舌の側面のできものは「舌がん」の可能性 口内炎と違ってふくらみがあれば注意

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2022年08月20日 08:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
口腔がんの中で最も発症頻度が高い舌がん。ステージIの早期であれば5年生存率は90%以上で、手術後も舌の機能を温存できる。また、大きさなどの条件によっては放射線治療が選択できる場合もある。


【イラスト図解】舌がんのできやすい場所と症状はこちら
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「舌の側面に口内炎ができたと思っていたけど、2週間以上治らない」「舌に生じたできものが大きくなっていく」……こうした場合に疑われる病気の一つが、舌がんだ。口の中にできる口腔がんの一つで、口腔がん全体の半数以上を占める。


 特に舌の側面(舌縁)にできやすく、上側(舌背)にできることはまれだ。舌の粘膜が深くえぐれたり、盛り上がったりするほか、白色に変化することもある。進行すると、話す、かむ、のみ込む、口を開くといった口腔の機能に障害が出る。


 一般的な口内炎(アフタ性口内炎)と違って、ふくらみがあれば注意が必要だ。九州大学病院顎顔面口腔外科教授の中村誠司歯科医師はこう話す。


「口内炎がなかなか治らないと訴えて受診した患者さんを診るときは、まず指で患部に触れます。ポイントはかたいしこりに触れるかどうか。しこりがあれば、がんを疑い、次の検査に進みます」


 がんかどうかを確定するためには、組織を採取して顕微鏡で調べる生検が必要だ。しかし、病変の一部を切除する際にがん細胞が血中に流れる危険がある。


「最近は、表面をブラシなどでこすりとるだけで検査できる細胞診の精度が上がっています。臨床的にほぼ確実であれば、患者さんの同意を得たうえで、生検をせずに治療に進む場合も増えています」(中村歯科医師)


 がんと診断されたら、CT検査やMRI検査、超音波検査で、進行の程度を調べる。進行度は、がんの最大径や深さ、リンパ節などへの転移の有無によって決まる。早期のI期であれば、5年生存率は、90%以上だ。


■半分以上の切除では舌を再建する


 治療の基本は、手術でがんを切除することだ。切除範囲は、術後の舌の機能や再建するかどうかといったことを左右する重要なポイントとなる。




 腫瘍(原発巣)から1センチ以上の「安全域」を含めた部分を切除するのが、基準となる。境界が不明瞭で、がんが想定以上に広がっている可能性があるためだ。横への広がりだけではなく、深さの見極めが重要になる。


 切除範囲が舌の半分に満たない「舌部分切除術」であれば、術後の話す、かみくだく、のみ込むといった機能に大きな支障はない。電話など表情や口の動きが相手に見えない会話で早口に話すと、聞き返されることがあるかもしれない程度だ。


 一方、舌の半分(舌半側切除術)、もしくはそれ以上を切除する(舌亜全摘術、舌全摘術)場合、一般的に再建手術をおこなう。舌半側切除術と舌亜全摘術はさらに前方約3分の2の「舌可動部」だけを切除する場合と後方約3分の1の「舌根」を含めて切除する場合がある。


 再建は腕、太もも、おなかなどから採取した皮膚や皮下脂肪、筋肉に血管をつけた組織を舌に移植する。部分切除だけの場合、手術時間は1時間程度だが、再建する場合は8時間以上かかる。近年血管をつなぐ必要がある再建手術は形成外科医が担うことが多い。


 再建してもその部分が舌の機能をもつわけではない。なぜ再建が必要なのか。国立がん研究センター中央病院頭頸部外科長の吉本世一医師は、こう話す。


「舌がんは、首のリンパ節に転移しやすく、特に舌の半分以上を切除する場合は、リンパ節も切除する『頸部郭清術』が必要です。すると、口から首にかけて大きな穴が開き、食べものや雑菌が首にもれてしまうので、穴をふさぐためにも再建が必要なのです」


 頸部郭清術は、リンパ節転移が認められない早期でも予防的に実施する場合がある。リンパ節を切除すると、首に傷が残るほか、術後一時的にむくみや肩こりといった合併症が出ることがある。


 予防的な頸部郭清術については、明確な基準がなく、医療機関によって差があった。このため、現在は予防郭清についての大規模な比較試験が実施されている。




■早期は放射線治療も選択肢の一つに


 早期でリンパ節転移が認められず、腫瘍の大きさが4センチを超えないといった条件を満たせば、根治を目的とする放射線治療も選択肢となる。「小線源療法」といって、がん組織とその周辺に放射線を発する針などを刺し、内側からがんに照射する。


 舌の機能を温存できるが、医療従事者側の被ばくのリスクといった問題から、実施している医療機関は限られている。


「部分切除の場合、発音がやや悪くなることがあるので、アナウンサーなど正しい発音をおこなうことが不可欠な職業の人にとっては、小線源治療のメリットは大きいでしょう。ただし、治療後長い年月が経つと、舌が萎縮してきて部分切除した場合と変わらない状態になりやすいということも理解しておく必要があります」(吉本医師)


 リンパ節を残すので、治療後はより注意して経過をみる必要がある。


 転移がリンパ節の外にまで広がっている場合は、術後の追加治療として、抗がん剤併用の放射線治療を実施する。


 舌がんの再発は、治療後1〜2年の比較的早い時期に起こる。遠隔転移や再発がんには、近年、薬物治療の選択肢が増え、抗がん剤に加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬も使用できる。これらの薬剤は効果が出れば、以前よりも生存期間の延長が期待できる。


「頻度は少ないのですが免疫に関連する重大な副作用が出ることもあるので、薬物療法の経験が多い医療機関で治療を受けるのが望ましいでしょう」(同)


(文・中寺暁子)


※週刊朝日2022年8月19−26日号より


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