虚偽申請があったのでしょうか。コロナ感染者らに対する追試がなくなったことで、不公平な成績をつけられた学生のほうが多いのではないかと思います」


 ほかにもコロナによる欠席で、問題が起きているケースがある。


「コロナに感染したため、欠席した授業の代替措置をお願いしましたが、冷たくあしらわれました。このままでは留年です」


 こう話すのは教養学部2年(理科3類)の杉浦蒼大さん(19)だ。


 春学期の必修授業「基礎生命科学実験」の成績が「不可」に。同授業の次の開講は来年度になる。秋からの医学部の授業が始まる予定だったが、この「不可」によって受けることができなくなった。来年の医学部への進学もできず、留年が決まった形だ。


 杉浦さんは今年5月にコロナに感染し、その影響で2回の授業に出席できなかった。2回目の欠席をした授業の翌日、症状が落ち着いてきたこともあり、コロナ感染による欠席をメールで教員に申し出た。


 すると、1回目の欠席については授業日から1週間以上経っていたため、教員から「経過日数的に対応できません」とされ、2回目の欠席については補講が認められ、出席の扱いとなった。


 最終的に全6回の授業のうち、欠席は計2回(うちコロナ以外の欠席が1回)、授業後に毎回出される課題は5回提出した(うち2回は遅れて提出)。結果、成績は「不可」に。


 杉浦さんはコロナによる1回目の欠席が成績に響いたのではないかと思い、改めてコロナ感染であったことを説明し、教員や学部に確認を求めた。


 学部側からの回答は、


・授業への出席だけではなく、毎回の提出課題の内容が重要視される。


・杉浦さんの提出課題の評価には低い評点しか与えられなかった。


・課題の提出期限を過ぎて提出することなども減点の対象となっており、そういったことが複数回確認されている。


・その結果、仮に1回目が出席で、課題が満点だったとしても、授業全体の成績評価は不可だった。


 などとする内容だった。



 杉浦さんは、欠席の連絡について、


「授業前に欠席連絡をしないと原則、補講は受けられないルールでしたが、コロナ感染者に関しては後日の欠席連絡でも補講を実施していました。ただ、その連絡の期日は授業ガイダンスの資料などには明記されていませんでした。期日がしっかりと書かれていれば、感染してかなり苦しい状況でしたが、その期日内に何とか連絡はしていたかもしれません」


 と語った。そして、課題の評価についても、


「提出課題の評価が低いということでしたが、納得できないので、コロナ感染時の課題を含めどのような採点が行われたのか教えてほしいと頼みましたが、教えてもらえませんでした。これでは何がダメだったのかわかりません」


 と疑問を呈した。


 教養学部に、学生らが持つ疑問について質問した。


 虚偽申請がこれまでどのくらいあったかについては、


<情報を公開しておりませんので、お答え致しかねます>


 との回答だった。


 欠席の連絡が1週間以上ないと補講が受けられないことが明記されていたかどうかについては、


<補遺(全受講生が閲覧する資料)3ページの【成績評価など】に、「体調不良などの場合は、必ず実験担当教員に申告し、オンライン課題を希望する場合は受講希望日を1週間以内に上記フォーム(欠席連絡フォーム)から連絡すること」と記載しています>


 などと回答した。明言はしなかったが、補講が受けられないとまでは書かれていないようだ。


 提出した課題の採点状況を学生に伝えない理由に関しては、


<授業ごとに授業内容や試験・レポート内容を踏まえて、可能かつ適切な範囲で、学生の学習に資するかたちでフィードバックを行うことを推奨していますが、採点結果を公表することを必須とはしていません>


 とのこと。



 文部科学省は各大学などに「新型コロナの影響下にある学生に寄り添った対応」を求めている。コロナというこれまでに経験したことのない事態で、学生の不安を取り除き、学びを確保することが社会的な要請だ。東大と学生の間に大きな溝が生まれている。


(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)


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  • コロナ陽性判明した人でも、損したくないから強引に試験や仕事に出て感染拡大になりそうだよね。
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