内田樹「国葬反対世論は首相が『すべきことをしなかった』せいで創られた」

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2022年09月28日 07:00  AERA dot.

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哲学者 内田樹
哲学者の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、倫理的視点からアプローチします。


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 9月19日毎日新聞発表の世論調査では内閣支持率は29%、不支持率は64%。もはや「政権末期」の数字である。なぜ岸田内閣は国民の信をこれほど急に失ったのか。「してはいけないことをした」というよりは「すべきことをしなかった」せいだと私は思っている。


 法的根拠のない安倍元首相の国葬開催を国会の審議を経ず決定したことで一気に支持率は下がった。でも、国民はこのルール違反を咎(とが)めたわけではないと思う。政府の「ルール違反」はこの10年もう日常化していたし、それは安倍時代には内閣支持率に影響しなかったからである。


 法的根拠のない「超法規的措置」を内閣が断行するということはある。かつて福田赳夫首相はダッカ事件に際して、人質をとった日本赤軍の要求に応じて、獄中の赤軍メンバーを釈放するという超法規的措置を採った。首相はこの時「人命は地球より重い」という言葉でこの政治判断への理解を国民に求めた。私たちの世代の多くは半世紀近くを経た今でも「超法規的措置を正当化するためには、それなりの重さのある言葉が要る」という教訓と併せてこの言葉を記憶している。



 しかし、今回の超法規的措置には特段の緊急性はなかった。今すぐ国葬にしなければ誰かが取り返しのつかない損害を蒙(こうむ)るという話ではない。さらにこの措置を正当化する「重さのある言葉」を首相が語ることもなかった。ただ法治国家のルールを軽視しただけだった。


 首相がもしこの措置について国民の同意を求める気があったら、国民に向けて情理を尽くして語りかけたはずである。亡き元首相がいかに歴史に卓越した政治家であり、その功績が比肩なきものであるかを言葉の限り説いたはずである。国民の相当数は国葬の是非について態度を決めかねていた。だから、首相が故人への崇敬の思いを真率に語れば、国民の相当数は国葬を是としただろう。


 でも、首相はそれを怠った。在職期間が長かった。内政外交に功績があったというような気のない文章を棒読みしただけだった。


 国葬反対世論を創り上げたのは首相のこの不作為である。


内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数

※AERA 2022年10月3日号



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このニュースに関するつぶやき

  • 何言ってるんだ?反対の世論も出来てないぜ?反日特亜安倍ガーが喚いてるだけだよ。反対意見は安倍ガーメディアが必死に垂れ流してるけど無駄に終わったという事だ。
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