高校生になると私が介護疲れで倒れてしまったときに、手を差し伸べてくれず強く突き放されました。あのときの絶望感は今でも忘れられません。一方、どんなときでも私の味方でい続けてくれたのがサエコの4つ下の弟・長男のケンタロウ。家族のなかで唯一やさしい彼だけが、私の心の支えでした。
世間の人は、「母親ならわが子がどんなことをしても、無償の愛ですべて許すべき」と言うのでしょうか。でも、母親だってひとりの人間ですし、心があります。たとえ血の繋がった子どもでも、許せないことや忘れられないことがあるのです。さんざん私を追い込んでおいて、いざ自分が困ったら「助けて」と言われても、今さら納得できません。
私にとってサエコへのこの長年の感情に決着をつけるのは、人生の終わりに必要なことだと思いました。家も処分して、一歩ずつ人生の終わりに近づいている自分。そろそろ何者にも縛られたくない、自分の精神を自由にしてあげたい……そう思ったのです。私はもう、生きているあいだにサエコと会うつもりはありません。私の選択は間違っているのでしょうか。
みなさんはどう思いますか?
【第5話】へ続く。
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