アットホームな『井端塾』、子どもへの指導は段階を踏んで、根気強く

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2022年09月02日 20:04  ベースボールキング

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仙台育英が東北勢として悲願の甲子園初優勝を決めた8月22日、東京の下町では未来の高校球児たちが『井端塾』で一生懸命に汗を流していました。井端塾とは中日、巨人で活躍した井端弘和さんと社会人野球、NTT東日本の元監督で井端さんの大学時代の盟友でもある飯塚智広さんによる野球塾。厳しい野球の世界を知っている二人は子ども達にどんな指導を行っているのでしょうか? 井端塾を尋ねてみました。



子ども達に伝えたい体の使い方
井端塾は毎回月曜日(月3回)に東京都足立区にあるフィールドフォースパーク1で開催されている。コースは幼児から低学年を対象にした「ジュニアクラス」、小学4年から中学生を対象にした「軟式クラス」と「硬式クラス」の3クラス。「バッティングデー」「守備デー」など、1つのメニューに特化した練習を行う回もあるが、基本的には全クラス通じて捕る、投げる、打つの基本的な練習を毎回行っている。井端さんは特別な練習を行うのではなく、こういった基本的な練習を通じて体の使い方を子ども達に教えたいと話す。



「上手い子も下手な子も、力のある子もない子も、個人差はあっても僕は同じことを言っています。それは体の使い方、動かし方についてです。(ボールに)どうやって力を伝えていくのか? 力ばかりに頼っていては後々苦しくなりますから。体の小さい子には『まだまだ力がないよ』ということを伝え、逆に体が大きくて力のある子には『(野球は)力じゃないよ』ということを伝えています」



実際、この日の低学年クラスの内野ノックではショートからファーストへ強いワンバウンドを投げる練習が行われていた。その意図を井端さんはこう話す。
「低学年の子はワンバウンドだと強いボールを投げられるんですけど、ノーバウンドだと体がまだ緩いので強いボールを投げられないんです。だからまずはワンバウンドで強いボールを投げる練習を行い、途中からワンバウンドの送球とノーバウンドの送球を交互に行っています。こうやって子どもたちが体の使い方、力の伝え方を何となくでもいいので分かるといいなと思うんです。ちょっとずつそれが伝わってきているかなと感じています」


「子どもに教えるのが一番難しい」
井端さんは先月までU-12侍ジャパンを率い、巨人や東京オリンピック野球日本代表などでのコーチ経験を持ち、飯塚さんも社会人野球の名門チームでの監督経験を持つ。そんな二人が口を揃えて言うのは「子どもに教えるのは大人に教えるより難しい」ということだ。

「社会人野球でも『基本からやろうぜ』と当たり前のようにやってきましたけど、子どもたちに教えるとなると、こんなに基本を教えるのが難しいんだなと思い知らされます」(飯塚)
「プロはある程度の説明をすればニュアンスで伝わります。でも子ども相手ではそれでは伝わりません。事細かく1から10まで順序立てて、子ども達にも分かる言葉に置き換えて説明をしないと伝わりません。特に低学年の子は野球を始めたばかりですから大変です。そこは根気よくやっていますけど、子どもに教えるのって一番難しいですよ」(井端)



そんな井端さんと飯塚さんを練習終わりの子ども達が捕まえる。練習中に分からなかった部分を聞いたり、自分のスイングや投げ方のアドバイスを求めるのだ。耳を傾けてみると、井端さんはこんなアドバイスを送っていた。
「練習の時から試合の気持ちでやらないと試合で打てないよ。試合のような気持ちで練習をする、練習と試合を分けないようにしないとダメ」

保護者とも気さくに会話を交わす。子どもの普段のチームでの活動や大会のことなど談笑を交えながらも、この日の練習で出た課題やアドバイスもさりげなく保護者に伝える。
「練習を見ている親御さんにもアドバイスや課題を知ってもらうようにしています。僕は月に3回しか見れませんから、家に帰ってから僕の言っていた部分を保護者の方に見てもらえたほうがいいですから」(井端)。



最後に、井端さん、飯塚さんに少年野球人口が減少していることを踏まえて、少年野球年代で大事にして欲しいことについて聞いてみた。
「子どもの頃は打つとか、抑えるとか、勝つというところに目標を置かないで欲しいですね。打つためにどうする、抑えるためにどうするというところに目標をおいて欲しいと思います。結果ではなくて課程を大事にする。結果なんて分からないんですから、小学生の間は課程を大事に、課程を楽しんで欲しいですね」(飯塚)

「『こうだろ!』『なんでこうしないんだ!』と怒ることだけは止めて欲しいですね。子どもって分かっていないのが普通です。だから分かっていないことを怒るのではなく、言葉遣いも含めて根気強く接して欲しいですね。
分かっていなかったり、できなかったりしても、それは怒ることじゃないと思うので、理解できるように説明してほしいです。順序立てて第一段階、第二段階、第三段階と順序立ててやっていけば良いと思うんですけど、そこをすっ飛ばして1から10まで一気にやらせようとすると無理が出てきますよね。だから段階を踏んで、根気強く指導してもらいたいですね」(井端)

(取材・写真:永松欣也)

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