「菊花賞馬にフロックなし」 レジェンドアナウンサー・杉本清さんが語る三冠の締め

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2022年08月19日 12:10  AERA dot.

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写真競馬界のレジェンドアナウンサー、杉本清さん
競馬界のレジェンドアナウンサー、杉本清さん
 もはやGIIに格下げ!?


 そう競馬ファンの間でささやかれる菊花賞のレベル低下問題。三冠レースの掉尾(ちょうび)を飾る重要な一戦だが、3000mという長距離が敬遠され、近年は有力馬の出走回避が相次ぐ。寂しい状況だが、レジェンドアナウンサーの杉本清さん(85)は、菊花賞の重みと夏の上がり馬への期待を語る。


【写真】菊花賞を制したタイトルホルダーはこちら
 杉本さんは数々の名実況で知られる元関西テレビのアナウンサー。菊花賞に限っても、「大地が弾んでミスターシービーだ」(1983年)、「菊の季節に桜が満開」(87年。サクラスターオー)、「弟は大丈夫だ。弟は大丈夫だ。弟は大丈夫だ」(94年。ナリタブライアン)といった名言を残し、ファンの心をわしづかみにしてきた。


「ダービーの実況も、と頼まれましたが、(関東の)フジテレビのアナウンサーを差し置いて、と遠慮しました。それに、関西には菊花賞があるという気持ちもありましたから」。94年の定年退職後もフリーの立場で実況を担当してきた。


「少しずつ後輩に任せるようにしていったんですが、宝塚記念の実況は誰もやりたがらなかったし(笑)、菊花賞だけは絶対に譲らないという気持ちでした」


 杉本さんにとってそれだけ思い入れの強いビッグレースだが、最近は春に活躍した実績馬の回避が目につく。


 昨年はダービー1、2着馬がともに出馬せず、それぞれジャパンカップ(2400m)、天皇賞秋(2000m)に出走した。今年の菊花賞は10月23日に阪神競馬場で行われるが、ダービー馬ドウデュースはフランスの凱旋門賞(2400m)に挑戦、皐月賞馬ジオグリフは天皇賞(秋)の出走を選択した。


「世界の競馬の流れからいっても、中距離が重視されてきています」と前置きしつつも、菊花賞が重要な理由を挙げる。


「世界の傾向はそうだけど、逆にそうだからこそ、日本では3000mのGIを三冠の締めとして残すのが大事なんです。2400mで強い馬が3000mでも強いかと言うと、これは走ってみないと分からない。でも3000mで強い競馬ができる馬は、2400mでも強いですよ。菊花賞馬にフロックなし。僕の持論です。菊花賞を勝つことで一皮むけて大きく成長する馬もいます」




 その代表例として名前を挙げるのは、タイトルホルダーとキタサンブラックだ。


 昨年の皐月賞とダービーでそれぞれ2着、6着だったタイトルホルダーは、菊花賞を逃げ切ってGI初勝利。これで開花し、今年は天皇賞春と宝塚記念をともに圧勝。押しも押されもせぬ日本最強馬として凱旋門賞に臨む。


 キタサンブラックは2015年の皐月賞で3着に入ったものの、ダービーでは14着惨敗。しかし菊花賞で優勝するや才能が目覚め、GI7勝の偉業を達成した。


「菊花賞で勝ってから、次の年の凱旋門賞に挑戦すればいい。日本の3000mで勝つだけのスピードとパワーがないと、ヨーロッパの2400mで勝負できません。菊花賞に勝って三冠馬になったオルフェーブルだからこそ、凱旋門賞では2年連続2着というレースができたんです。私は凱旋門賞でのタイトルホルダーの活躍を楽しみにしています。その結果いかんでは、菊花賞が見直されるじゃないですかね」


 杉本さんが初めて菊花賞を実況したのは、アカネテンリュウが勝った1969年だ。アカネテンリュウは夏に急成長し、当時「戦後最大の上がり馬」と称されたという。


「71年のニホンピロムーテーのこともよく覚えています。ダービーは8着でしたが、夏に函館競馬場での青函ステークスで良い走りをしたので、この馬は強いぞというイメージを持ちました。菊花賞では2コーナーから先頭に立って逃げ切りました」


 このように夏に力をつけた馬の活躍を楽しむのも、菊花賞の醍醐味である。


 ファンの記憶に残る「メジロでもマックイーンの方だ〜」と実況したのは、90年のこと。優勝したメジロマックイーンは、春の2冠には出走すらかなわなかった。その年の菊花賞での一番人気は、ダービー2着のメジロライアン。


「メジロ牧場の方も、ライアンに期待していたんですよ。ライアンは自分の牧場で生産した馬、マックイーンは別の牧場で生産した馬ということもありましたし。だから騎手の勝負服も違った。ライアンは袖が白に緑の縦じま、マックイーンは袖が緑1色でした。私も、前走で3000mの嵐山ステークスを勝ったとはいえ、まさかマックイーンが勝つとは思っていなくてビックリ。実況では“平凡な言葉”が出てしまいました」


 マックイーン同様、春2冠に出走できなかったものの菊花賞で勝って開花し、その後GIで勝ち星を重ねた馬は少なくない。グリーングラス(76年、GI3勝)▽メジロデュレン(86年、GI2勝)▽スーパークリーク(88年、GI3勝)▽マヤノトップガン(95年、GI4勝)▽マンハッタンカフェ(2001年、GI3勝)▽ヒシミラクル(02年、GI3勝)▽デルタブルース(04年、海外含めGI2勝)▽フィエールマン(18年、GI3勝)といった馬たちだ。


「ひと夏を越して強くなる馬がいる」


 杉本さんの言葉を信じて、夏競馬に注目したい。


(本誌・菊地武顕)


※週刊朝日オンライン限定記事


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  • ダービーは同日にゴルフのギャラントーナメントがあるから無理だっての。関テレ定年間近までダービーは無縁だったのよ。
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