スズメバチに64回刺された専門家が対応法を指南 10月は最も狂暴化するシーズン、もし出会ったら!?

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2022年09月24日 10:00  AERA dot.

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走って逃げるのはNG
「今日もスズメバチが出て、本堂に2匹いたので仕方なく駆除しました。この他にも観音堂に数個巣が作られたのでお堂の扉を閉めて、駆除を依頼しました。お寺としては殺生はしたくないのですが、お参りに来る人が刺されてしまうと大変なので仕方ないです」


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 そう苦悩の表情で話すのは新潟県南魚沼市のお寺の住職。今年はスズメバチの数が多く、お盆までは我慢したが、見過ごすことができなくなったと続けた。


 今年もスズメバチが凶暴化するシーズンがやって来た。スズメバチは4月はじめから11月にかけて巣を作り活動するが、秋口の10月になると巣が巨大化し、ハチの数が多い上に、巣を守ろうとするため攻撃性が増す。


 もし刺されたら死に至ることもあるスズメバチについて、対応法や、どうすれば攻撃されないかなどを、スズメバチ駆除を手がけるみどり産業の田迎真人さんに聞いた。


「これからが一番危ない時期ですよ。オオスズメバチ、キイロスズメバチが特に危険ですね」


 田迎さんが代表を務めるみどり産業は、スズメバチ駆除15年の実績があり、2019年には930件を超える駆除を行った。まさに現場を知るプロ中のプロである。


「今年は猛暑で大きくなった巣もありますが、暑さのあまりやられた巣もあります。一方、河川敷などに巣を作るスズメバチは豪雨で水浸しになってしまったものもあります。全体的には数は例年通りのようでしょうが、地域によっては急増しているところもあるようです」


 スズメバチを見ると恐怖が先立つ。もし家の近くや家の中でスズメバチの巣を見つけた場合、どうすればいいのだろう。


「まず、慌てないことです。何もしなければという条件はありますが、スズメバチの巣があっても蜂が出入りするコースと人が通るコースが重ならければ、それほど恐れることはないでしょう。ただしスズメバチに刺激を与えてしまうと一気に危険になります」




 とはいえ、スズメバチの巣を見つけ、危険だと感じ駆除してほしいと考えたらすぐに行政や駆除会社に連絡して対策を取るよう田迎さんは勧める。自分たちで巣を取り除いたり、退治しようとしたりするなど、素人が手を出すことは危険だと警告する。


 もし刺されたら、刺された箇所をつまむなどして毒を絞り出し、すぐに水で洗い流すこと。その後、できるだけ早く医療機関にかかることが重要である。


「刺された場所を口で吸い出すことは絶対にしてはいけません。口の中に傷があると毒が体に入りとても危険です」と田迎さん。


 毒を吸い出すリムーバー(専用の器具)があればそれを使うとよいが、準備している家庭は少ないだろうが、この機会にどんなものかチェックしておくとよい。


「私はオオスズメバチに今年は4回、これまで64回、キイロスズメバチには62回刺されています。私の場合は抗体検査で問題がなかったのですが、刺されて命を落とす人もいます。とにかく気をつけることです」


 スズメバチの巣を駆除でき、一安心となったら、二度と巣を作られたくないと思うだろう。何か対応法はあるのだろうか。


「スズメバチが巣を作るところは、条件が似ていますし、スズメバチにとっては住みやすいところです。屋根裏や床下などがそうです。そういう場所に入られないように穴を塞ぐことが第一です」


 またスズメバチの巣のにおいが残っていると、再び巣を作る可能性があるので、徹底的に巣の欠片を取り除き痕跡を残さないこと。


 スズメバチの巣の模型を置くと縄張り意識の強いスズメバチは近くに巣を作らないので効果があるのではと聞くと、


「そんなもの役に立たないですよ。オニヤンマの模型もありますが、それでスズメバチが逃げていくわけではありません。そんな甘いものではないです」と断言する。



 スズメバチに出会ったら、姿勢を低くしてゆっくり後ずさりしてその場から離れること。手で追い払ったり、走って逃げたりしたくなるが、それは逆にスズメバチを刺激して危険だ。山や畑などスズメバチが出る可能性がある場所には黒い服装ではなく、白い衣服で出かけ、香水など匂いが強いものを付けないことなども大事だ。


 田迎さんはこれらの対策について話しつつ、駆除業者にも注意が必要だと強調した。


「インターネットを見たら、何十万円もするやたらと費用が高いところがあるんですね。驚きました」


 それを基本料金として、さらに出張費とか、高所作業代などが上乗せされ、もっと高くなるケースもあるという。金額や作業内容、駆除の実績などをしっかり聞いて納得してから依頼すべきだと話す。


 ちなみに田迎さんのみどり産業は上限2万2千円である。スズメバチ駆除は怖いし、早く対応してほしいと考えている点につけこむケースがあるようだ。スズメバチより怖いのは人間かもしれない。


 ただ田迎さんはスズメバチを悪者にしてほしくないと続ける。


「本当はスズメバチは益虫なんですよ。田んぼや畑を荒らす虫を食べてくれるんです。農業の害虫をスズメバチが食べてくれていたので、農薬はそれほど必要なかった。でも、蜂がいなくなったので害虫がたくさん出て農薬をまかざるを得なくなったんじゃないかと考えています」


 田迎さんはスズメバチ駆除の依頼が来ても、人が通らない高い場所や林の奥の方など、それほど危険がない場合は、依頼者に駆除をやめることを提案する場合もあるという。


「昔はこれほどスズメバチに対して大騒ぎはしていなかったように思うんです。人間にとって害虫となるガの幼虫やカミキリムシなどをコガタスズメバチが食べて、それを大きなオオスズメバチが食べる。でもオオスズメバチは巣を河川敷のような場所に作るので、台風や大雨で流されてしまう。オオスズメバチも頂点に君臨できないのです」



 田迎さんは、食物連鎖など自然の在り方に人間が手を入れた過ぎた結果、スズメバチは人の住む場所に巣を作らざるを得なくなり、人間との距離感が変化した。その結果、スズメバチと人が鉢合わせすることが多くなり、刺される人が増えたのではと分析する。


「本当は人間とスズメバチが共存できればいいのですけどね。クマが街なかに出てくるのと似ているとも思いますね」


 と田迎さんは話し、明日も朝早くからスズメバチ駆除の依頼があり、最近忙しいと続けた。


 では、なぜスズメバチ駆除をしているのだろうか。


「蜂が好きなんですよ。実はミツバチを育てているんですよ」


 田迎さんは実は養蜂家でもある。オオスズメバチはミツバチの天敵であるので、ミツバチを保護する目的もある。駆除したスズメバチは幼虫を自分たちで食べたり、巣は標本として飾っているという。駆除したスズメバチも大切な資源として有効活用しているのだ。


 田迎さんは無駄なものはないし、昔をそれを自然にやっていた。それを今一度考え直す必要があると言う。


「スズメバチの駆除も実は持続化な社会に貢献しているのかもしれないですね」


(本誌・鮎川哲也)


※週刊朝日オンライン限定記事


このニュースに関するつぶやき

  • 昔、建て替え前の実家で家の中に大きな蜂が入ってきた。凄い羽音だったが、思いっきり蜘蛛の巣に引っかかった。
    • イイネ!22
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