『歩くひと』『今日のさんぽんた』『ぐるぐるてくてく』……読んでいるだけで心和む散歩マンガ3選

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2022年09月25日 07:11  リアルサウンド

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散歩マンガ3選

 コロナ禍となった2020年から「STAY HOME」の推奨に伴い、運動不足解消や気分転換のため家の外でウォーキング、ランニングを嗜むようになった人は多いのではないだろうか。


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 余談であるが、晴れた日も雨の降る日も、毎朝わたしの住む家の前にある通りを歩くご老人がいる。そのひたむきさから推察して、おそらく彼はコロナ禍を迎える前から何年も、何十年も散歩をつづけているのかもしれない。


 多くの人がコロナ禍となる前から散歩を嗜んできた背景には、散歩には運動不足にとどまらない価値が存在しているのであろう。そんな散歩を題材とした漫画の一部を取り上げ、散歩の魅力を考察したい。


■『歩くひと』


 『孤独のグルメ』を手掛け、国内外問わず高い評価を得ている故・谷口ジロー氏。彼の手掛けた『歩くひと』では主人公である中年の男性が街中を歩き、彼の目にした景色が描かれる。


 本作はじめ谷口氏の作品は作画のきめ細かさが特徴として挙げられる。本作においても緻密で繊細な描線、光と影を巧みに浮かび上がらせるスクリーントーンによって形づくられた1990年代ごろの景色は非常にリアルであり、読み進めるなかで自身も主人公と共に街並みを歩いているかのような感覚を覚えることができるはずだ。


 リアルな景色もさることながら、その街並みを目にする男性の行動も特徴的だ。木に登ったり、雨が降るなか傘を差さずにウキウキと歩いたり、夜のプールに忍び込み全裸で泳いだりーー。男性の周りにいる人物たちが不思議そうな表情を浮かべつつ、周りには目をくれずに楽しむ男性の姿は子どものようにも見える。


 そんな男性の視点として描かれる景色はそのリアルさもさることながら、子どものころに見ていた光景を再び目にするかのような、新鮮さのある景色としても映る。


■『今日のさんぽんた』


 『歩くひと』は1人の人物が街中を歩く様子が多く描かれる作品であるが、『今日のさんぽんた』は柴犬・ポン太と飼い主・りえ子が散歩する姿が描かれる。


 散歩をするなかでりえ子は思い出や悩みなど、さまざまなことをポン太に語り掛ける。しかし柴犬であるポン太はりえ子に言葉を返すことはできず、いつも心の中でりえ子にツッコミを入れる。そんな掛け合いと共にふたりの散歩は展開していく。


 そんな本作の第1話は、大学入学を期に実家を離れるりえ子がポン太に最後の散歩となることを伝えるシーンからはじまるエピソードだ。散歩のなかでりえ子たちはこれまでの散歩を想起することとなる。


 散歩で何度も通った道であったとしても、時間の経過によって街並みは変化し、そのときどきで交わした言葉や体験も異なるものとなる。1回1回の散歩によって得られる感情や価値もさることながら、散歩をした過去が積み上がることによって、散歩の中身やその思い出が色濃くなっていくのであろう。


■『ぐるぐるてくてく』


 東京都の都市近郊を歩く高校生の姿を描いた『ぐるぐるてくてく』。本作の中心人物である女子生徒・相生葵と小路歩は「散歩部」に所属する高校生であり、彼女たちは部活動として散歩を楽しむ。


 物語序盤において、歩は散歩よりも部室でゲームをしていたいという心情を抱くことが多い。ただ部長の相生がまるでRPGゲームに出てきそうな浮世離れしたスポットに案内することによって、歩は街並みを歩くことに魅力を覚えるようになる。相生が案内するスポットの数々は現実に存在するものがほとんどであるため、聖地巡礼として歩たちの巡った散歩ルートを楽しむことができることも本作の魅力のひとつだ。


 そんな本作では散歩の最中に相生が迷子となってしまう様子が描かれるエピソードが多い。現在地がすぐにわかるスマートフォンではなく、紙の地図を用いて散歩をする相生。迷子になってしまう原因であるとも考えられる紙の地図へのこだわりを訪ねる歩に対し、愛生は「カッコ悪い散歩は楽しいもん」と口にした。


 また訪れた土地のグルメに舌鼓を打つ姿も描かれており、エピソード「ふくろう探してぐるぐる」においては街中にいるフクロウを探すなか、フクロウの形をしたモナカをふたりで食べた。求肥の入ったモナカを食べ、笑みを浮かべながら「またフクロウ散歩しましょう」と話す歩に対し、相生は「最中と散歩/どっちが目的かなあ」と言葉を返した。


 本作で描かれる散歩の多くは目的地が設定されているものの、ときに迷子になったり、寄り道をしたりする。本作における散歩は効率的に目的地へたどり着くことだけでなく、散歩をすることそのものも目的となりうるのであろう。目的が多岐にわたり、一概に語ることのできない散歩の奥深さを『ぐるぐるてくてく』は示しているのだと感じる。


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